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新世代の特異点となるか?ウルトラマンブレーザー

ニュージェネレーションウルトラマン10周年

ウルトラマンギンガ(2013)から数えて10年、作品としては11作目となる新ヒーローウルトラマンブレーザーが、予告されていた通り昨日4月21日に情報解禁された。

10年と簡単に言ってしまったが、十年一昔とは本当で、紆余曲折ありつつもウルトラマンが連続して11作品も製作されてるという事実に、まずは驚きと喜び、そして感謝で胸がいっぱいだ。

円谷プロダクション創立50周年記念作品の側面も持つギンガ

これまでの私の拙文をひとつでもお読みになった方には耳にタコかもしれないが、所謂一般向けドラマに比べて、特撮と呼ばれるジャンルは、常に製作予算という番組外の敵に悩まされている。
勿論、プロアマ問わず、映像作品というものは大小関わらず予算との戦いであるのは重々承知だ。
私事だが、某美大の映像学科を専攻していたので、経験として映像製作=あっという間に予算がなくなっていくという実感も強くある。

だがそんな中でも、ことミニチュア特撮というものは、特に金食い虫的な側面が強い。まず撮影現場に関わるスタッフの数からして違う。
それ即ち、リテイクやスケジュール超過の度にそれ相応の人件費がかかることを意味している。
さらに、敵として登場する怪人・怪獣の造形物がまた難物で、凝って作ろうものならスター俳優のギャラ相当の額など簡単に吹き飛んでいく。
2023年の現在までに生き延びている作品が、TVシリーズにおいてはウルトラマン・仮面ライダー・スーパー戦隊のみという点から考えても、それはよくお分かりいただけるだろう。
ようするに大スポンサーやブランド力といった保険のない、まったくの新企画を立てたくても、多少のヒット程度では到底割に合わないジャンルなのである。

そんな厳しい状況下にあって、ウルトラの光を次世代へと繋ぎ続けてくれたすべての関係者の皆さんに心から平伏したくなるほど、ウルトラマンギンガから始まったニュージェネレーションウルトラマンシリーズ(以下NGシリーズ)が、10年継続出来たという事実は大きいのだ。

翻ってそれは、この10年間でウルトラマンのIP(知的財産)が順調に成績を伸ばし、局側もスポンサー側も継続に値するシリーズだと認識しているという証左に他ならない。
「落ち目のときこそ応援するのがほんとのファンじゃないのか」とは、のび太くんの名言だが、苦しいウルトラマン冬の時代に、及ばずながら細々と応援してきた一ファンとしてもうれしい限りなのだ。

しかし、一方でちらりと頭をよぎる不安もある。
比べる対象があまりにも卑近過ぎて申し訳ないのだが、例えばウルトラマンどころか、子供向け番組にまったく関心がない一般層(勿論、こちらのほうが圧倒的マジョリティ)であっても、
「スーパー戦隊と仮面ライダーは日曜朝にやっているもの」
という認識は、なんとなくでも持っているのではないだろうか。
ニチアサなんていう略語が存在するのも、ある程度の知名度の証明に思える。

正確を期すると、スーパー戦隊が金曜夕方から現在の日曜朝の枠に移動したのは電磁戦隊メガレンジャーの途中からなので、1997年のことだ。
そこから既に四半世紀経っているので、一般層にある程度浸透しているのも理解できる。
第一、日本に生まれた時点で、戦隊シリーズを目にしないで育つことのほうが難しいだろう。

当時は島流し、都落ちと心無い揶揄もあったという

仮面ライダーも、現在の放送枠の前身に当たるメタルヒーローシリーズから数えると、すでに30年以上日曜朝に東映製作のヒーロー番組が放送されていることになるので、こちらも同様であろう。
特筆すべきは、仮面ライダークウガ(2000)の成功によって、仮面ライダーは新人俳優の登竜門的な立ち居地を手にしたことだ。
これによって業界内のニチアサへの注目度は高まり、同時にブランドの格を上げるきっかけともなった。

一方、我らのウルトラマンシリーズである。
誤解を恐れずに申し上げると、私はいまだに「土曜の朝にウルトラマンがやっている」という認識が、現在一般層に「なんとなく」でも広がっているとは、どうも思えないのだ。
前述したスーパー戦隊は約50年、現行の仮面ライダーでも平成~令和にかけて20年以上と、途切れなくTVシリーズを継続させた結果、お馴染みのヒーローとなった歴史がある。
対して、ウルトラマンシリーズは55年以上の歴史を持つと言っても、実質その約半分ほどの期間は新作TVシリーズはお休みしていたわけで、そもそも最初から埋めがたい差があるのは紛れもない事実であろう。

