JRAにおけるレースの出走馬決定順の規則(2023年時点)
しばしば馬主さんも混同している競走馬の出走優先順位の話。まあルールが複雑なので、まずはそのあたりを確認していこう。
優先出走権関係
トライアルレース・ステップレース
以下のレースに関しては、以下の条件を満たした場合は、優先出走権が認められる。
桜花賞
チューリップ賞・フィリーズレビュー - 3着以内(未勝利・未出走馬の場合2着以内)
アネモネステークス - 2着以内(未勝利・未出走馬の場合1着)
皐月賞
弥生賞・スプリングステークス - 3着以内(未勝利・未出走馬の場合2着以内)
若葉ステークス - 2着以内(未勝利・未出走馬の場合1着)
NHKマイルカップ
ニュージーランドトロフィー・アーリントンカップ - 3着以内(未勝利・未出走馬の場合2着以内)
オークス
桜花賞 - 5着以内
フローラステークス - 2着以内
スイートピーステークス - 1着
日本ダービー
皐月賞 - 5着以内
青葉賞 - 2着以内
プリンシパルステークス - 1着
秋華賞
紫苑ステークス・ローズステークス - 3着以内
菊花賞
セントライト記念・神戸新聞杯 - 3着以内
それ以外 - 各レース右の各レースの1着
フェブラリーステークス - 東海ステークス・根岸ステークス
高松宮記念 - 阪急杯・オーシャンステークス
大阪杯 - 中山記念・金鯱賞
天皇賞(春) - 阪神大賞典・日経賞
ヴィクトリアマイル - 阪神牝馬ステークス・福島牝馬ステークス
安田記念 - マイラーズカップ・京王杯スプリングカップ
スプリンターズステークス - キーンランドカップ・セントウルステークス
天皇賞(秋) - オールカマー・毎日王冠・京都大賞典
エリザベス女王杯 - 府中牝馬ステークス
マイルチャンピオンシップ - 富士ステークス・スワンステークス
チャンピオンズカップ - みやこステークス・武蔵野ステークス
国際競走の外国馬
国際競走に関しては、外国馬に優先出走権が認められる。
地方馬
地方所属馬は、以下の条件を満たした場合、優先出走権が認められる。なお、当然だが、先ほど挙げたトライアルレース・ステップレースで優先出走権をとれているならば、それを使用可能。
まず、重賞実績によるもの。
2歳GI
全般 - JRA2歳芝重賞1着
阪神ジュベナイルフィリーズ
アルテミスステークス・ファンタジーステークス - 2着以内
朝日杯フューチュリティステークス
京王杯2歳ステークス・デイリー杯2歳ステークス - 2着以内
ホープフルステークス
東京スポーツ杯2歳ステークス・ラジオNIKKEI杯2歳ステークス - 2着以内
3歳GI・3(4)歳以上GI
全般(ただしフェブラリーステークス・宝塚記念・ジャパンカップ・チャンピオンズカップ・有馬記念を除く) - JRAのGIもしくは外国のG1の1着
3歳春季GI
全般 - JRA3歳芝重賞1着
日本ダービー - 京都新聞杯2着以内
3(4)歳以上のステップレースのある芝GI - すべてのステップレースの2着以内
次に、それ以外について。まず、フェブラリーステークス・宝塚記念・ジャパンカップ・チャンピオンズカップ・有馬記念には、優先出走権という概念はない。
(指定)競走
ダートGII・GIIIのうち、3歳のレースを除くもの - JRA計算の収得賞金が1600万円を超える馬
芝重賞およびトライアル競走 - 芝実績馬として選定された馬。これは以下の芝レースで右の条件を満たしたもの
JRA重賞 - 2着以内
九州産馬限定以外の(指定) - 1着
海外のパート1国重賞 - 1着
中央オープン・3勝クラス(特指) - 1着
2歳・3歳春季ステップに申し込む場合に限り(特指) - 1着
それ以外 - すべての地方馬
(特指)競走 - 格上挑戦でない場合の、JRA認定馬
トップハンデ
ハンデキャップ戦に関しては、まず先ほどまでに定められた優先出走権を持っている馬をまず除外したうえで、ハンデ上位3頭に関して優先出走権を認める(同順位の馬で並んだ場合は抽選で優先出走権を決める)。なお、この計算の際のハンデには、アローワンス(年齢によるものと性別によるものがある)と南半球産の減量を加味するものとする。
例えば、8月に実施される2000mのハンデ戦においては、以下はすべて同じハンデとみなす(ただし、WASJは除く。WASJでは南半球産の減量は適用されない)。
古馬牡馬 - 58kg
古馬牝馬 - 56kg
3歳牡馬・せん馬(北半球産) - 55kg
