星屑。

あなたと初めて会ったときに、あなたは
「髪を切ったのがきっかけだったんだよ」
とそういった。
2時間のドライブでまるで私と違うあなたを見て少しときめいてしまっていたから、素直にそう思った。
何か自分の中で打破したいものがあった、変わりたかった。何かいいことが起こるとそう思っていた。
そんな欲にまみれた気持ちがその瞬間にほんの偶然を運命にしてしまった。

運命なんて自分がどう思うかだ。
点と点をどうつなぐかだ。そこら中に落ちている点と点のどこを選んでどうつなぐか。星形を描くのか、とげとげしい形を描くのか、なるべく繊細につないでやわらかな形を描くのか。

その時は星に見えたけど、今では自室の床に落ちているクシャクシャのティッシュと同じ形に見える。

自分に非がある。
これは間違いなく自分の人生で、その選択をしたのはあの瞬間甘言につられた紛れもない自分自身。迷いもあった、でもそれを選んでしまった。
だから、この間違いを素直に認めて受け止めて反省をしていかなくてはならない。
そうするべきだ。

最初は後悔なんてなかった。そう思うようにした。
一つの靄が消え去り、新月の日のあの暗い夜みたいな黒いものに飲み込まれたことに気付こうとしなかった。


あの瞬間、自分は考え込みすぎるから、考えないようにした。
考えないように、考えていたんだと思う。
自分の中では分かっていたから。

分かっていたんだよな。


道を踏み外すことがなく、清廉潔白に生きてこれた。
うまくいかないこともあったけど、失敗も挫折もしたことがなかった。
割と真面目に生きて、ちょっとズルすることはあったけど、それでもゆるぎない(はず)の道を歩んできた。

これまで自分のそばにいたことがないようなタイプのあなたに、少し興味がわいた。刺激的で、とても興味深かった。
夢を語るあなたの声はきらきらと輝いていた気がしてた。

これまでの人生で交わることがなかった世界は、交わる必要性がなかったからだったのかもしれないね。
そう考えると、この交わってしまったことにも必要性が生じてくるのが相対的ではあるのかもしれないけれど、今はその矛盾はティッシュの中に丸め込んで床に投げておこう。
また少し荒れてゆく部屋も今は片づける気分じゃない。

家族の愚痴を吐いたときの興味なさそうなあなたの相槌にドキリとした。
当たり前だと思っていたものは、あなたからすればこれ以上のない贅沢なものだったのかもしれない。

あの時薄らと目にこみあげていたものは、嘘じゃないでしょ?
あの時の揺らいだ声も、嘘じゃないでしょ?
もうあなたのことはほとんど信じてあげられないけど、それだけは本当だったと思っていたい。

あなたにとっては無知で初心で信じられないくらい馬鹿なガキだよね。

馬鹿にしていたよあなたのことも。
でもそれ以上に馬鹿だよ。自分が。

振り返ると1+1=2くらいに簡単なことだった。ニュートンがこれに意義を唱えていたけれども、この答えにはだあれも異議は唱えないでしょうね。

沢山迷う自分が嫌いだったけど、間違うことはなかった。
お昼ごはんさえも迷って、この時間が一番無駄だなあなんて思いながらも、迷って、なんかこれじゃなかったって思うことは100回くらいあるけれど、それでも間違うことはなかった。

なんで許したの?
なんで待っていたの?
なんで期待をしていたの?
なんでわかっていたのにやめられなかったの?
なんで受け入れたの?
なんで笑い飛ばしたの?

あの時の自分に毒を吐いてやりたいけれども、それじゃああまりにもかわいそうすぎるじゃないか。
自分を馬鹿にすることはいくらでもできるし、過去の自分をめった刺しにしてやることもできるけれど、それじゃああまりにもかわいそうじゃないか。
答えを知っている奴に、迷っていた自分を責める権利はない。
あの時の自分を優しく許して、馬鹿だなあって笑い飛ばしてやろうよ。
全ては“今”が引き受けてやるから、責任取ってやるからって。
そんでうまくいかなくても、またその時の“今”が責任取ってくれるはずでしょう。

これから学んでいけばいいじゃんか。
30000円も、それ以上も、失ったけれど。
高いレッスン代だったなって、そう笑ってやるよ。

面白い話じゃないか、だいぶ。

甘い言葉に混ぜ込んだ嘘もホントも夢もどれが何かはわかんないけれど、まだ馬鹿だからさ、応援しちゃってるよ。

私の人生に踏み込んできて、私の側頭葉に記録された以上さ、少しは幸せになってほしいと思っちゃってるよ。

馬鹿で健気で可愛いよな。



あの日見た星空はきれいだったね。初めて見るくらいきれいだった。

それ以上の星空を、今いる大好きな誰かとか、これから会う誰かと上書きしていくよ。

どんな星座を描いていこうかな。

明日はふたご座流星群が良く見えるんだって。




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