80終了からティガ登場までの約16年間が最も長い休止期間であった

それに加えて、NGシリーズのお膝元であるテレビ東京が、系列局の全国ネット数が極端に少ない局であることも影響しているように思える。
「いまどきTVで時間通りに番組を見るほうが少数派では?」なんて言われそうだが、先月行われたWBCの視聴率などは、なんと最高40%前後の数字をたたき出している。野球の人気低迷が囁かれている今を持っても尚だ。
これは、TVがいまだにエンタメ界を担う柱の一本であるということの証明ではないだろうか。

テレビ東京は空白の80年代からウルトラ系番組を絶えず放送してくれていた大恩人ではある

さらにもう一点挙げるとすれば、NGシリーズの初期は番組放送枠が非常に不安定であった。
思うに、これに尽きる気がする。
もともとウルトラマンギンガは、映画ウルトラマンサーガ(2012)の宣伝番組であったウルトラマン列伝(2011)からの流れを汲む、新ウルトラマン列伝という番組内で始まった、言わば箱番組/番組内番組であった。
間違いなく、ウルトラマン冬の時代を支えた功労者であるウルトラマン列伝だが、局側の事情やクール毎の番組改変に合わせ、放送曜日や放送時間がよく変動していたのだ。

当時の最新ヒーローであったウルトラマンゼロをナビゲーターに据え、足掛け5年近く続いた番組

参考までに、ギンガの頃※1は水曜17時半~の放送であったものが、翌年の続編ウルトラマンギンガS(2014)では、火曜18時~と曜日も時間も移動してしまっている。
現在のように土曜の朝9時~放送という枠が固定されたのは、ウルトラマンX(2015)までの箱番組形式から脱却し、一枚看板の新シリーズとして2クール全25話構成となったウルトラマンオーブ(2016)※2からだ。

レギュラーヴィランの設定等々、ある意味NGシリーズの礎を築いた作品でもある

これら諸要素と、時々で休止期間が存在するウルトラマンシリーズの歴史そのものが合わさり、やれ国民的ヒーローだなんだと誉めそやされながらも、シリーズの空白期に生まれ育つと、まったく馴染みのないヒーローにもなり得るというのが、ウルトラマンシリーズの弱点といえば弱点であろう。
現在の40代前後の世代が幼少期を過ごした80年代に、ウルトラマン80(1980)を最後にTVシリーズの新作が途絶えてしまったことは、ファンの層の厚さという観点から見ると非常に痛い。

投票総数、355,563票

上の画像は、昨年NHKで放送された全ウルトラマン大投票の最終結果だが、40代の割合ががくんと落ちているのがお分かり頂けるだろう。
「空白期と言っても再放送やらレンタルビデオやら、見る手段なんていくらでもあったはず」
などと漠然と考えていた私に、リアルタイム世代と空白の世代ではこれほど如実に数の差があるのだと痛感させられた結果であった。

もちろん、今後NGシリーズが20年、30年と続いていけば、土曜朝=ドアサのウルトラマンとしてイメージが定着するかもしれないが、目まぐるしく価値観や常識が変化していく現代である。
3年先の未来ですら、私のような凡人には正直想像もつかない。

新世代のネオスタンダードヒーロー?

さて、長すぎる前置きはここまでにして、本題に入ろう。
2023年の新ヒーロー、ウルトラマンブレーザーである。
公開された特報を見た私の第一印象は・・・
「ここにきてNGシリーズは大きな挑戦をしようとしているのではないか?」
というものだった。
何のための挑戦か?言わずもがな、次の10年へ向けてである。

ウルトラマンブレーザー

ウルトラマンシリーズと前述のニチアサのヒーローたちとの決定的な違いは何かと問われれば、私は「デザイン」だと答えるだろう。
より正確に言うと、決定デザインにたどり着くまでの作業の過程が違う。

かつての特撮ヒーローものといえば、まず番組美術スタッフや漫画家が用意したヒーローやメカニックのデザインを、番組をスポンサードする玩具会社がそのデザインに基づき図面を引いて商品化していた。
だが、番組制作費の高騰やおもちゃ市場の成長と拡大に伴って、両者の関係性は逆転していくことになる。

売り出したいヒーローやメカのデザインを、スポンサー側が先んじて用意し、それを制作会社が着ぐるみやプロップとして具体化させていく・・・という方式になっていったのだ。
作品数が増えることによって、子供が好む色やデザインといった統計やノウハウが蓄積され、そこへ向け玩具会社はデザイン開発を行っていく。
これによってリスク回避はもちろん、作品中に登場するヒーローやメカと、実際の玩具との外見上の差異が格段に減っていくことにも繋がった。
子供たちは精巧な玩具を手にでき、制作会社もマーチャンダイズの収益によって莫大な制作費を賄えるという、win-winのシステムの完成である。

