不倫の"好き"は偽物
「付き合ってほしい」
繰り返される告白に戸惑う。
秀さんのことは嫌いじゃない。
寧ろ好きだ。
……好き、だけど…好きだから、良くない。
秀さんには奥さんがいて、子供さんがいる。
好きになったって叶わない。
適当に遊ばれてポイ、だ。
恋がしたいわけじゃなくて、性欲満たしてくれる相手がほしかっただけなの。
好きになっちゃいけない。
いや…好きになってもいいけど、一途に深く好きになってしまったら…欲しがってしまったら、関係が終わってしまうから駄目。
「お願い…好きなんです」
そんな簡単に好きとか言わないでほしい。
「………私、すぐ病むし、やめといた方がいいですよ!」
きっとまたずく不安定になって振り回してしまう。
秀さんが良い人でも、何度もそんなことされたら飽き飽きするだろう。
「大丈夫です、そこも含めて受け止めますから!」
…自信満々なのは何故だ。
「いや、でも……」
「大切にします、絶対!だからお願い…だめ?」
肩を竦め、首を傾げて見つめてくる。
この人は…………
いい歳してなんでこう可愛いのか…?
「_…絶対、ですか?」
「はい!絶対です!!」
「私…結構重いですよ?」
「大丈夫!むしろ大歓迎!!」
「うーん………じゃあ…お願いします…」
こうして、私の不倫相手探しは
複数人会うことなく、最初に会った秀さんに決まった。
ありがとう、嬉しい!と抱きしめてくれる腕の力が強……………強すぎ!!(笑)
この前の事故の時は色々いっぱいいっぱいで意識してなかったけど、腕も肩も胸も背中も、硬くて暖かい。
いいにおいがする…。
シャンプー?洋服のにおい、かな?
肩口に顔を擦り寄せると、秀さんの腕に力が込められて
「はぁ……もー…かわいい!」
ため息混じりに耳元で囁かれて、胸がキュウゥと苦しくなった。
嬉しい、嬉しい嬉しい……
けど…
でも…
この服はきっと、奥さんが洗濯してて…
奥さんがつけたにおいなんだよね。
あーーーだめだ、
言ったそばから病む(笑)
そっと体を離して、
「絶対大切にするから!後悔させない。末永くよろしくね」
嬉しくてたまらないという顔で微笑む秀さんに笑顔を返した。
不倫に"絶対"の幸せなんてないんだよ。
そう思いながら。