純粋な欲望
今回はルネ・クレマン監督作品の『禁じられた遊び』の感想をまとめてみます。
禁じられた遊び
本作は1953年公開の映画。
監督には『太陽がいっぱい』で有名なルネ・クレマン。
世界で起こる大きな戦争と身近で起こる小さな戦争。
欲望が巻き起こす様々な様子を子供の純粋な視点から残酷に描き出した傑作。
あらすじ
第ニ次世界大戦最中のフランス。
ナチス・ドイツからのパリ侵攻により、5歳の幼い少女ポートレットは両親を亡くし、大切にしていた愛犬の命も奪われ、その死体を胸に抱き行くあてもなく何もわからずさまよっていた。
パリから離れた田舎町へとたどり着いたポートレットはミシェルという少年に出会う。
少年ミシェルとその家族はポートレットを貧しいながらも温かい家庭に迎え入れるが──
欲望と侵略
とても良い作品だった。
戦争や死をテーマにしつつも焦点は純粋無垢な子供に当てていることによりエゴ、死、戦争の不浄さが際立って見えてくる。
戦災孤児の少女ポートレットと田舎町に住む少年ミシェルの短くも深い友情。
この2人を結びつけたものは「死」であると気づかされた時の恐怖。
純粋さや無知が生みだす残虐性とは恐ろしく、彼女らの本来の思いは「死んだ愛犬が寂しくならないように仲間を作ってあげたい。」こんなにも単純で子供らしい優しさであった。
しかし欲を知ってしまった子供に際限など無い。
欲は段々とエスカレートしていき、最後には墓地から十字架を盗み出すことが目的となってしまう。
反戦映画として有名な本作は終戦から7年と記憶も新しい頃に制作された。
戦勝国ながらも反戦映画を戦後間もない頃に作るということはどれほどの意味を持っているのだろうか。
「禁じられた遊び」とは何を指しているのだろう。
欲から十字架を盗むこと?
もちろんそのことも指しているのだろうが、きっと「戦争」を大人のエゴが生み出す行為「遊び」として置き換えてるのではないだろうか。
巻き込まれるのは純粋無垢な子供や立場の弱い者ばかり。
欲とは際限がないものであり、それは戦争も同じだ。
ラストの悲壮感が現実を突きつけてくる。
短いですが最後までご愛読ありがとうございました。