3歳牝馬(北半球産) - 53kg
3歳牡馬・せん馬(南半球産) - 53kg
3歳牝馬(南半球産) - 51kg
除外権
まず、除外権が認められるレースは以下の通り。
2(3)歳オープン(重賞除く)
障害平場オープン
2(3)歳1勝クラス
新馬戦
その他番組で特に定めた競走(どのレースだか不明)
まず、共通事項は以下の通り
行使できるのは2か月以内
ただし、2か月以内に行使して除外を受けた場合、そこから2か月以内に改めて行使可能(その際、持っている個数を一気に消化する)
定められた条件以外に出馬投票してはいけない
地方の指定交流競走に出馬投票してはいけない
オープン以外では出走枠のうち5頭分は優先出走権を認めない
優先出走権は個数が多い馬から順番に処理される
オープンの場合、個数が同じ馬は本則の決定順を用いて出走馬を決定する
それぞれの定められた条件は以下の通り。
2(3)歳オープン - 2(3)歳オープン(重賞除く)・2歳1勝クラス
障害平場オープン - 障害平場オープン
2(3)歳1勝クラス - 2(3)歳1勝クラス
新馬戦 - 新馬戦
その他番組で特に定めた競走 - 不明
宝塚記念・有馬記念以外の3(4)歳以上GI競走
これは各レースに定められている出走馬の決定順に記載されているが、レーティングにより定める順位上位5頭(ただしレーティング110(牝馬106)以上が必要)は、出走順位が上位になる。
宝塚記念・有馬記念
これも各レースに定められている出走馬の決定順に記載されているが、第1回特別登録を行った馬の中で、ファン投票上位10頭は、出走順位が上位になる。
2歳夏季GIII全般
夏季競馬において実施される2歳GIIIは、優先出走権の概念はないが、ほかのレースとは少し異なる変わった基準が定められているため、ここで触れておく。
まず、後述する本則通りに出走順位を決めるが、同順位で並んだ馬が複数いる場合、新馬戦で勝利した馬のほうが優先される。
出走順位決定の本則
ここまでの優先出走権を持っている馬を処理した後は、レースの条件ごとに定められた出走馬の決定順序を用いて、出走馬を決定する。以後、以下の用語を用いる。
自ブロック馬 - 以下の定められた競馬場ごとに定められる、所定のトレーニングセンターの厩舎に所属する馬。ただし、工事での振替がある場合はそれを加味する
東京・中山・夏季福島・夏季新潟(ただし2場開催期間除く) - 美浦
京都・阪神・夏季中京・夏季小倉 - 栗東
他ブロック馬 - 自ブロックでない馬
ブロック区別がない - 自ブロック・他ブロックの区別がないということ。以下のレースが該当する
夏季開催以外の第3場
札幌・函館
2場開催期間の新潟
転籍後初戦 - 地方もしくは海外からJRAへ転入した初戦。
なお、同順位の馬は、抽選で出走馬を決定する。また、正確な定義通りには書いてないので、正式な文言はJRAを参照のこと。
2(3)歳オープン
これはいたって単純で、収得賞金が多い順で決定する。ただし、先ほども述べた通り、2歳夏季GIIIの場合、同額の場合、新馬戦での勝敗が左右することになる。
3(4)歳以上平地オープン(重賞およびリステッド除く)
オープンクラスで、直近2か月以内に前走3着以内に入った馬
オープンクラスで、転籍後初戦
オープンクラスで、出走間隔が長い順
以下3勝クラス→2勝クラス→1勝クラスについて2・3を繰り返す
未出走馬
未勝利馬
3(4)歳以上3勝クラス
3勝クラスで、直近1か月以内に前走3着以内に入った馬
3勝クラスで、転籍後初戦
3勝クラスで、出走間隔が長い順
以下2勝クラス→1勝クラスについて2・3を繰り返す
未出走馬
未勝利馬
3(4)歳以上2勝クラス
2勝クラスで、直近1か月以内に前走5着以内に入った馬
2勝クラスで、転籍後初戦
2勝クラスで、出走間隔が長い順
1勝クラスについて2→3の順
未出走馬
未勝利馬
3(4)歳以上1勝クラス
ブロック区別がある場合
1勝クラスで、直近1か月以内に前走5着以内に入った自ブロック馬
1勝クラスで、転籍後初戦の自ブロック馬
1勝クラスで、出走間隔が長い自ブロック馬
他ブロック馬について1から3を繰り返す
未出走の自ブロック馬
未勝利の出走間隔の長い自ブロック馬
他ブロック馬について5・6を繰り返す
ブロック区別がない場合
1勝クラスで、直近1か月以内に前走5着以内に入った馬
1勝クラスで、転籍後初戦
1勝クラスで、出走間隔が長い馬
未出走馬
未勝利馬で、出走間隔が長い馬
平地未勝利戦
