ライブはみんなで作るものーmiwa acoguissimo5 仙台公演ライブレポー
miwaがデビューして間もない2011年から行っている、アコースティックギター1本の弾き語りライブ"acoguissimo(アコギッシモ)"。過去には武道館、横浜アリーナでも、たった1人のステージで大成功を収めた。5回目のツアー敢行となり5年ぶりともなった今回のacoguissimo5は、東名阪の他にも福岡、新潟、青森、(miwaがヒロインを演じた映画"君と100回目の恋"でもゆかりのある)岡山など、北から南まで駆け巡る。ファイナルは北海道の旭川と札幌の2daysなのも珍しい。
今回は、4/30の仙台darwinでの公演をレポートする。本会場はツアースケジュールの中でも最初のオールスタンディングである。パンパンに入った仙台darwinでは、acoguissimo5のグッズを身につけ青く染まったフロア、そして開演をソワソワと待つファンたち。ステージにはピックが下げられたマイクスタンドのみ置かれ、本当にmiwa1人だけが立つのだと分かる。18時定刻にmiwaが登場し、ロック感滲み出るアウトロを弾いてやや荒々しく始まる。1曲目に選ばれたのは『chAngE』。初っ端からヒートアップさせる気満々だ。疾走感溢れるエレキギターのソロも、アコギで見事に表現。マスク有りでの声出しがOKとなったライブハウスでは、観客は「オイッ!オイッ!」とに力強く掛け声をあげ、タオル回しがフロアを染めバンド編成並みの盛り上がりである。アコースティックでもエンジン全開で熱いライブハウス。初めて来た人は、弾き語りの概念を覆されたのではないだろうか。
激アツな空気で始まり、続いたのは、夏らしさで一杯のポップチューン『君に出会えたから』だ。miwaの「せーの!」を皮切りにタオルを回しながら「オーオーオオーオーオオー♪」と歌い、「イェーイ!」ではmiwaと一緒にジャンプするファン。「まだ帰りたくないよ」の部分では、「ないよー!」と叫ぶコーンアンドレスポンスも完璧だ。この曲も、声出しの解禁で大きな一体感を作り出す。ライブを楽しむ感覚が蘇り、アドレナリンで体中が満たされる。
やや汗ばむ程度に2曲終え、しっとりとした雰囲気で春らしいバラードの『サヨナラ』へ。弾き語りで披露されるのは珍しく、さらに今回は曲中の「なんていやだよ」をファンに合図し歌ってもらうという初の試みも。フロアは瞬時に応え、miwaもご満悦の表情。アコギッシモは回数を重ねるごとにmiwaの声に深みや趣が増していっているのがよくわかり、バラード曲では一気に聴き手の心を掴んで離さない。特に去年以降、miwaは地声を生かした歌い方をしている印象があり、今は最上級に仕上がっている時だろう。
ここ以降は、幅広い世代の恋愛曲が続く。まず「新曲をやってもいいですか?」と披露されたのはリリースされたばかりの最新曲『ハルノオト』。学生の曲は久々に描きましたねえとのこと。ハルノオトでは、曲の進行と共に"僕"から"君"への想いは募るも、届かない切なさが増していく。それを、そよ風のような優しい歌声から力強く訴えるような歌声に変化することで表現する様には圧倒された。その後「大切な人を思い浮かべながら聞いて欲しいです。」と一言MCをし演奏されたのは、『Love me』。ハルノオトは学生の青く甘酸っぱい恋愛ソング、Love meは思い通りになかなか進まない大人の恋愛ソングと、この2曲の流れは主人公の成長をも感じさせ、恋愛ストーリーが思わず浮かんだ。
そして次曲に歌われたのは、公演日の数日前にwith ensembleでも公開された『片想い』。男女問わずどの世代にも刺さり、長く愛される曲だ。サヨナラ、ハルノオト、Love me、片想いと恋愛曲が4連続となったが、この流れは全て一方通行の恋愛になっている気がした。miwaによる粋な演出だろうか。
ここで、アコギッシモ恒例の「miwaに言いたい!聞きたい!コーナー」へ。開演前にmiwaに言いたいこと、miwaに聞きたいことを募集し、抽選箱から選ばれたものに答えていく。かつてのmiwaはMCが苦手と言っていたが、それを感じさせない饒舌さでファンからの質問に返していく。「ギターの解説をして欲しい。ハミングバード(というギター)の音色を聴いてみたい」という質問では、たまたま持ってきていたハミングバードで弾き語りも披露し、要望にもできる限り応えていた。1人1人の目を見て誠心誠意答え、時にはヤジも拾いながら送るコーナーはmiwaとファンとの、お互いに尊重し合う関係性を改めて感じる時間だった。
笑いありで緩いコーナーが終わり、事前に告知していたメインイベント、miwaとデュエットするタームへ。今回の課題曲は、feat.に川崎鷹也を迎えた『2月14日』。そして、仙台会場で選ばれたのは、miwaからも川崎鷹也みがあると言われた男Cりょーやさん。「めっちゃ練習してきました」と話しており、歌い出すと鳥肌が立つほどのうまさでmiwaも「フゥゥ〜!!」と歓声をあげるほど。会場のファンも2人のデュエットに酔いしれており、大盛り上がりとなった。
