page 75 Story of 永遠 9/13
凪「この後って、みんな予定入ってたりする?」
雑誌の撮影を終えてまだ19時過ぎ。
撮影が思いがけず早く終わった。
スマホを左手に持ったまま凪が口火を切ってそう呟いた。
了「いや、予定がどうこうじゃなくて、俺も皆んなで話す時間取りたいなって思ってた。
って、え?、皆んなで話し合いしようって事でいいよね?」
凪は黙ったまま頷いた。
奏多「俺ね、一応予定有るけど、ずらせる用事だから時間は大丈夫!」
美月ちゃんを迎え入れるかどうかの話し合いとは
誰も言ってないのに、話し合いの内容は暗黙の了解で全員分かってる。
俺は「予定は無いから大丈夫」と伝えると、凪が「それなら、いい場所が有るから」と、俺達に背中を向けて電話をかけた。
すぐに振り向いてOKのサインを出して、携帯を耳につけたまま帰り支度を始める。
凪の車で向かった先は撮影所からほんの15分程の所に有った。
寺の敷地に入って行くので訳が分からなかったけど、駐車スペースに停めた凪は「ここで到着」と言ってやっと詳細を明かした。
凪「ここ、叔父のやってるカフェなんだ。寺を改装して…って言っても、ほぼ寺のままなんだけどね。
夕方までしか経営してないから、夜は場所貸すよって、言ってくれてたの思い出してさ」
奏多「おー、寺カフェ!、お洒落」
凪の叔父さんの気遣いで、営業時間ではないのに
店を開けてメニュー表を見せてくれた。
内装は凪が言っていたように、そのままの雰囲気を残している。
広い庭を見渡せるように縁側席が設けられていて、今日は天気が良く気温が割と高いので…と、
夜にも関わらず縁側席を勧めてくれた。
沢山の緑の茂る新緑の葉音は、時間や時代のワープを促すように、ザザと音を立てている。
凪「…でさ、あの動画、Twitterで凄い事になってるっていうの見た?」
了「いや…本当に。凄い事になってたよな」
奏多「披露宴でさ、SNSへの投稿は控えて下さいって伝えたのにね」
凪 「で、不思議なのが優しさに溢れたコメントばかりって感じで…しかも、」
奏多「うん。何故か“ answerはこれから5人”っていう話になってて、怖かった」
了 「うん。社長のただの思いつきなのに、みんなが同じ事思ってるなんて…なんか怖いよね」
永遠「…、いや それは…」
凪「永遠くん、ここにはお前の仲間しか居ない。この前社長と何話したか聞いていい?
ここまで来たらもう話すしかないだろ」
ああ。もう話す時期だよな。
心地良く吹く風が気持ちを後押しする。
永遠「披露宴の曲の練習をした帰り、美月先生を車で送って、助手席に乗せてた所を…」
奏多「うわっ、まさか撮られた?」
永遠「ああ。うん。はい。撮られました」
了 「うわっ…、マジか…」
永遠「雑誌社と社長との話し合いが行われて、そのスクープを止めてもらう代わりに、晃社長がハッタリをかまして…」
奏多「ハッタリ?」
永遠「この女性はanswerの新メンバーになる子だから今は触れないでくれって。
その代わり、本決まりになったら1番早く情報渡すからって…」
今まで黙ってた凪が口を開いた。
凪 「で、その雑誌社が知った社長の適当なウソが、どういう経路を辿ったか分かんないけど、情報としてTwitterに上がった…って事か」
永遠「多分ね」
奏多「うわっ社長ー…、てか社長ーーー!」
了 「本当社長って凄い人だよな。
自分の妄想を簡っ単に形にする天才」
永遠「うん。けど本当、ごめん。今回の騒動は俺の軽率な行動に皆んなを巻き込んでるのは事実だから。本当、悪かった。ごめん」