就活垢とわたし
就活が終わった。7月上旬だった。
21卒は新型コロナウイルスの影響で、就活が大炎上した学年だと肌で感じた。
企業の合同説明会は中止。
対面での説明会・面接も中止、Zoomを使ってオンラインに。
挙げ句の果てには、新卒採用打ち切り。
こうやって書くだけでも字面がすごい。
何の資格も取り柄もない私は焦った。
主に生息場所がTwitterの大学垢の私は大変焦った。
同学年の友達が早い段階で内定報告。
理系の友達は院進がほぼ確定。
私だけが大学卒業した後の行き先が決まってないんじゃないかと錯覚した。
進路について友達に相談したかったが、(絶対言わないだろうと分かってはいるが)「まだ就活終わってないの?」と思われたくなかった。そして就活が進まないことに対して、心配や迷惑を掛けたくなかった。
そもそも人を頼るのが苦手なのに、変なプライドが邪魔してしまった。
だから私は新たな居場所を作った。
就活垢を開設した。
就活垢とは、就活している人たちが他の就活生との交流のために作るアカウントのこと。
とにかく就活の不安や悩みを吐き出す場所が欲しかった私は、誰かに共感して欲しかったのだろう。
色んなことをツイートした。
ES書けない。お祈りメール届いた死にたい。周りは内定貰ってるのに私は…。
共感のいいねがたくさん来た。嬉しかった。就活で悩んでいるのは一人じゃないって思えた。
TLも色んなことが流れてきた。
ES終わらない。説明会・面接ブッチしたい。気になる企業の口コミ悪い。祈られた。
それにめちゃくちゃ共感したし、みんなも同じ境遇なのに一緒に頑張ってるんだなって思えた。
中でも就活垢にとって一番タブーに近かったのは、内定報告だった。
就活垢はいわゆるNNT(=ない内定の略)の巣窟である。
内定を取ること(即ちANT=ある内定)は、あまり歓迎されない場所だった。
それ故か内定報告せずにアカウントをこっそり消す人もいて、「消えた=就活終わったんだな」と察せた。
本来交流している誰かが内定を取ることは大変喜ばしいことなのに、喜べなかった。
内定報告ツイートのリプ欄の「おめでとう!」と言っている人たちを見て、本当におめでたいと思ってるのか半信半疑だった。
身体と心は不安故に、どんどん就活にのめり込んでいった。
マイナビ・リクナビで毎晩企業を探して、興味のないところに説明会を予約しまくった。
大学垢ではあまり就活のことはツイートせず、常に就活垢を眺めてた。
同じ境遇の人間の同じようなツイートをいいねしまくった。
「内定報告は悪」という思考に飲み込まれていった。
その結果、私の心身は疲弊した。
ただでさえ就活に焦っていたのに、そこに焦りを自ら上乗せしていた。
どうしようもなくて親に泣きながら相談した。就活に対する不安を話した。
母親から言われた。
「もうそのアカウントは消しなさい」
こうして私は約2ヶ月続けた就活垢を消した。
そこから私は気が楽になった。
実際就活も学業もかなり進んだ。
闇雲にエントリーして説明会を予約したものを全部キャンセルした。
勿論先のことが不安で落ち込むことはあった。それでも大学垢で推しのことや食べ物のこと、下ネタをツイートすれば割と気分が楽になった。
一切してこなかった就活の話を友達の前でもするようになった。ほぼ自虐に近かったけど、それでも私にとっては大きな進歩だった。
そしてありがたいことに、先日内定をいただいた。
大学垢で報告したらたくさんの人から祝福のツイートが来た。中には「お祝いしよう!」って言ってくれる友達もいた。
これが本来の「おめでとう」なんだな、と(自分勝手かもだけど)感じた。
今現在も就活垢を使っている人もいるし、それが励みになった人もいるだろうから「就活垢はやめとけ」とは言えない。
周りから影響を受けやすい私には合わなかったというだけだ。
もし今後SNSで何かしらの界隈の垢を作るとき。
その垢でモチベーションが保てなくなって疲れたら、一回その垢を目にしないでほしい。
そして信頼できる人に話してみよう。親でも友達でもいい。
心を休めるのも大事なのだ。