一度当たるとリターンも大きいのがキャラクタービジネスの強みだ。
そんな大勝負に打って出るなら、成功の確率を上げる方法論はシステマチックと言われようがないよりはあったほうが良い。
子供向け番組に対する「30分のコマーシャルだ」等の揶揄は、ここに起因している。

この方法論にいち早く適応した東映は、敵キャラ以外(場合によっては敵キャラまでも)のデザインワークをすべてスポンサーに委ねることで、次々とヒット作品を量産していく。
一人の才能に頼らずに、マスプロダクツ的発想で複数のチームで作業を細分化・分担していったわけだ。
こうしたビジネスモデルの確立によって、東映/東映アニメーションが今も尚、国内におけるキャラクターものの第一人者だという事実は疑う余地がないだろう。

パワード時におけるバンダイの提案。絵は東映作品でお馴染みの村上克司氏

それに反して、ウルトラマンは・・・
いやこの場合、円谷プロは・・・特にウルトラマンのデザインに関しては、今もってスポンサーに全権を渡そうとしていない。
(ここで言うスポンサーとは、具体的には現在のライダー・戦隊のほぼすべてのデザインワークを担当する、バンダイ系列のデザイン会社PLEXのことを指す)
勿論、デザイン関係をすべて円谷サイドで賄っているわけではない。
ウルトラマン80の頃から、変身アイテムや防衛チームのメカはバンダイの前身であるポピーに任せているし、ウルトラマン自身のデザインに関しても、バンダイ/PLEX側からの意見を取り入れている例も存在する。

ウルトラマンネクサスのアームドネクサスはバンダイ側からの要望

しかし、あくまでフィニッシュまでの決定権は円谷プロ側にあり、例えば平成ウルトラマンのティガ~メビウスまでは、丸山浩氏が担当。
ゼロ以降のNGシリーズは後藤正行氏と、どちらも円谷の社員デザイナーによって手掛けられている。

私個人の見解だが、このあたりの理由は、初代ウルトラマン(1966)が持っていたもうひとつの魅力・・・
その制作秘話が過去に何度かドラマ化されるほど個性豊かだった、当時の制作に携わった若き才能たちの存在に起因しているのではないか。
その中でも、特に脚本の金城哲夫氏や美術の成田亨氏といったスター作家達の悲喜交々が、円谷プロに今も尚、言わば作家至上主義というようなものを保持しよう/させようとする、見えない力として働いているのではないか・・・と思うのだが、どうだろうか。

具体的には、作品の方向性をコントロールする、アニメで言うところの総監督のポジションが、東映ではプロデューサーであるのとは対照的に、円谷プロ、特にNGシリーズではメイン監督に相当の権限があるらしいという事実も、これを裏打ちしている気がするのだが。

ブレーザーのメイン監督は、今回4度目のメインとなる田口清隆監督(写真左)

さて、そんなブレーザーのデザインだが、一見して目を引くのが、頭部からボディにかけての左右非対称っぷりだろう。
一種の怖さや歪さをも感じさせる造形ではあるが、やはり銀色のベースカラーに輝く瞳と引き締まった口という記号を頂くと、ウルトラマン以外の何者にも見えないのだから、初代マンのデザインは偉大である。
頭部向かって左のクリアーパーツ等は、同じく後藤氏が手掛けたウルトラマンであるサーガやギンガを髣髴とさせる。

ウルトラマンサーガはゼロ、ダイナ、コスモスが合体して生まれた奇跡のウルトラマン

そしてボディのデザインは、初代ウルトラマンのボディラインを生物的に再解釈した丸山氏デザインのザ・ネクストを連想してしまう。

ザ・ネクスト(アンファンス=幼年態)

このデザインをNGシリーズ10周年の年にぶつけてきたという時点で、円谷プロの限りなきチャレンジ魂を感じざるを得ないではないか!

