2023年以降の負担重量の見直しについて

2022年10月17日、2023年の開催日割などに関してJRAから発表があった。

簡単に言えば、

  1. 4月以降、京都競馬場での開催を再開する

  2. 紫苑ステークスのGIIIからGIIへの格上げを申請し、通れば格上げする

  3. 2024年以降、ユニコーンステークスの開催時期を変更する

  4. 負担重量に関して、全般的に見直しを行う

このうち、今回は4に関して話題にする。

馬齢重量の見直し

馬齢重量に関しては2021年生まれの馬から見直しが行われる(2020年生まれの馬に関しては影響を受けない)。要点としては

  • 牝馬は2歳戦・3歳戦全般55kgに統一

  • 牡馬・騙馬は3歳9月まで全般1kg引き上げ(55/56/57)。3歳10月以降の57kgは据え置き

といったところである。

3(4)歳以上競走の基礎負担重量の見直し

3(4)歳以上の基礎負担重量に関しても見直しが行われ、牡馬・騙馬57kgから58kgに増量が行われる。

最低負担重量の見直し

従来、最低負担重量がオープン競走48kg/それ以外49kgであったものが、それぞれ1kg引き上げとなり、49kg/50kgとなる。

アローワンスの見直し

アローワンスに関しても見直しが行われる。従来は1600m以下、1600m超2200m未満、2200m以上の3つに分かれていたが、これを1400m未満、1400m以上1600m以下、1600m超2200m未満、2200m以上の4つに再編する。このうち1400m未満に関しては、より早期に古馬との差が減少する(1400m以上に関しては変更なし)。詳細に関しては元記事を参照せよ。

騎手減量の見直し

従来の負担重量の減量は、以下の通りであった。

  • 30回以下 - 見習男性3kg(▲)・見習女性4kg(★)

  • 31回以上50回以下 - 見習男性2kg(△)・見習女性4kg(★)

  • 51回以上100回以下 - 見習男性1kg(☆)・見習女性3kg(▲)

  • 見習卒業後女性 - 2kg(◇)

これに関して、以下の通りの見直しが行われる。

  • 平地競走と障害競走で勝利度数を分ける

  • 障害競走に関して改めて基準を別に定義する

障害競走の勝利度数は、以下の通り

  • 10回以下 - 見習男性3kg(▲)・見習女性4kg(★)

  • 11回以上15回以下 - 見習男性2kg(△)・見習女性4kg(★)

  • 16回以上20回以下 - 見習男性1kg(☆)・見習女性3kg(▲)

  • 見習卒業後女性 - 2kg(◇)

これにより、5年以内の騎手であれば平地と障害で見習かどうかが変わることになる。

重賞競走の負担重量の見直し

他のを先に記述したのは、ここの項目が長くなるためである。

2歳戦

すべて馬齢重量戦だが、馬齢重量が1kg引き上げになることに伴い、全般1kg引き上げとなる。

3歳戦

2024年以降、以下のように見直しが行われる。

  • シンザン記念・フェアリーステークス・京成杯・きさらぎ賞・クイーンカップ・共同通信杯・ファルコンステークス・フラワーカップ・毎日杯・葵ステークス - 馬齢重量(56/54)・1800万円以上+1kg→馬齢重量(57/55)

  • ユニコーンステークス - 馬齢重量(56/54)・GI勝ち馬+2kg/GII勝ち馬+1kg(2歳戦分除外)→馬齢重量(57/55)

3歳春季GIに関しても57/55の定量戦が馬齢重量と一致することから、3歳重賞全般が牡馬・騙馬57kg/牝馬55kgで統一される。

3(4)歳以上戦

まずGIと定量GII(札幌記念・阪神カップ)の負担重量の基準が58kg/56kgに統一される(従来は天皇賞(春)・安田記念・宝塚記念・天皇賞(秋)が牡馬・騙馬58kg/牝馬56kg、エリザベス女王杯が56kgである以外はすべて57kg/55kgが基準であるが、この重いほうにすべて統一)。

GIIのうち、別定戦は以下のように変更される。

  • 牡牝混合戦 基準56kg→57kg 1年以内牡牝混合GI勝ち馬+2kg/1年以内牝馬限定GI・1年超前牡牝混合GI勝ち馬・1年以内牡牝混合GII勝ち馬+1kg(ただし2歳時成績除外)は変わらず

  • 牝馬限定戦 基準54kg→55kg 1年以内GI勝ち馬+2kg/1年超前GI勝ち馬・1年以内GII勝ち馬+1kg(ただし2歳時成績除外)は変わらず

GIIIはガラッと変わる。まず従来の賞金別定(収得賞金が増えるごとに負担重量が増える)がすべて消滅し、勝ち鞍別定に統一される。基準負担重量はすべて牡牝混合戦は57kg、牝馬限定戦は55kgに統一される。GIIと同じ基準で負担重量が増える競走は以下の通り。

  • 根岸ステークス→フェブラリーステークスのステップレース

  • 阪急杯・オーシャンステークス→高松宮記念のステップレース

  • 平安ステークス

  • 鳴尾記念

  • キーンランドカップ→スプリンターズステークスのステップレース

  • みやこステークス・武蔵野ステークス→チャンピオンズカップのステップレース

  • チャレンジカップ

このうち平安ステークスは帝王賞の前哨戦扱いであり、鳴尾記念とチャレンジカップが浮いているわけだが、いずれも由緒正しいレースであるという点は共通している。

それ以外のGIIIは以下の通り。

  • 牡牝混合戦 1年以内牡牝混合GI勝ち馬+3kg/1年超前牡牝混合GI勝ち馬・1年以内牝馬限定GI勝ち馬・1年以内牡牝混合GII勝ち馬+2kg/1年超前牝馬限定GI勝ち馬・1年超前牡牝混合GII勝ち馬・1年以内牝馬限定GII勝ち馬・1年以内牡牝混合GIII勝ち馬+1kg(ただし2歳時成績除外)

  • 牝馬限定戦 1年以内GI勝ち馬+3kg/1年超前GI勝ち馬・1年以内GII勝ち馬+2kg/1年超前GII勝ち馬・1年以内GIII勝ち馬+1kg(ただし2歳時成績除外)

これにより、ハンデ戦を除き、重賞に関しては過度な負担重量が消滅する。どんなに重くなっても60kgまでである(これまでは計算上100kgを超える負担重量になることもあり得た)。

なぜ負担重量を増やすのか

公式によれば、「騎手の健康と福祉および将来にわたる騎手の優秀な人材確保」が目的とされる。これはどういうことなのか簡単に説明すると、

  • 騎手は騎乗にあたり定められた負担重量で乗るために、体重を軽くする必要がある

  • 結果として、騎手の健康を損なうほどの過度な減量を余儀なくされることもある

ということである。例えば、今村聖奈騎手がCBC賞を制したときの負担重量は48kgで、もともと国分恭介騎手が49kgまでなら乗れるが48kgは無理という形での乗り替わりになっていた。つまり、減量自体には限度があり、それを超えると体調を崩すこともある、ということだ。

騎手免許の更新時の体重上限が53kg(女性51kg/5年以内49kg、障害のみの場合55kg)というのも、今後見直しが入る可能性はあるだろう(入るとしたらそれは2024年以降)。そうなれば、人材の確保も進むかもしれない。

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