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読書ノート:ことばの意味を計算するしくみ (著:谷中 瞳)、その4:4章 形式的意味論

はじめに

計算機言語学と自然言語学との橋渡しをすると謳う、気鋭の計算機を活用した言語学者である谷中先生の新刊。大規模言語モデルと伴走しながら、読んでいくシリーズである。「Ⅱ計算機言語学からみたことばの意味を計算するしくみ」からスタートする。

さあよいよ、「4章 形式意味論の考え方」、"formal semantics"。「4.3 文の意味」にある中心的なステートメントを中心に読み解く。理解度に応じて、逐次アップデートする予定。★は独白★

絵は、Flux.1: language instinct


4章 形式意味論の考え方

いきなりであるが、本章の眼目というか、中心的なステートメントかと思うので、先に紹介する。

4.3 文の意味(中心的なステートメント)

形式意味論の研究では、まず自然言語の意味とはなにかという問題について何かの立場をとり、自然言語の意味表示の形式を考える。
その上で、自然言語の統語論について何らかの立場をとり、その統語論が与える構造にしたがって自然言語の意味表示を計算する機構を検討することで自然言語の意味を分析する

4.3より太字は追加したもので

「意味の立場の選択」、「意味表示の形式」、「統語論に対する立場」、「統語論が与える構造」、「意味表示を計算する機構」、「自然言語の意味」、というキーワードがでてきた。

Claude 3.5 Sonnet(2024.10.29)に、図に起こしてもらった(mermaid)。

Claude 3.5 Sonnetが分析した構造

★「意味の立場の選択」と「統語論に対する立場」という立場が大切そうであるが、後者は前者の選択結果に依存する。それぞれの立場を選択すれば、「統語論が与える構造」と「形式的な意味表現」が明らかになり、これらをつかって、「意味表示を計算する機構」を構築でき、結果「自然言語の意味」の分析ができるということなのか。★

4.1 含意関係

推論(inferene、ここでは自然言語の推論)は、自然言語の意味の最も重要な使用法であり、形式意味論の基礎的かつ重要な概念の一つである。

含意関係(entailment relation)は推論(inference)のひとつ。

(1) A is young and smart
(2) A is smart

(1)は(2)を含意する(entail)、(1)をpremise,(2)をcosequenceという。

含意関係(entailment relation):
二つの自然言語文S1とS2との間に取り消し不可能な関係が与えられ、S1が真であるならば、S2も真であると話者が直感的に判断できることを「S1はS2を含意する」といい、S1⇒S2と表す

定義から

★自然言語文が真かどうかは、話者が直観的に判断するというのに立脚している。★

4.1.2 含意の判断

量と比較、上位・下位など、語彙意味論(lexical semantics)の世界

4.2 推移と前提

話者の意味会話的推移(conversational implication):話者の意味に基づく推論

会話的推移は、含意関係ごは区別され、取り消し可能である。
そして、増強可能(reinforceability、XXXという文を自然に続けることが可能)

スカラー推意(尺度に関する推論)
60. "Four woman were talking on a bench"
→ちょうど4人の(スカラー推意)

4.2.2 前提(presupposition) 

premiseではない、推論のタイプの1つ

(64) The King of France is bold
(65) There is a King of France.   ←前提

ここで、(64)"The"は、前提トリガー、(他の例:「再び、富士さんに上る」の”再び"

投射というのもある

4.3 文の意味(つづき)

形式意味論は、モンタギュー意味論を礎とする。

[自然言語]→(翻訳)→[論理式]→(解釈)→[モデル]

真理条件的意味論(truth-conditional semantics)

文の意味とは、文の真理条件(truth condition)

真理条件的意味論は、モデル理論的意味論を前提とする。
ある文の意味の理解とは、
  →「文+状況」から文の真偽が判断できる(意味が真理条件、真理の判断が、文の真偽になる?)、状況はモデル理論的意味論におけるモデル構造に相当。
  →その文の真理条件に従って文間の含意関係を予測できる。
真理条件的意味論は、今日に至るまで形式意味論の標準的な立場である。

★つまり、文が真かどうかは、状況を鑑みて真理条件で判断できる。真偽は置いといても、2つの文の真理条件に従えば、文間の含意関係が予測できる★

証明論的意味論(proof theoretic semantics)

証明論的意味論は、Gentzenに起源をもち、直観主義論理と関係する。
 →文の意味は、文の検証条件としてとらえ、
 →文の意味が理解できるとは、与えられた文脈からその文の証明を構成的に示すことができるとする考え方

「本書では、現代の証明論の視点から、モンタギューの真理条件的意味論を再構成して紹介したい」

★証明論的意味論の仕組みをつかって、真理条件的意味論を再構成するということ??再構成することは何のため??★

4.4 外延と内包

自然言語の意味の本質は、自然言語を用いてモデル上の対象を指示(refer)することであると考えることができきる」

モデルが表す状況(文脈)における言語表現の指示対象→文脈における言語表現の外延(extension)

外延的意味は代入可能、外延が等しい表現で置き換えられる。

内包的意味(intension)→主体の認識に関係、代入不可能

Fregeの、「意義と意味について」、意義は内包、意味は指示対象=外延に相当。

信じる、探す、知る→態度動詞→内包的
合う、ぶつかる→知覚動詞→外延的

本書では自然言語の意味として外延的意味を扱う。

感想というか考察

さて、「4.3 文の意味(中心的な文)」に従うと、「自然言語の意味に対して」は、つまり真理条件的意味論という「立場をとって」、意味表示の形式ってのは、文の真理条件なのか?検証条件なのか?、そして、「統語論について何らかの立場」とか、「統語論が与える構造」というのは文の統合構造が証明木に対応するような構造ではないか?、そして、「自然言語の意味表示を計算する機構」のは、たぶん証明木を使って、検証条件に関する計算あるいは、予測をすること、なのではないか。。そしてそれが真理条件と関係するのではないか。



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