71/100 ループ
文字書きさんに100のお題 060:轍
ループ
あなたに消えない痕をつけたい。
私は何度もあなたを踏みつける。あなたは抵抗しない。私から与えられる痛みをご褒美だと思っている。会ったときからそうだった。
あなたの名前でピザのデリバリーを何件も取ったり、デリヘルをブッキングさせてみたりする。あなたの慌てる顔を見て、ようやく安心する。私の一挙手一投足があなたに暗い影を落とす。それが楽しくてしょうがない。
でもあなたは困り顔をしながらも私を拒絶しようとしない。女だから舐めているんだろう。柔らかい泥のように私の悪意を呑み込んで、私の爪痕を消してしまう。SNSが悪意ある嘘を広めては薄めていくように、あなたは私の嘘をただ呑み込んでいく。
やわらかい腹の肉をたわませて、あなたは私の上に乗る。醜悪だと思いながら私はあなたの裸を見ている。
この瞬間だけ、あなたは私を征服している。嫌な時間だ。あなたのリズムで私の身体が反応するのが嫌でたまらない。
脂肪の塊を思いきり拈り上げる。あなたの皮膚に私の指の痕が鮮やかに浮かぶ。血を透かした肌。痕は薄れて消えてしまう。腹に指を食い込ませる。あなたの眉間が絞られて歪む。
このまま腹を裂いて、あなたの内側に触りたい。脂肪のねっとりとした感触を舌で味わいたい。
私に殺されることがあなたの願いなのだろう。
あなたの願いを叶えるのも癪に障る。本当はあなたが私をコントロールしているから。
あなたがつくるループから逃れられない。揺れながら、私は幾度もあなたの肌に指を食い込ませた。