ブロック区別がある場合
1か月以内に前走5着以内に入った自ブロック馬
未出走の自ブロック馬
未勝利の自ブロック馬
他ブロック馬について1から3を繰り返す
ブロック区別がない場合
1か月以内に前走5着以内に入った馬
未出走馬
未勝利馬
障害未勝利戦
1か月以内に前走5着以内に入った馬
転籍後初戦の馬
出走間隔が長い馬
それ以外
未出走・未勝利馬以外について、クラスが高い馬
未出走・未勝利馬
平地3(4)歳以上の重賞・リステッド競走、および障害オープン競走での順位付け
平地3(4)歳以上の重賞・リステッド競走、および障害オープン競走での競走馬の同じクラス内での順位付けは、収得賞金に直近1年間で加算した収得賞金を加え、直近2年間でGI/J・GIで加算した収得賞金を加えた出走馬決定賞金を用いて決定する。
出走馬決定の具体例
では、具体的に出走馬の決定順を見ていく。第1回特別登録馬を見ていくことにする。また、直前での回避などは想定しないものとする。
2023年知床特別(3歳以上2勝クラス)の場合
このレースは9月2日に実施される定量戦である。フルゲートは16頭。
まず、出走馬を順番に見ていくことにする。順位が書いてある馬と書いてない馬がいるが、これは直近1か月以内(オープン競走以外の成績対象期間)、今回の場合は8月5日から30日までの期間の場合で、かつ格上挑戦でない場合のみ書くこととしている。
アスクエピソード - 2勝クラス・前走2023年8月6日、6着
ウメムスビ - 2勝クラス・前走2023年6月17日
ガリレイ - 2勝クラス・前走2023年8月6日、7着
クールムーア - 2勝クラス・前走2023年8月6日、4着
サニーオーシャン - 2勝クラス・前走2023年7月16日
シゲルファンノユメ - 2勝クラス・前走2023年7月16日
ジャガード - 2勝クラス・前走2023年8月6日、5着
ショウナンアメリア - 2勝クラス・前走2023年7月23日(除外)・除外以外前走2023年6月17日
シルフィードレーヴ - 2勝クラス・前走2023年8月20日、3着
スマートルシーダ - 2勝クラス・前走2023年7月16日
センタースリール - 2勝クラス・前走2023年8月20日、4着
ダノンカオス - 2勝クラス・前走2023年7月16日
デルマカミーラ - 2勝クラス・前走2023年8月20日、12着
テーオースパロー - 2勝クラス・前走2023年8月6日、2着
トーホウキザン - 1勝クラス・前走2023年8月13日
ナバロン - 2勝クラス・前走2023年7月8日
ハピネスアゲン - 2勝クラス・前走2023年8月20日、2着
バレリーナ - 2勝クラス・前走2023年8月20日、10着
ブランデーロック - 2勝クラス・前走2023年8月12日、5着
ミキノバスドラム - 2勝クラス・前走2023年8月6日、13着
メイショウフンケイ - 2勝クラス・前走2023年8月13日、6着
ラウラーナ - 2勝クラス・前走2023年8月20日、5着
まず、2勝クラスであり、直近1か月以内に5着以内に入った5頭を並べると以下の通り。
クールムーア
ジャガード
シルフィードレーヴ
センタースリール
テーオースパロー
ハピネスアゲン
ブランデーロック
ラウラーナ
これで16頭のうち8頭が決まることになる。残り14頭のうち、2勝クラスの馬は13頭、1勝クラスからの格上挑戦は1頭である。8+13=21は16より多いため、1勝クラスであるトーホウキザンは除外対象となる。
最後に、13頭を出走間隔が長い順に並べる。ショウナンアメリアに関しては暫定的に最終出走日を7月23日扱いとする。
ウメムスビ - 6月17日
ナバロン - 7月8日
サニーオーシャン・シゲルファンノユメ・スマートルシーダ・ダノンカオス - 7月16日
ショウナンアメリア - 7月23日
アスクエピソード・ガリレイ・ミキノバスドラム - 8月6日
メイショウフンケイ - 8月13日
デルマカミーラ・バレリーナ - 8月20日
まず、ウメムスビ・ナバロン・サニーオーシャン・シゲルファンノユメ・スマートルシーダ・ダノンカオス・ショウナンアメリアまでの7頭に関しては、出走間隔が長い順にみて上位8頭に入ることが確定したので、出走可能であることが直ちに確定する。
次に、アスクエピソード・ガリレイ・ミキノバスドラムは8位タイで並んでいる。出走間隔が長い順で出走可能な馬は8頭なので、この中で1/3の抽選を行うことになる。
