親知らず4本抜歯 1日目
前日は駄々をこねまくって友達に散々慰められたが決心がつかず、嫌々病院に行った。これから痛い目に遭うことが分かっているのだ。ビビりまくる自身を叱咤して入院窓口で手続きを終えて病棟へ上がる。ナースステーションは閑散としており、人がいなかった。このままバックレたい、と思っていたら、お伺いしましょうか、と声をかけられた。
病室に案内され、パジャマに着替える。私はうっかり前開きでなく上からかぶるタイプのパジャマを持ってきてしまい、パジャマを1日だけレンタルすることになった。甚平タイプのそれはいかにも病人といった見た目のもので、おもわず写真を撮った。まだ朝だからか病室には私とお向かいさんしかおらず、お向かいさんが挨拶に来てくれた。
しばらくして担当の看護師さんが挨拶に来てくれた。体温と血圧を測定し、飲水制限の説明や、同意書の回収、薬のチェックなどがあった。飲水制限の時間ギリギリまで水を飲み、荷物を整理しながら手術の時間まで待機だ。
いざ、手術室へ
行きましょうか、とついに呼ばれてしまい、ああ帰りたいと嘆いた。道中看護師さんに嫌すぎる、逃げたいとぼやきつつ、中央手術室とかかれた自動ドアの前に行くとオペ室の看護師さんが待っていた。病棟看護師さんが申し送りをして、頑張ってきてくださいねと言われ、颯爽と去っていった。
いよいよ逃げられない。自動ドアが開けば中は手術中の文字。ずらりと並んだ中から自分が手術される部屋に到着。中には先生と看護師さんが3人。ドラマで出てくる無影灯を初めて見た。ベッドに横になり、ルートを確保され、点滴で麻酔を落とす。ミダゾラム。
さて、鎮静剤が落とされたが全く眠くない。ばっちり目は冴えている。局所麻酔が痛いのなんの。キュイーンとドリルで削られている音も、振動もしっかり伝わってくる。あれ?鎮静剤とは?と思いつつ早く終われと大人しくしていた。思い切り顔を押され、ごちゃごちゃされながらしばらくしてボコ、と何かが外れる音がして、先生が1本目抜けましたよーと声をかけてくれた。え! やっと1本なの!? と文句を言った覚えがある。しかしそこからは早かった。2本目、3本目とさくさく抜けていく。流石は歴戦の口腔外科医だ、まっすぐ生えていた歯はあっという間に4本とも抜かれてしまった。
終わりましたよーお疲れ様でしたー、と声をかけられ、ふうと一息ついた。一番疲れているのは執刀医と看護師に違いないが、受けているこちらもかなり疲れてしまった。隣に病棟のベットを付けてもらい、よっこらせと乗り移る。看護師さんに元気ですよーと軽口を飛ばしながら病室へ帰ってきた。
おかえり病室
部屋に帰ると1時間はベッド上安静との指示だった。今更麻酔が効いてきたのか眠くなってきてうとうとしていたら、あっという間に1時間経っていた。あれ、血が、と看護師さんに指摘されてやっと気づいたが、口元から血が出ていた。厳密に言えば血混じりの唾液である。起き上がった拍子に口から服に落ちてしまい、病衣を借りていて良かったと心底思った。お気に入りのパジャマを血まみれにしていたところだった。
大きめの輸液用の点滴を吊るされ、ああさらに病人らしくなったなと思った。
入院前にドライソケットについて散々調べていたので強いうがいはしないように注意しつつ、点滴をごろごろ引きながらひたすら溜まっていく血混じりの唾液を頻回に吐き出しに行っていた。
通常と比べて1.5倍ほどぱんぱんに腫れた自分の顔が面白くて、しばらく洗面台で笑っていた。もちろん記念写真も撮った。
しばらくして夕ご飯が来た。
見た目は全部白いな、という感想である。意外とどれも美味しくてぺろりと完食してしまった。廊下にあるワゴンに食器を返して、歯磨きとうがい薬でうがいをした。痛みは幸いそれほどなく、念のために出された鎮痛剤を飲んだ。
輸液はまだ終わらない。まさか付けたまま寝なければならないのか、と嘆いていたが、消灯ギリギリに終わり、外してもらえた。腕の留置針はそのままだが寝返りを打って抜針という情けないことにはならなさそうで安心した。
夜10時になると消灯。同室の人たちからもいびきが聞こえ始め、みんな早いなぁとおもいつつ私も眠ることにした。