ライブも後半戦となり、ギターの腕と歌唱力にかかっているアコギッシモの本領発揮はここからだ。まずは真っ直ぐな信念を歌った『ONENESS』で会場一体に大きなシンガロングを起こす。幾度と繰り返される「oh oh oh oh oh」の部分は次第に力を増していき、仙台darwinの隅々まで、そして観客一人一人の体の深くまで響き渡った。ONENESSで啖呵を切った勢いは止まらず、アコギでは初披露となる『B.O.Y』へ。観客の熱量アップと共にアツくなる演奏。そして、B.O.Yではファンがパンパンパンパパンっとクラップするという初の挑戦も。ファンの参加により会場全体で曲が完成しており、ストリート感満載かつ、miwaは「ヘイ!」とがなる部分もあり、miwa自身のテンションが上がっていったのもわかった。
熱い2曲を終え、聴き馴染みのあるアルペジオが弾かれ空気は落ち着く。ほとんどの観客がこれを聴き次の曲を察しただろう。リリース以来セトリから外れたことはない程の代表曲、THE FIRST TAKEでも話題となった『ヒカリヘ』だ。
アコギにぴっとりと寄り添うmiwaの歌声。また、透明感のある力強いロングトーンと、会場の後ろのファンまで訴えかけるような真っ直ぐな目線は、純粋無垢で強く輝いてる。正に光の道筋そのものだった。光で満ちた会場を、ファンの拍手でさらに暖かく包み込む。miwaはこの光景にとてもグッときたようで、ヒカリヘを終えると目をうるうるさせながらMCへ。
「仙台で久々にライブができて、ここにいるみんながとってもパワフルであたたかくて、胸が熱くなりました。次の曲で最後になります。
みんなとこれからも数えきれない季節を超えていきたいです。」
本編最後の曲は『あなたがここにいて抱きしめることができるなら』だ。力強く、生命力を感じつつも優しく溶ける様なmiwaの歌声。「私もみんなを愛しています」と伝えるように、先ほどの拍手喝采に恩返しをするように、miwaがファンを愛で優しく包み込む。愛するファンとこれからも色んな景色を見ていきたい、そんなメッセージも込められた、陽だまりのような空気で本編は終了しmiwaはステージを後にする。
miwaコールが鳴り響き、『春になったら』をBGMに、Tシャツに着替えてグッズの缶バッジを大量に付けたmiwaが再登場。BGMかと思いきやそのまま歌い、ぴょんぴょん跳ねながらステージを右に左に動き回り、1人1人の目を見て手を振る。できるだけ多くのファンを見つける様にたくさん動きながら歌い、サビでは「いくよー!」の声かけでファン全員と高らかにジャンプをするmiwa。誰1人置いて行かない、そんなmiwaの優しさと、会場の一体感も瞬時に作り出す曲の力が、改めてよくわかるステージだった。
miwa「アンコール一発目は『春になったら』でーす!これは弾き語りしてないので、入場曲でーす!みんなのすごい熱量の「(歌詞中の)まだ言えなくて〜♪」、言えそうな人ばっかでしたね〜〜笑」と、小ボケを含みつつMCに入る。グッズの紹介をし、ここからが本当のアンコールである。アンコール曲は東日本大震災をもとに作った『希望の環(WA)』にしようと思ったが、「またこれかー」となる人もいるかもなと思い、別の曲にしたとのこと。miwaがたくさん悩んだ結果、選ばれたのは『441』だ。この曲なら、足が疲れたみんなでも楽しめるであろうと話すmiwa。サビでは「みんなでー!」と声かけをし、お決まりの「441♪」と大合唱が起こると「ありがとう〜」とにこやかに笑うmiwaが印象的であった。この、いつもの光景もやっと戻ってきたんだな…と筆者はしみじみと感じた。miwaはMCにて、「acoguissimoでの弾き語りは私の原点であり、修行でもあります。ギター1本で1つになれて、みんなの声を聴けて胸がいっぱいです」と語った。2011年から開始し最初はプレッシャーが凄かったと話していたアコギッシモも13年の時が経った。ステージに立つのはmiwa1人のみで孤独を感じるライブも、ファンの力を借りることで、ここまでの盛り上がりと一体感を作り出すことができる。最後に演奏されたのは、アコギッシモのことを歌った曲『アコースティックストーリー』だ。ファンへの「これからもよろしくね」という意味も込められた、そしてアコギッシモの締め括りにふさわしい曲である。歌詞の「今すぐ君に会いに行くよ/たとえどこにいても」は、コロナ禍で会いたい人に会えない期間が続き、ようやく解禁された今と重なり涙腺が刺激されたファンも多いはずだ。
ファンが歌うパートでは一体感のある「オーオーオーオー」の歌声が響き渡り、miwaは「終わらないで」と言わんばかりにギターを奏でる手を止めず歌声を噛み締めているようだった。
その光景はとても感動的で胸が熱くなり、miwaとファンとの強い絆を感じさせた。
全14曲を演奏してacoguissimo5仙台公演は終了し、miwaは最後にステージの端から端まで、会場の奥まで目線を送り、深くお辞儀をする。そして、マイクレスで「ありがとうございましたぁー!!」と最大限の感謝を送り、大きな拍手にて本公演は幕を閉じた。
アーティストとライブは観客がいてこそ輝く。コロナ禍でぼやけてしまっていた概念を改めて思い出させる、ライブの本当の楽しさを実感させられた。そして、miwaとファンとの関係性が素晴らしく、夢を叶えていくmiwaと一緒なら、次はどんな最高の景色が見れるのだろうと期待が非常に高まる公演であった。