アニソンの歴史教科書があるとしたら(1)
アニソンが人気だという。僕は最近はアニメをあまり見ていないが、昔はそれなりに見ていた。まあ今でも普通よりは見ているんじゃないだろうか。テレビ番組で、アニソンベストなんとか、とか、何人が投票するアニソンランキング、なんてのが時々放送されている。それはそれで良いと思うが、もっと体系的に、アニメの歴史に沿った、アニソンを考えられないだろうか、と思っていた。なので、少しずつ考えてみようと思う。
鉄腕アトム~手塚治虫の時代
ちょっと原曲がどれかっていうのがはっきりしなかったので(調べれば良いんだが)、検索で上に出てきたこれで。まあ、日本のアニメ史上で最も大事なものといえば鉄腕アトムだろう。日本初の週間アニメ。この主題歌も誰でも知っている。童謡になっているのは、当時はレコードに物品税がかかっていたからだという話。初期のアニソンにはなんちゃら合唱団みたいなのがよく入っていたのはそのせい。
手塚作品は他にも、メルモとか、色々あるわけですけど、アニソンという視点から言えばアトムだろう。視聴率は30%以上だったという。
宇宙戦艦ヤマト~SFブーム、初期アニメブーム
ちょっとささきいさおの原曲がなかったので、アルフィー版ですけど。やっぱり、アニソンといえば、これじゃないだろうか。誰でも知っている。僕でも知っている。なお僕の高校では、合唱部は新入生歓迎にこの曲をアカペラでやるのが伝統だった。ガンダムとかが後にくるけど、アニソンという意味ではこれが一里塚という感じがするね。今でも自衛隊などでよく演奏されている定番。アニメの発展は、ヤマトがきっかけでもある。これをなしには語れない。
キャンディ・キャンディ
アニメの歴史という観点では、あまり語られることの少ない少女向けアニメや世界名作劇場、日本昔ばなしだけど、きちんと評価をするべき。その中でもアニソンといえばキャンディ・キャンディだろう。アニソン女王堀江美都子の代表的作品でもある。私はキャンディ~。これもみんな歌えたくらいメジャーだったと思う。アニソン歌手、という意味では先駆者的存在だと思う。
マジンガーZ
ロボットアニメも語る必要があるだろう。まあガンダムもあるが。それはともかく、今、アニソンっぽい曲が少ないみたいな語り口で言われることが多い現代のアニソンだけど、アニソンらしいアニソンという意味では、これがまず挙がっても良い。キャラクターの名前や必殺技の名前を叫ぶのだ。この、必殺技の名前を叫ぶという文化は、当時人気だったプロレスの実況から来ているのだが、アニソンの文脈にも入ってきている。歴史的には無視できない。
オバケのQ太郎~オバQ音頭
オバQそのものも文化史的には大事だが、アニソンの歴史的に大事なのはオバQ音頭である。この後しばらく、なんとか音頭、みたいなものがアニソンとして頻出するのだ。やっぱり代表格はアラレ音頭になってしまうが。僕の地元の盆踊りでもアラレ音頭やってたしな。そのルーツ的なものは、オバQ音頭になるだろう。いや知らないだけでもっと古いのもあるのかもしれないが。
CAT'S EYE~80年代ポップス
歴史を語る教科書があったら、この曲だけは外せないだろう。それまで童謡・子供向けがメインだったアニソンの分野において、一気にスタイリッシュなポップスが入り込んできた。今流行しているというシティポップの流れもある。いや、ルパン三世やスペースコブラなどもその要素があるが、商業的な成功も含めればキャッツアイだろう。なんせ100万枚も売れたのだ。子供だけが聞くものではなくなったのだ。昔はアニソンなんてとバカにされていたが、それを覆したきっかけの1曲だったと言える。
この後に、ジャンプアニメの黄金期があって、そこでも名曲揃いではある。北斗の拳、キン肉マン、聖闘士星矢、Dr.スランプアラレちゃん、ドラゴンボールなど。
ハイスクール!奇面組~アイドルの参入
