料理温度計を魚料理に使う
料理温度計は,分厚い肉を焼いたときに中まで火が通っているか確認するときに使うもの,あるいは揚げ物の油が160度なり180度なりの温度に達しているかを確かめるために使うというのが料理本の定説のようだ.しかし例えば前者は端を少し切ってみて赤い度合いで分かるとか,後者は菜箸を油の中に入れてみたときの泡の出る量や速度で分かるとか,といった代案もよく目にする.
しかしここ数年,魚料理に使ってめざましい成果があがっているので報告したい.きっかけは通販で普通の肉料理用の温度計を買ってみたら海外製(たぶん中国)で,肉の種類によって火が通るとみなしていい温度が違っているのでその一覧表が外箱に印刷されていた.それによると,鶏は79度,豚は71-77度,牛は大きな幅があってレアが60度,ミディアム・レアが63度,ミディアム71度(豚と同じ),ウェルダン77度,ラムは63-77度である.これだけでも情報量が凄いが,一番下にひっそりと「Fish 58℃」と書いてあって驚愕した.いわゆる肉と同列に魚の火の入り方も温度計で測れるという意味かもしれないからである.
魚を焼く・煮る料理で火を入れすぎれば,確実にパサパサになってしまって,肉以上に,台無しである.しかしその表を見てからはどんな魚料理でも温度計を刺して仕上がりのタイミングを見ることにして失敗がほぼ絶無になったのである.58度,58度と呪文のように唱えて頃合いの魚に温度計を突き刺すのである.厚みのあるものならもちろん,そうでなくても背骨のそばかどうか,表か裏かで当然温度が違う.一番火の通らなそうなところに刺して58度近くになっていれば直ちに火を止める(火を止めてからも火は通るのでもっと手前でもいいくらい).
レシピ本に,表側2分,裏返して1分などと書いてあるがあんなものは鍋や火の特性でいくらでも変わってくるのでうかつに信用できない.さらに,魚の表面に軽く焼きめをつけていったん取り出してタマネギ等で煮汁を作り,魚を戻して1分煮るなどという料理(写真はそうしたものの一つで,カジキマグロのトマト・ケイパー煮)の場合,最初の焼きめがどのくらいついたか,何分取り出していたかによっても変わるので全く駄目である.それに対して温度計なら確実.一番火の通らなそうなところ付近に,少し場所を変えて1回さして温度上昇のスピードを確認し,そろそろの頃合いでもう1回か2回測ればよい.刺して穴が開くデメリットを遥かに上回る「中身ジューシー」な魚料理ができる.温度計は通販やホームセンターで売っている数百円から千円前後のもので大丈夫.慣れないうちは鍋の中に落としてしまうとか無くすとかのアクシデントがあって買い替えても痛くない.私も自宅用とクッキングパーティ用と2つ常用しており,自宅用はカバーはなくてもいいのでニトリにあった800円くらいのを使っている.