最後に、メイショウフンケイ・デルマカミーラ・バレリーナは除外対象となる。
2023年丹頂ステークス(3歳以上オープン)の場合
このレースは9月3日に実施されるハンデ戦であり、芝2600mである。フルゲートは14頭。
今回の特別登録馬はすべて4歳以上であり、かつ9月なので4歳以上の南半球産の減量はなし(この時期の2200m以上の3歳馬のアローワンスは3kg、3歳南半球産馬の減量は2kg)。牝馬のアローワンスは2kgである。
また、順位を書く馬は直近2か月間(オープン競走の成績対象期間、今回は7月8日から8月30日)の場合で、格上挑戦でない場合のみとする。
アスティ - せん馬・3勝クラス・前走2023年7月29日
イヤサカ - 牝馬・3勝クラス・前走2023年6月11日
ウインエアフォルク - 牡馬・3勝クラス・前走2023年5月13日
キングオブドラゴン - 牡馬・オープン・前走2023年8月5日、10着
サトノエルドール - 牡馬・オープン・前走2023年8月5日、6着
サンアップルトン - 牡馬・オープン・前走2023年8月5日、7着
サンセットクラウド - 牡馬・3勝クラス・前走2023年6月10日
ジェットモーション - せん馬・オープン・前走2023年8月5日、4着
ジャンカズマ - 牡馬・3勝クラス・前走2023年6月10日
シークレットラン - 牡馬・オープン・前走2023年8月5日、12着
タイセイシリウス - せん馬・3勝クラス・前走2023年8月26日
ダンディズム - せん馬・オープン・前走2023年8月5日、3着
ディナースタ - 牡馬・3勝クラス・前走2023年7月29日
ビジン - 牝馬・オープン・前走2023年7月30日、12着
ブルーロワイヤル - せん馬・3勝クラス・前走2023年7月29日
ボスジラ - 牡馬・オープン・前走2023年8月5日、11着
マリノアズラ - 牝馬・3勝クラス・前走2023年8月26日
メロディーレーン - 牝馬・オープン・前走2023年4月30日
レッドジェニアル - せん馬・オープン・前走2023年8月5日、8着
このレースはハンデ戦なので、ハンデが重い馬上位3頭に優先出走権が付与される。先述した通り、牝馬には2kgのアローワンスがあるので、それを加味すると、以下のような順序になる。ハンデが発表されるのは第1回特別登録(GII以下の場合、通常は前週日曜日だが、土日月の3日間開催の場合、月曜日になるし、12月28日開催の場合は12月23日、1月5日開催の場合は前年12月28日)の翌日15時以降なので、それまでは優先出走権を得る馬は確定しない。
57.5kg - ボスジラ
56kg - キングオブドラゴン・サトノエルドール・ダンディズム・レッドジェニアル
55kg/牝53kg - サンアップルトン・ジェットモーション・ビジン・マリノアズラ・メロディーレーン
54kg - ディナースタ
53kg/牝51kg - イヤサカ・サンセットクラウド・シークレットラン・ブルーロワイヤル
52kg - ウインエアフォルク
51kg - アスティ・ジャンカズマ
49kg - タイセイシリウス
まず57.5kgのボスジラは優先出走権確定。それ以外の4頭で2/4の優先出走権を抽選となる。
以後の話では、ダンディズム以外の3頭中2頭が優先出走権を勝ち取ったとして話を進める。
残り11頭の枠の中で、直近2ヶ月で格上挑戦でなく、3着以内に入った馬はダンディズムのみなので、出走が確定する。残りは10頭
オープンクラスの中で出走間隔が長い順に埋めるが、結論から言うとオープンクラスは全部出走可能。これで10頭が埋まった状態になり、残りは4頭
その後は、3勝クラスの馬を出走が古い順に並べると、以下の通りとなる
ウインエアフォルク - 5月13日
イヤサカ・サンセットクラウド・ジャンカズマ - 6月10・11日
アスティ・ディナースタ・ブルーロワイヤル - 7月29日
タイセイシリウス・マリノアズラ - 8月26日
なお、出走間隔を計算する際、2日以上連続する開催日は、全て同一と扱う。また、年末年始に関しても、特別な扱いがあることがほとんど(あと、例外として2001年のゴールデンウィークにもこの特別な扱いがある)。このため、6月10・11日は同一扱いで計算する。
結論から言えば、ウインエアフォルク・イヤサカ・サンセットクラウド・ジャンカズマが出走可能で、アスティ・ディナースタ・ブルーロワイヤル・タイセイシリウス・マリノアズラが除外対象となる。