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[Alexandros]But wait,Tour?2022ファイナル相模原2日目ライブレポ


ストレイキャッツのRock this townに乗せて、ツアーの振り返りができるOP映像がまずはじめに流れる。コロナの規制が緩和され、ようやくロックスター[Alexandros]がやってきた!ライブの開始前のこの映像は、そんな感じでファンの気持ちを昂らせる。相模原公演の前が代々木公演だったため、映像にはその様子も加わっており、振替公演ではあるものの本当にファイナルであることが改めて沁みる。お馴染みのBueger Queenでライブ開始のカウントダウン、"Don’t Fuck!!"のフレーズを合図にメンバーが登場した。まずはインストの『Aleatoric』で荒々しくセッションを繰り広げる。Aleatoric(=偶発の)というタイトル通り、このセッションは毎回異なり、公演ごとに一期一会のものとなる。その時々で音を自由に楽しめるのはロックバンドの醍醐味だ。

記念すべき凱旋ライブの1曲目に演奏されたのは、『For Freedom』である。vo.川上洋平の野心、闘争心剥き出しのリリックと攻撃的なメロディは聞き手の心を荒々しく切り開いてく。地元でのワンマンライブは10年かけてやっと実現できたとのこと。今改めて、[Alexandros]の初心を歌っているようだ。For Freedom後はドラマ 六本木クラス主題歌の『Baby’s Alright』、アニメ アオアシOPの『無心拍数』と続き、観客の心により深く切り込んでいく。これら3曲は作曲の時期も背景もそれぞれだが、「どんな事があっても這いつくばって自らの望みを叶えていく」そんな感情を残している。何年経っても[Alexandros]はブレる事なく高みを目指し突き進んでいることが、この十数分で読み取れる。

「まだ4分の1も終わってないですよー!相模原の皆さん、いけますかー!」との掛け声でライブは更に加速。「我々の先輩方の曲やっていいですかー!」と川上の声に歓声と拍手で答え、AC/DCの『Back in Black』、Lenny Kravitzの『Rock and Roll Is Dead』、The White Stripesの『Seven Nation Army』をメドレー形式で披露。背景にはピストルが映し出される。このメドレーでは白井のギターソロが特に華々しく唸っており、会場からは声が何度も上がる興奮っぷりであった。尊敬するロックスターの背中を追い、彼らは故郷でロックンロールをどのような形で表現するのか…ここからの展開にとてもワクワクしていると、切り替わった映像内のギターアンプが爆破、映画 バイオレンスアクション主題歌の『クラッシュ』が始まる。エモーショナルなメロディ中心でありつつも、ギター、ベース、ドラムそれぞれで尖ったソロがあり、内に秘めたロック魂のようなものを感じられる曲だ。そして、真夜中の宴を連想させる、弾むようなアコギが特徴的な『Waitress,Waitress!!』が演奏され、盛大なパーティーが始まることを告げるようだ。「久しぶりの曲やっていいですかー!」との問いかけで今の季節にぴったりな『SNOW SOUND』が演奏、ロマンチックな甘い曲の世界観に皆溶け込まれていく。その次には代々木公演で「バラード」と語られていたロックチューン『Kick&Spin』が投下され、雪が溶け熱気あふれる光景へと一変する。次曲にはジョークを交えたような軽いノリが特徴的な「どーでもいいから」が演奏され、ツアー公演ごとに変えている「半蔵門ってどこー?」の歌詞を、今回は「町田駅は相模原市じゃないんですかー!?」と変えて笑いを誘っていた。

ここで、今回のツアーの大目玉である『Kaiju』の披露。背景にはLINEのトーク画面が映され、川上と磯辺が対面でトークしているように、歌詞が1フレーズずつ表示される。流暢な英語で2人の息ぴったりかつ噛みつく合うような、バチバチとした対話がAメロ丸ごと披露され、二人の白熱とした対話は瞬時にサビへと突入。そして、切れ味の良いリアドのドラムと白井のギターを加えて会場全体に食ってかかる。かっこよさを全面に出したステージでありつつも、サビの映像では、曲の由来となったゴジラの代わりに巨大な猫を登場させるというユーモアを忘れていない。この、アリーナと同規模の演出はホールに収まりきらないほどの存在感であり、会場の温度を急上昇させた。Kaijuで高めたテンション感はそのままに『Beast』へと続く。この曲も攻撃的かつ、途中で匂わせる川上の色気が聴き手の血の気を更に盛んとさせる。

