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26杯目
レン「走ってったね、王子」
俺と彩人のやり取りを聞いていたレンが、階段かを上がって声をかけた。
客が居ない時間帯とはいえ、流石に大きな声だったと反省。周りのホールスタッフがチラチラとこっちを見ている。
涼 「遅すぎんだよ」
レン「良かったの?、あれで」
涼 「何が、」
レン「なんとなく“引き裂く方向”だって有りだったんじゃないのか?」
涼 「そんな事出来ませんって」
レン「まさか涼が“窓際姫”に、気持ちが有るって知らなかった」
涼 「別にどうこうなりたいとは、初めから
思ってないよ。ただ、彩人の対応があんまりだったから…」
俺はずっと1年間、扉を開けて送り出す役目だった。
レン「本当?でもさ、」 涼 「んー?、」
レン「あの冷静に見える王子が、血相変えて走ってったのが何か面白かったな」
涼 「あんなの、初めからバレバレなんだよ、」
レン「ん?」
涼 「ピアノ聴けば解かるんだよ。色々と」
レン「ははは。お前、相当王子の事好きなんだな」
涼 「耳がいいだけだろ」
レン「いや、ハートでしょ?」
涼 「は?」
レン「音楽ってハートで聴くからね」
涼 「はいはい」
レン「俺も“トクベツ”を気長に待つ事にしようかな…」
涼「だから初めからそう言ってるじゃん。」
レン「めんどくせーな、」
涼 「めんどくせーよ、」
レン「めんどくせー事ばっかだな、」
涼 「めんどくせー事ばっかなんだよ」
レン「今日、バレンタインデーって覚えてた?」
涼 「めんどくせー日だって覚えてますよ」
レン「涼は、何個もらったの?チョコレート」
涼 「めんどくせー程もらった」
レン「なんだそれ笑」
涼 「お返しとかめんどくせーじゃん?」
レン「あー、そうだな。本当だよ」
涼 「あーあ、」
レン「王子、彼女の取った部屋に泊まるのかな?」
涼「あーもう、身も蓋もない…。
考えないようにしてる事をズバッと言いますね。逆に清々しいわ」
レン「でもそうなったら、ホテル内で噂になるから、俺なら嫌だな」
涼「確かにね。でもそこは愛の力で何とかなるんじゃない?」
レン「ああ、バレンタインって事でね」
涼 「そう。バレンタインだからね」