(職場と学校のリーダーシップ開発:その3)アクティブラーニング
前回は,「権限によらないリーダーシップ」を理解も実行もしない上司や先輩のなかにいる新人はリーダーシップを発揮することを期待されないし,もし発揮しても歓迎もされないこと,しかしリーダーシップ教育の教室ではこうした上司や先輩とは逆方向の介入を行ってリーダーシップの発揮を励ますべきであることを説明した.今回はこれがアクティブラーニングとどう関係するかを説明しよう.
「励ます」にしても,最初に学生の誰かがリーダーシップっぽい行動を起こす必要がある.教員が投げかけた質問に対して挙手して答えたり,教員に対して質問したりという行動である.リーダーシップ理論的には「率先垂範」にあたるこの行動が出てこなくて四苦八苦するというのが,アクティブラーニング促進を意図する教員の最初の悩みであろう.定番の対策が一つある.それは教員が投げかけた問いについてディスカッションをおこなう小さなグループ(ブレイクアウト)に分けて,問題の大きさに応じた時間に元のクラス全体(メインルーム)に戻って,各グループを代表して(ここが肝心),班単位で報告してもらう.成人の研修の場合でもこれはかなり効果のある方法で,班を代表してということなら発言する大義名分があるので,クラス全体に対して発言することへの抵抗感はぐっと下がる(ざっくり日米比較するならこの抵抗感は日本でのほうがずっと高いようなので,このブレイクアウト方式の価値も日本でのほうが大きいと言えるであろう).
なおこのブレイクアウト方式をとる場合は,教員が投げかける質問の性質に注意する必要がある.唯一の正解があるような問題は最初の1問程度にしておいたほうがいい.さもないとせっかくブレイクアウトして議論しても,メインルームは要するに答え合わせの場になってしまうからである.さまざまな回答が有り得るような問いを投げかけて,議論してもらい,そのあとメインルームでは,さきほど色々出た答えをここかしこで使いながら進行する必要がある.このあたりはワークショップ運営の達人に尋ねれば山ほどtipsを与えてくれるであろう.ただ,ここでのポイントはワークショップ運営のノウハウそのものではなくて,ワークショップ型を含む双方向の授業すなわちアクティブラーニング型の授業は,学生・生徒のリーダーシップ(率先垂範)を活用しているのだという一点である.クラス全体の学びを最大化するという目的に向けた率先垂範を引き出したいがための仕掛けであり雰囲気作りなのである.
大学の場合にはブレイクアウト法に加えてTAの活躍という妙薬があるが,これもリーダーシップの活用の典型であることを次回説明しよう.
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