更に空気は一変し、スクリーンには水中から地上を見上げたような美しい映像が映されて歌われたのは『Swan』だ。Kaijuからbeast(獣)、Swan(白鳥)と次第に美しく姿を変えていくセトリに、川上らしいユーモアセンスを感じた。アリーナ公演でのThunder、Waterdropの立ち位置に当たると思うのだが、今回は電子ドラムの軽やかさを前に出したテクノポップ風のアレンジで完全に化けており、尚バージョンアップされている気がした。非常に心地よく意識が深い水の中へと連れていかれるも、後半ではバンドサウンドがエモさを増し心が掻き乱される。静と動の切り替えが忙しなく、聞き手を飽きさせない技が流石だ。

その後もパナソニック洗濯機のテーマソング『日々、織々』、ドラマ主題歌の『空と青』と続き、バラードにしっぽりと浸る時間が流れる。空と青では、「みんなバラードだからって気にせずに歌っていいからね」と川上が促し、「いつかまた夜を超え/明日の風を待って/桜の舞う季節に君と出逢おう」でファンの歌声が響き渡る。メンバーは顔をほころばせて見守り、特に一体感があった「桜の舞う季節に君と出逢おう」の部分では、川上は「いいねー!」と嬉しげに言い、磯部はgoodと指サインを贈っていた。

ここからはライブ後半戦だ。『Rock The World』を次に演奏することは曲前に話し、スタンバイするファンとバンドメンバー。「泣きたくなるほどなるほどに/僕らはちょっと強くなれる/消えたくなるほどなるほどに/世界はちょっと色付いてく」ホール全体に渡る綺麗なシンガロング。リアドはドラムの音量をぐっと落とし、他メンバーもイヤモニを外して会場の声に聴き入っていた。声出しが解禁された今、メンバーと観客でずっと一緒に歌いたかった曲のひとつだ。メンバーと観客が一緒に歌うことで歌詞に没入でき、より深く心に沁みてくる。後半戦はRock The World→風になって→Starrrrrrr→Run Awayと、観客の声がどれもとても活きるセットリストだ。この4曲の流れは本当に胸に刺さるもので、[Alexandros]というバンドの意志の強さを真っ直ぐに感じられつつ、私も変わりたい、と聴き手に希望を与えるようなセットリストであった。この黄金な流れは更なる盛り上がりへと繋がれ、Run Awayの映像で転がったスニーカーが赤く染まってリズミカルに脈打つ。歪んだ白井のギターが空気をビリビリと揺らして『Girl A』のスタートだ。今回のツアーではダンスナンバーにアレンジされており、クラブと化したフロアでは皆狂気気味に躍り狂う。Run Awayとは全くテイストの異なる曲だが、[Alexandros]はそんな曲同士を天才的に上手く繋ぐな、と毎度尊敬する。4つ打ちのビートを余韻で残し、勢いそのままに『we are still kidz&stray cats』が演奏される。Girl Aがダンスナンバーにアレンジされたのは、この曲のためだろう。先ほどのが練習ともいうように、頭のねじを吹っ飛ばして激しく踊る客席。バンドの演奏と照明、レーザーの一体感が半端なく、中でもレーザーがビートに合わせてバウンドしてラストのサビ突入と共に天井へと上がっていく様子がとても印象的だった。川上の「日常を忘れて踊り狂おうぜー!!」という言葉に伴い、目で追えないほどのライティングと、川上のダンス、バンドサウンドが理性を無意識に飛ばさせ、心と体を解きほぐす。コロナで訛ってしまったライブの感覚、生きている心地を思い出させる。我々はずっとキッズであり、野良猫のように彷徨い欲望のままに生きていこう。川上のこの言葉は、がんじがらめにされた者を解放する魔法の言葉だ。「なんて楽しいんだ…!」そんな感情でドーパミンが溢れ出して脳細胞を満たし、弾け飛びそうなほど最幸の瞬間であった。息つく暇もないほど目まぐるしく、この時点で完全燃焼したと言っても過言でないくらいだ。

