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page 35 Story of 永遠 8/17
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美月「もう一度弾いてください」
永遠「ダメですよね、やっぱり」
演奏シーンの撮影が近付くにつれ、美月先生の指導は徐々に厳しさを増した。
そして撮影を明日に控えた今日のレッスンは全く妥協を許さない。
ほんの3小節の演奏にもう7回目のダメ出しをくらっている。
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「あ…、今の感じです!」
マジか、やった!
8回目の演奏へのお褒めの言葉に心躍る。
永遠「実は今、俺も良かったななんて思ったんですよ」
舞い上がったのもつかの間 、
美月「何度弾いても今のように演奏出来るように体感として身につけて下さい。
さあ、ここからスタートです!もう一度行きましょう!」
そんなとどまる事を知らない熱心な指導のお陰で、徐々に自分の物として演奏出来るまでになっていた。
永遠「俺、実はこういう曲は苦手で」
美月「こういう曲?」
やっと曲が形になって会話する隙をくれる雰囲気になった。ぐったりと背もたれに体を預けながら言葉を投げた。
永遠「答が決まっている訳じゃ無いじゃないですかこういう曲…
割り切れないっていうか、センスが問われるっていうか…
特にこれ!終わりに出てくるこの記号‼︎
フェルマータ‼︎ 𝄐
これ、どれくらいのばしたら正解なんだろうって…」
美月「正確、ですか…」
そんな視点は持っていなかったという表情で美月先生は話し始めた。
「作曲者ロベルト・シューマンはきっと、
この曲の終わりを引き止めたかったんじゃないかなと思います」