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文字書きさんに100のお題 064:洗濯物日和
紙の雪
単身赴任しているアパート先に、妻から宅配便が届いた。
大きな細長い箱のそれは、除湿器だった。
梅雨のこの時期、コインランドリーに行くのも大変だと僕が妻にぼやいていたら、妻は「私の苦労がようやくわかったか」と電話口で笑っていた。たぶん電話の向こうで仁王立ちでもしていたんだろう。
妻は毎日ふたりの娘たちの洗い物を干しているんだもんな、と思いながら、朝起きてすぐに洗濯機を回す。
ポケットにティッシュを詰めたまま洗濯して洗濯物を白いカスだらけにしてしまったので、最近はすべてのポケットをチェックするようにしている。
妻が洗濯をするのが好きなので、僕が今まで洗濯をしたことはなかった。妻は初心者にありがちなミスだと言っていた。その日の洗濯物はいつまでもティッシュのくずでカサカサして、僕は部屋に雪を生産しながら洗濯物をたたんでいた。
下の娘が小学生にあがるころ、東京へ単身赴任することになった。妻が小物専用の宅配便の運転手というちょっと大変な仕事に就職した矢先のことだった。
僕が妻に、無理に仕事をする必要はないからね、と言うと、妻は無理をしてでも私は外に出たいと言った。
妻は幼稚園でママ友のお付き合いに振り回されて、彼女たちといっしょにいるのが心底嫌になったのだそうだ。
保育園のママさんたちのほうがサバサバしていて、自分はいつも保育園に行きたかったと言っていた。保育園のワーキングママを下に見ている彼女たちが嫌いだったらしい。
洗濯物を広げて干しながら、僕は妻の覚悟が本当にはわかっていなかったのかもしれないと思った。
わからないことがわかるというのも、ひとつの成長なんだろう。
僕は除湿機の包装を剥がして、除湿機のボタンを押した。
うなりをあげて除湿機が稼働する。音が気になって、静音ボタンを押す。
除湿機の風にはためいている洗濯物を見ながら、僕は子供たちの声を聞いてから仕事へ行こうとスマートフォンのロック画面を開いた。