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逃げること、留まること

知人の重ための相談を受けた。
様々な要素が絡み合っている話だった。

大前提として知人は尊重されていなかった。
それでもそこで、守りたいものが知人にはあった。

私は、とにかく逃げろと繰り返した。
あなたがどれだけ献身しても、完璧であっても。
その環境を容易く壊せる手が迫っていると。

それでも知人は、それが来ない可能性もある、と。
一旦そこに留まることを決めたようだ。

ありえない、と私の心は叫んでいる。
己の精神を削りながら行う分の悪い賭けだと。
そしてあなたは、そこから出ていくための足も手段も持っている。

出てから考え直せば良い。
繰り返し伝えたくなるのを、ぐっとこらえる。

これは他人の人生だ。
思い通りにコントロールできるものではない。
自分だって他者から見ればそのような選択をしたことがあるだろう。
すべてが完璧な人生などない。
でも、振り返ったときに、後悔の少ないような選択や行動を選ぶことができる。

他人に選ばされた選択が、
思っていたものと違ったという苦さは、
容易く関係をも切り裂く。

知人を守りたい私が、知人に殴りかかっていくのは間違っている。
考えを尊重して、付かず離れずの距離を保ち、
万が一のことがあった場合に備えることだ。

嫌われたとしても、救われるならばと強いことばを使う時期は終わった。
自信を奪うような強さではなく、そっと支えるようなてのひらを。

正しさを選ぶだけで、全てを救えるならば、世界はどれほど容易いだろうか。


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