原石鼎を研究する 初読篇⑥
大正七年
元日の空青々と淋しけれ
淋しけれ、に持っていかれた
元日の机によりて眠りけり
元日なのに/元日だから
ポスト赤きに立つ恋文や日の氷柱
説明できないけど好きな句
立つ霜と夕焼けてゐる水仙花
季語
春月を包みて雲や動き居り
「包む」の斡旋
陽炎や石乾きつゝ草の中
季語の力
春宵の灰をならして寝たりけり
作為がないところがいい
足投げ出せば足我前や春の海
当たり前のことを言うのが面白いというスタイル?
蛤の二つに割れし白さかな
写生!!
牡丹の落花にゐたる蛙かな
写生!!
行く春の近江をわたる烏かな
嬉しい句
春鹿の眉あるごとく人を見し
中七の強さ
春雷やくもりに堪へて梨花白し
「堪へて」だよなあ 石鼎Wordセンスって感じ
そのなかに角なき鹿のおぼろかな
そのなかに……どこ? からの「おぼろかな」
春の霜月出でてなほとけにけり
月出でて=夜? 時間経過がむずい
春霜のたそがれ色にとけにけり
美しいものが美しくとけてゆく。ただそれだけ。
淡雪に忽ちぬれし大地かな
「忽ち」
追はれたる蛙尿ひつて離れけり
愉快じゃん……。
あきらかに雀吹かるゝ若葉かな
「あきらかに」
でゝ虫の腸寒き月夜かな
季語がいっぱい
夏帽や我を憎む人憎まぬ人
夏帽や
蛍なほ光ある如く死に居たり
「なほ」
一つ盆にコツプ二つや麦酒ぬく
写生の喜びだなあ。
蓮池にてらしはじめし蛍かな
蛍だって、場所を選んで光りだすよね。
紫陽花の古木に蝶の光かな
なんとなくだけど紫陽花じゃないといけないし、古木で、光じゃないといけない。
蓮の葉をこぼるゝ露の音を聞け
聞け!!!!!
静かさや蜻蛉とまる火消壺
写生が心地よい。
雲二つに割れてまた集るそゞろ寒
ぼーっと見てなきゃ気付かないよなあ。心の内の興奮がある。
障子洗うて池のほとりを汚しけり
てへぺろって感じもする。
大鐘に奈良は滅ぶる芒かな
時代を遡っていく感。芒の必然性。
コスモスの紅のみ咲いて嬉しけれ
こわい人かも。白はだめなん……?
無花果の裂けていよ/\天気かな
いよいよの迫り来る感。始まりとしての無花果。
短日や或時太き我心
或時の上手さ。躁、って感じ。
冬空や傾き動く海の面
そう見えたのかもしれないし、地球規模のことかもしれない。
おもしろや初雪ふんで電車まで
初雪の楽しさって、ある。こうだよなあ。
寒椿の一葉一葉に牡丹雪
ゆつくり落ちてゆく牡丹雪と、「一葉一葉に」の調和。
舟火事の星空そめしばかりにて
さも美しい景のように描かれるところも不気味。