見出し画像

読む🍋 黛まどか句集『北落師門 Fomalhaut』


文學の森より刊行

タイトルの『北落師門』 とは、

南の魚座の首星フォーマルハウトの中国語名だ。旧都長安の城の北門を指す。別名「秋のひとつ星」。明るく輝く星が少ない晩秋の夜空にあって、南天にぽつんとともる孤高の星だ。クルーズ船で出会った元船長の石橋正先生に教えていただいた。以来北落師門は私の心にともり、輝き続けている。句集名を『北落師門』とした所以である。

北落師門 あとがきより

とありました。星座の中国語名とはなんて素敵なのでしょう。

俳句を始めてから今日まで私はどの協会にも属さず、俳壇とは距離を置いて独自で行動してきた。そのことで、多少の生きづらさを感じたことはあるが、他方、俳壇外の多くの人々との出会いに恵まれた。また俳壇や俳人としての自分を、外から見つめる目を持つこともできた。

北落師門 あとがきより

孤高の星。黛まどかさんのこと、好きになってしまった。私も私の星を見つけます。

黛さんの自選十三句以外で句を引いてみました。

青空に触れて噴水折れにけり
つまづきて毬に抜かれし手鞠唄
冬日向一枚残し母の留守
子の声のいつもどこかに盆の家
絵らふそく灯せば城下朧めく
木簡に恋の言の葉しぐれたり
百畳の障子明りに解く旅装
クリスマスソングの中を托鉢僧
一日を籠もるにかなふ春の雨
縁なき仔猫なりしと言ひ聞かせ
したたかに水打つて市畳みけり
花茣蓙の花のあたりを譲り合ふ
裸子を捕らへそこねしバスタオル
呼び鈴に犬が出てくる夏館
お遍路の郵便局に立ち寄れる
多佳子忌や胸の高さに波崩れ
傾きて回りはじめし白日傘
サーフボード乗り込んでくる初電車
夏燕ひと雨ありし校庭に
山鳥の声を漏らして霧襖
水鉄砲通りがかりが撃たれけり
月光にまみれて戻る車椅子
囀の一樹を収めきれぬ窓
湯気立てて昔話をするときは
托鉢の残してゆける冬すみれ

考える人の「私の同行二人――ふたたびの四国遍路」の連載もとてもよいです。


いいなと思ったら応援しよう!