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『別離』

やっほー
アスガー・ファルハディ監督作品の『別離』を観たのでレビューしていきます。

あらすじ

イランの首都テヘランに暮らすシミンは、家族の未来を考え、夫ナデルと娘とともにイランを出る準備を進めていた。
しかし夫ナデルはアルツハイマー病を抱える父親を置き去りにはできないと反対し2人の意見は平行線を辿る。
我慢の限界を迎えたシミンは離婚を申請し、2人は別居を始める──

感想

何気に僕史上初のイラン映画。
以前から評判を目にしていたので気になっていた作品。
やっと観れたことに喜び。

イラン映画の知識ゼロで観たことと、知らない役者さんが演じていることもあってかイランのとある家庭を覗いているような感覚になった。
先が読みにくい展開に一気に引き込まれあっという間に2時間経ってしまっていた。

本作は現代イランが抱える貧困や、家庭問題、宗教、男女の区別とその間の格差などと様々な社会問題要素を絡め合わせ、俳優陣の上質な演技と丁寧な脚本で、人間というものを浮き彫りにしている。

世界中のどんな人にでも当てはまる、普遍的なテーマを軸にしていることもあり、宗教や文化の違いはあまり気にならなないどころか共感できる部分の方が多かった。

現代社会の投影があることでドキュメンタリーぽくもあり、登場人物たちの嘘が次々と明らかになっていく様子にはサスペンス・ミステリー映画ぽさも感じる。

『別離』より

登場人物は基本、根はみんな善人。だからこそ自分の持つ「善」の感覚が人と違うと衝突が起きてしまうのだろう。
どんな人間にも善があるし悪もある。善と悪は表裏一体だ。ほんの少しのズレが積み重なり、こじれてしまう人間模様。

ラストシーン、答えはひとつに決まっていながらも全てを見せることなく映画は終了する。

具体的な答えを全て見せず観る側に現実を叩きつけるような作りはこの手の社会派作品として完璧だと言える。

まとめ

『別離』は、「善」と「悪」という人間が合わせ持つものを上手く描き出している心理的ヒューマンドラマの傑作だった。
アカデミー賞やゴールデングローブ賞、ベルリン国際映画祭での複数受賞も納得の作品。
決して明るいラストではないものの、良い映画を観た時特有の余韻がすごい。

オールタイムベスト級でした。

『別離』より

別離(2011)
123分 イラン


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