思うがままに踊り狂った後は、『arkward』でクールダウン。過去を振り返って後悔があったとしても、「でも今となってはどうってことない」、歌詞ではそう語られている。懐かしい気分にさせ、つい感傷に浸りたくなるようなカントリーチックな曲調もあり、青さを感じられる。映像にはツアーの思い出の写真がスライドショーとして映され、最後には相模原2日目の写真。今回のツアーはほとんどの公演がコロナ禍のため万全な状態で楽しむことはできなかったが、それも何年後に振り返るとある意味感慨深い思い出だったな、と思えるのだろうかと、ゆったりとした曲調の中でふと思わされた。

本編ラストを締めくくるのは、『閃光』だ。「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」のために作られた曲であり、主人公の心境の変化を物語になぞらえて繊細に描いている。タイアップ用に作られたものであるが、2020年のコロナで様々なことを諦めた者たちに向けた曲とも取れる。痛みを知らないがために挑戦に対して弱気なAメロから、立ち向かう強い決意をするBメロへの展開がそう考えを巡らせる。「くだらない言葉をもう一度叫んで/誰にも染まらない心抱いたなら」が、周りからくだらないと言われたことも実行する、誰に何を言われても揺るがない意思を思わせる。どんな世の中でも自分を信じて、「一筋の光」に向かって突き進んでいけ。[Alexandros]からのメッセージのようであり、リリースされてからのライブで、彼らがこの曲をラスト一曲に持ってくることには大きな意味があったのだ。そして声出しが解禁となった今、ようやく観客の歌声を入れて完成することができたため、閃光の完成形をメンバーの地元で聞けたことは感動的であった。

本編後はアンコールの呼びかけに答え、「相模原の皆さんまだまだ行けますかー!」と叫ぶ川上。アンコール一発目は『Dlaculala』を披露。メンバーはマイクを客席に向けてフロアからのコールを聴こうとしており、会場に最高のラヴソングを贈った。そして、ここで撮影許可が出され『無心拍数』と『アルペジオ』の「オーオーオー」のコーラス部分を川上→客席の順で歌う場面へ。今まで声が出せなかった分を取り戻そうとしているようであり、この日イチの全力の歌唱がメンバーにも届いたに違いない。コーラス後は『Adventure』にスッと突入。代々木公演の1曲目を飾った曲がアンコールに持ってこられた。川上は端から端まで移動してファン一人一人の表情を見て歌い、しきりにマイクを客席へ向けていた。ラストには会場一体となった歌唱が感動的であり、盛大なコールアンドレスポンスが響き渡った。撮影OKだったのは本来Adventureまでだったが、おまけとして相模大野駅で採用してもらうために作ってきたという、ワタリドリの電車メロディの上り・下りをそれぞれお披露目した。メンバーは満面の笑みを浮かべるくらい完成度が高く、会場からも「良い!」という声が即座に上がるほど。「#小田急線ワタリドリで動画拡散してくださいね」との川上のお願い通り、ライブ終了後にTwitterではトレンドに入り、小田急公式の耳にもすぐ入っていたため、近いうちに実現されるかもしれないと期待が高まる。動画撮影という名の故郷凱旋のお土産を持たせた後は、アンコール3曲目、ラストの曲だ。「泣いても笑ってもこれで最後!いけるか相模原ー!」と川上が叫び、代表曲の『ワタリドリ』で大団円を飾った。どこまでも跳んでいくが、必ずワタリドリのように舞い戻ってくる。相模原でこの曲を聴くと、[Alexandros]がどこまでも飛んでいき故郷に帰ってきたことと重なる、非常にエモーショナルな締めくくりだ。メンバーも観客も、後悔のないように思う存分に飛び跳ねてBut wait,Tour?2022はフィナーレを飾った。全30曲、約3時間のライブは濃密で、メンバーの故郷という思い出深さもあり非常に特別な日となった。また、ホールでステージと近い距離感と声出しありにて、メンバーとファンとがコミュニケーションを取れたこともあり、総じてアットホームなライブであったのではないだろうか。「更に大きくなったらまた相模原でやりたいですね」という川上の発言が叶うその日が待ち遠しい。

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