ハイスクール!奇面組の主題歌には秋元康のアイドルが起用された。今とやってること変わらんな秋元康は。当時はおニャン子クラブなどもあってアイドルグループの人気もあったのだ。松田聖子や中森明菜のブームも落ち着いてきていたし。そういう意味では画期的な出来事だったんじゃないだろうか。僕は「時の河を越えて」が印象に残っているが。
シティーハンター~アニメ演出への寄与
贔屓目ではあるが、これも入れておきたい。シティーハンターとGet Wildの組み合わせは、今でも人気だし、それこそテレビのランキング番組でも頻出している。やはり画期的だったのは、アニメのエンディングに演出としてかぶさってくるイントロ、というところ。それまでは、CMが入って、次回予告なんかがあって曲、だったところを、アニメの演出と不可分のものとした。それだけで価値がある。
まあ、広い意味でいうと、この曲がアニソンとしてヒットしなかったら、TM NETWORKはおそらく解散して、日本のデジタルポップ事情自体が大きく異なる様相を呈して、アニソンにも多大な影響を与えていただろうからなあ。
スレイヤーズ~声優ソングの時代
少し時間が飛んで、95年になる。スレイヤーズというアニメの主題歌が、アニメ主人公リナ=インバース役の林原めぐみ(と歌手の奥井雅美)だった。これがGet Alongで、オリコン40位くらいに入ったのかな。その瞬間のカウントダウンTVを見ていた。スレイヤーズのシリーズから、林原めぐみは本格的な歌手活動を始め(それまでもCD発売していたが)、歌手としても定着していく。声優がアーティスト化する流れは、その後椎名へきるや國府田マリ子などにも大きな影響を与えたと思う。中でも林原めぐみはその後チャートのトップ10入りするなど活躍した。セイバーマリオネットJやラブひな、シャーマンキングなどに続いていく。
新機動戦記ガンダムW~TWO-MIX
これも同時期になるが、TWO-MIXとガンダムWの時代があった。当時放送されていたラジオ番組「マルチメディアカウントダウン」というランキング番組では、このシリーズの曲が1位を取ることがよくあった。ガンダムWは、当時人気が低下していた(SDではない)ガンダムを復活させた(と思っている)シリーズなんだけど、それとアニソン歌手が一緒に成長していった、というところがある。
TWO-MIXは、声優高山みなみさんが歌を歌うユニットだったわけだけど(当時は明らかにはしていなかったが)、このユニットがその後に与えた影響は大きいと思っている。基本的にデジタルで、ボーカリストとトラックメイカーの組み合わせというのは、accessから連なって今にもよくある組み合わせ(Wikipediaより)。おそらく、fripSideや、まあ広い意味ではYOASOBIなんかもそのくくりに入ると思う。TWO-MIXの成功なくしてfripSideはあったかどうか……いやI'veの影響もあるとは思うけど。
おわり
アニメ初期から95年くらいまでのアニソンの代表的なものを振り返った。いや、あれが入ってないじゃないか、みたいな意見もたくさんあると思うけども。999やスラムダンクや幽遊白書の曲がないとかね。でもビーイング系などは省略した。そのアニメに書き下ろされた曲かどうかがよくわからなかったからだ。やはり、アニソンは、アニメに書き下ろしてほしい。贅沢なことかもしれんが。999は、大きな目で見ればヤマトの項目に包含されるということで……。
まあ思いつけば続きも書いていくことにしようと思う。
追記(2024/10/4)~アニソンの始祖
補足をいただいた。アニソンの始祖は戦前にすでにあったようだ。それはすごいな。1929年に国産でそれなりのアニメが作られていた事自体もすごいと思う。へぇー。漫画映画みたいなものが各地で流されていたんだろうか。よく商売になっていたなあ。
堕落する準備はOK?