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犬について思うこと

「自分が強い想いを込められること」が、同時に「どうしてもできないこと」だった場合、どうすれば良いのだろうか。

わたしは、小さいころから犬が大好きだ。9歳から飼っていたみるく、みるくが亡くなったあとに飼いはじめたいちご、実家を出てから飼い始めたラテ。みんなすごくすごく大好きで大切な存在だ。

小学校2年生のとき、実験犬にまつわる本を読んだ。

虐待され、実験に使われ、痛くて辛い想いをしている犬たち。人間の力には勝てないから、従うことしかできない犬たち。
朝読書の時間、クラスのみんなが静かに本を読んでいるなかで、一人泣きながら読んだことを覚えている。

同じ時期、犬・ハムスター・猫などの動物を虐待し、その様子を動画で撮影している人をニュースで観てしまった。先ほどの本と同様、その動画は今でも脳にこびりつき、鮮明に思い出せてしまう。

「ハプニング映像」のような名目で、危ない目に遭った動物を面白おかしく撮影している番組を観てしまうこともあった。すぐにチャンネルを替えるけれど、相変わらずそのような記憶を頭から消すのは不可能で、どんどん動物たちの映像が脳にストックされてしまう。

Twitterでたまに回ってくる、虐待された痕が残る痛々しい犬の姿。飼い主が猫を捨てる瞬間の動画。いいね・リツイートする人は、善意でそうしているとわかっている。だけど勝手なことを言うと、わたしからしたら消えない映像が増えるだけ。「犬」というワードをミュートしてしまったこともあった。大好きなのに、大好きだからこそ、現実を見ることができなかった。

就活の時期、自分が好きなことやできることはなんだろう、と考えた。

真っ先に出てきたのは、やっぱり犬のこと。だけど先述したとおり、好きだからこそ行動に移すことができないのもまた、犬のことだった。
わたしが強い気持ちを持っていれば、保護犬などのために活動できるのに。自分の気持ちより、犬のためになることをするのが大切なのに。何度もそう思い、せめて現実を知ろうといろいろ調べてみたけれど、記事を読む途中でボロボロと涙が止まらなくなってしまう。画像などが不意に目に入ってしまうともう駄目で、その日はずっと泣いてしまい、就活を続けられなくなるほどだった。

あきらめようと思った。

わたしは自分が飼っている犬を幸せにしよう、それだけで十分だと、そう思うことにした。


だけど、やっぱりこの想いは消えない。小学校2年生の夏、実験犬にまつわる本を読んだときが、わたしが今までの人生でもっとも心を揺さぶられた瞬間だった。あれから20年が経った今でも、その気持ちを無視することはできない。

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ここまでが、新卒1年目のときに書いた文章だ。



新卒で入社してから、もう5年が経つ。

私は引き続き犬とは全く関係ないところで働きながら、たまにペット関連企業の求人を横目で眺めながら、今日もまた、犬のために何も出来ていない。

求人を募集していたペット関連企業に、カジュアル面談をしていただいたこともあった。ただお給料の低さを受け入れることができず、事業内容に大いに共感しているにもかかわらず踏み出せなかった。

社内の新規企画提案会のようなもので、保護犬・保護猫のための事業を提案したこともあった(正確には、提案している方のチームに入れていただいた)。
仕事に消極的な私からすると、1万人以上いる会社の全社イベントに参加するなど考えられなかったが、「もしこの企画が選ばれれば、転職せずとも犬のためになる事業が出来るかもしれない」という期待のもと、本業が終わったあと夜な夜な企画を練った。

ただ残念ながら2次選考で落ちてしまい、今いる会社内での挑戦はそこで終了した。落ちた理由は主に「安定したマネタイズモデルが見えない」というもので、保護活動・ペット関連事業そのものの課題だよなぁ…と思いながらフィードバックを聞いていた。

私は正直、自分の生活を犠牲にしてまで犬に尽くせるほどの人間ではない。
自分の、家族の生活が何よりも大事で、今飼っているラテが何よりも大事だ。

ただ欲張りなことに、犬のために何も出来ていないこの日々が苦しい。
インスタで保護犬の募集投稿を見ているだけの自分が情けない。

だから、2025年は一歩だけ踏み出してみることにした。

まずは(といいつつ、私にとってはここが一番ハードルが高い)、ペット業界について知ることから始めたい。

なぜペットショップはいけないのか、犬にまつわる今の課題は何なのか、日本はドイツなどと比べて何がいけないのか……恥ずかしながら私は、そんな基礎知識すら無いまま「犬のために何かしたい」と考えている。

勉強しながら泣く覚悟はできている。だけど辛く苦しい犬たちの現実を知らないままで、犬のために何をすれば良いかはきっと分からない。

勉強した結果、「自分はチャリティグッズを買うことしかできない」という結論になることもあり得ると思っている。どんな結論になっても、私は私の「犬との関わり方」を決めていきたい。


2025/1/2


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