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ケーキの選択肢が多すぎる話。
土日のルーティンが少しずれたので、日曜の午後はぽっかりと空いてしまった。どうしたか、自分に問いかける。
冷房の効きすぎた、人気の少ない喫茶店で最高に美味しい珈琲を飲みながらチョコレートケーキが食べたい。
しかし、日曜にそんな場所を探し出せる気がしなかった。
駅前のケーキ屋で買ってきて、うち喫茶をすることにした。
自転車を10分ほどこいで、ケーキ屋に到着。
先客はいない。店員が二人。
ショーケースを眺める。
ずらりと並ぶケーキたち。選択肢が多すぎる。チョコレートケーキと決めてはいるものの、別の物に目が移ってしまう。桃のなしのタルトとか。表面もパイに覆われているタイプで小さく繊細なケーキの中で、素朴でぼってりとした異様な姿に心惹かれる。
でも、チョコレートに専念する。チョコレートに絞っても複数候補が残る。
定番のガトーショコラ、これは食べたことがある。
ラズベリーとのコンビネーションのやつ。友達が来た時に購入したが、友達がこれを選んだから味はわからない。
チョコレートクリームのショートケーキ。白いショートケーキもこれも、同じ値段で1ピースケーキの中で最も高い値段だ。
縦長なチョコレートムースケーキ。見た目はガトーショコラと同じくらいシンプル。
さてとどうするか。しばし考える。ショートケーキは高すぎる。ガトーショコラは安定であるが、違うものが食べたい気がした。ラズベリーとムースの対決。シンプルを選ぶのがよいだろう。ムースに軍配。
本当は2ピースくらい食べてやりたいと思っていたけれど、ケーキに千円かけるのは気が引けたから、手ごろなシュークリームも購入。
午後2時頃、コーヒーと一緒に頂く。最適な選択であったと、自分を褒める。このケーキがこの値段するのは当然だと思った。ひょっとすると安すぎるのかもしれない。どんなに手間がかかっていることか。
私が選んだムース一つの手間に感心していると、さっき見たショーケースの数々のケーキたちの映像が頭に浮かぶ。30種類はあったと思う。
こんな暑い日にあのケーキたちはちゃんと誰かの元に行けるのだろうか。
ケーキ屋を営むにあたり、きっと、選択肢は多くなくてはいけないだろう。
だけど、本当にそれがいいのかなと、思う。
もしも私がパティシエだったら、「今月はこれです」みたいに究極的なケーキを1点を作り、持ち帰りもできるし、喫茶もできるようなお店がいいななんて思った。ケーキにあった最高のコーヒーもセレクトされているみたいな。そうだな。2,000円は払える。
これしかない。そういうのもいいと思う。人生は選択の連続だ。選べないは新鮮ではないだろうか。