さようなら、いつかの。
1年前だったかな?
春先だっただろうか?
訳も分からず泣いた日があった。
それは突然に来た。
なんとなく自分でも薄っすらと、綱渡りみたいにフラフラと歩いてる様な「あ、今少しでも気を抜いたら危ないな」という感覚はあって
ほんとに一瞬だけ、気を緩めた時
タイトロープから落下したと同時に一気にストッパーが外れて決壊した。
ただ、それが
「危ないな」という自覚はあったものの
特別病んでいたとか明確な原因があった訳ではなかった。
死にたい消えたい消滅願望故の衝動に駆られた類のものでもない。
女特有のホルモンバランスの影響によるあれか?
いや、その数日前に終わった直後だったから本来ニッコリハッピーなはずなんだな。
溢れ出る実態の分からない感情と涙が抑えきれなくて、キッチンで座り込む始末。
じゃ、そんなに辛いなら気を紛らわす為に誰かに電話したりLINEでもすりゃいいじゃないかと思うだろうが
理由が分からないから説明のしようがなくて誰にも頼ることなんかできなかった。
でも誰かに分かってもらいたい気持ちはあって、それが余計にしんどくて涙が出てくる。
ずっとそれがループしている。
さらに、「早くこれをどうにかしなきゃ、止めなきゃ」と焦るほどにどんどん止まらなくなっていって
さすがにずっとキッチンの床にへたり込んでる訳にはいかない。
寒いし尻は冷えるし・・・
とりあえず、どうにかこうにか扉を開けた先の部屋に戻ってみた。
それでもオロロンと泣き続けティッシュの消費だけを続けている己に半ば呆れかけて
「あああああもう知らん!!!こんな日は早々に寝てしまえ!!!!寝て忘れるのだ!!!」と言わんばかりに風呂もまだ入ってなかったが無理矢理布団に入った。
布団に入ってからも仰向けのままティッシュを両の目尻の部分に添えてハンズフリーでも涙が吸える状態にして
「嗚呼、なんだこれ。見る人が見れば完全に哀れな姿だよな。アハハ・・・」
腫れた瞼の虚な目と泣き笑いの妙な表情で
ただただ天井を眺めていた。
天井を眺めていると
部屋のカーテンに僅かな隙間が空いていることに気づいた
その隙間から外灯の光が部屋の中へと差し込んで
天井に写る形がなんだか巨大な昆虫のナナフシが張りついてるみたいだなぁ、あれが本物だったら怖いよな・・・
とかなんとか思っているうちに気づいたら眠ってしまっていた。
夢を見た。
今住んでいるところに引っ越してきて
新しい生活が始まって
生活が慣れるまで仕事はゆっくり決めりゃいいやとのんびりまったり暮らしていたこのモラトリアム期間の真っ只中。
その中で、知り合った人やできた友達の顔
沢山の楽しかった時間が思い出フィルムを観ているみたいに映し出すようなそんな夢
その先に、うすらぼんやりとあの人の姿を見た。
よく見慣れた笑顔。大好きだったその顔。
近くに居るようで遠くに居るみたいで触れることはできない。
そのもっともっと先には
顔がぼんやりとしてハッキリ見えない
でも間違いなく私に向けて笑って手を差し伸べているのは分かる
実態の分からない人の姿。
その人の差し出す手に触れようとした瞬間
夢は終わって目が覚めた。
昨日、あんなに訳も分からず泣きじゃくっていたことなんかすっかり忘れてしまったかの如く
嘘みたいに心が軽やかですっきりした目覚め。
病んでる時は寝てしまえって
それほんとにその通りなんだな・・・
私はもしかしたら
この気楽で楽しくて、でもどこかで不安を抱えていたモラトリアム期間の終焉を察したのかもしれない。
モラトリアムの終焉と同時に迎える
新しいなにかと幸福の始まり
それらが入れ替わる瞬間
アップデートはなにも恐れることはないし
するべきであると思うし、人はみんなそれを当たり前に越えている。
けど、同時にモラトリアムを手離すことも
当たり前に受け入れることに対して寂しさを感じた事にあの日あんなに沢山涙を流したのかもしれない。
これは、特別でもなんでもない
ただの
とある日の私の話。
今?私?
とっても楽しく幸せに生きてる。
まぁ、どうしても堕ちる日はあるけどね。
けど、こうやって訳も分からず泣いたりする日や
私と同じような気持ちで夜を過ごす人達のことは
大事にしたいし、抱き締めてあげたいよね。
【BGM】
BYE-BYE /有頂天