なぜかと言えば、ファンダム界隈の大方の予想ではウルトラマントリガー(2021)、ウルトラマンデッカー(2022)と続いてきたのだから、2023年の新ウルトラマンは、TDG25周年イヤーのラストを飾るウルトラマンガイア(1998)をフィーチャーした、ニュージェネレーションガイア的な作品になるだろうと、もはや決定事項のように囁かれていたからである。

しかし、ここに来てのこの方向転換。内容は本放送を持つとして、デザイン的な観点からはガイアのガの字も感じられない。これは予想外だ。
これが、この記事に特異点ネオスタンダードヒーローといった単語を使いたくなった理由でもある。

PVでも使われた特異点という言葉はひとまず置いておくとして、ネオスタンダードヒーローとは、ウルトラマンネクサス(2004)の大元の企画である、ウルトラNプロジェクトの企画書で謳われた標語である。
読んで字のごとく、21世紀の新しいヒーロー像を確立すべく企画されたネクサスであったが、残念ながらそこで試みられた様々なアイディアは、当時広く受け入れられたとは言えず、志半ばで放送短縮という結果に終わった。
ウルトラマンブレーザーの特報からは、そんな先人たちの挑戦に似た印象を受けるのだ。
ブレーザーが次の10年へ向けての、新たな道を指し示す光になってほしいと願わずにはいられない。

無論、本作がこれまでのNGシリーズと毛色が違うと感じさせるのは、なにもデザインだけではない。
今回の変身アイテムであるブレーザーブレスの仕様にもまた、驚いた。
詳しくは下の動画をご覧いただきたい。

2023年7月8日発売

まるで鉄鉱石を削り出したかのような荒々しい見た目に、血管のように走る赤と青のラインと、太陰大極図を思わせるクリスタルパーツ・・・
そこにバーサライタの輝きが不思議とマッチして、神々しい印象を受ける。
所謂コレクションアイテムであるブレーザーストーンも、鉱物片のような装飾が施され、表面のウルトラヒーローの横顔もどこか抽象化されていて、こちらも神秘性を担保している。
これまで作品を重ねるごとに、おもちゃおもちゃしていったNGシリーズの変身アイテム(おもちゃなんだから当たり前だが)とは、まったく別種のデザインラインを今回ぶつけてきたわけだ。

そしてさらに驚いたことに、どうも今回は変身時の天の声が廃止されたようなのである。
天の声というのは、所謂変身サウンドのことで、近年で言えばトリガーのガッツスパークレンスに於ける「ブートアップ!ゼペリオン!」「ウルトラマントリガー!マルチタイプ!」と言ったシステム音声の事を指す。※3
ウルトラマンに神秘性を求める向きには、仮面ライダー的だと不評なこの天の声であるが、やはり子供たちのなりきり遊びへの没入感を高める効果は抜群のようで、現代ヒーローの変身アイテムには必須の仕様となって久しい。

そう、言わば変身アイテムの最低限の売り上げを保障する要素のひとつとも言える、その天の声が、少なくともブレーザーへの変身遊びに関してはオミットされているようなのだ。
勿論、音声的にはブレーザーストーンを介しての歴代レジェンドヒーローへの変身遊びや、役者さん本人のボイスも多数収録と、音声数自体は豊富であり、これまでの変身アイテムと比べてパワーダウンした感はない。
これはなかなか上手い手で、商業的な要請と現場的な要請を折衷した良い着地点だと思う。

そして、上の動画を見る限り、ブレーザーの変身シーンはこれまでのNGシリーズのような、平均30秒前後というたっぷりと時間を使った派手なものにはならないのではないだろうか。
無論、私とていい年をした大人なので、メインの視聴層である子供たちが変身バンクこそを楽しみに見ていることも承知しているし、スポンサーとしても自社の商品が少しでも長く画面に映るのが理想なのもわかる。

だがしかし、一ファンとしての率直な意見を言わせてもらうと・・・
30秒前後の変身バンクは、それまでのストーリーの雰囲気や勢いを損ねる副作用もあるように思うし、劇中のBGMと変身アイテムのサウンドが被ってしまい、やや不協和音的になってしまっているエピソードもあるなぁ、といったモヤモヤしたものを、これまでのNGシリーズに抱いていたのも事実なのだ。
そもそも、ウルトラマンに変身するほどの事態とは、一刻を争う緊急事態であるはずではないか。
平均30秒と書いたが、NGシリーズには長いものでは50秒近い変身バンクもあるのだ。

勿論、今の時代はスイッチを押すとピカリと光って変身!だけでは物足りないのだということもわかる。
誤解しないでほしいのは、なにもそこに戻せと言っているわけではない。
しかし一方で・・・たとえば同じように変身プロセスが複雑化している仮面ライダーシリーズも、そこまで大仰な変身シーンは行ってはいないのだ。
これは、確固たる成績を毎年出している仮面ライダーに与えられた特権と言う名の自由度なのかもしれないが、要所要所でそのアイテムが魅力的に映れば、露出時間などはさほど関係ないという一例ではないだろうか。

まあ、同じウルトラマンでも、ウルトラマンマックス(2005)ウルトラマンメビウス(2006)ぐらいの15秒前後の変身バンクならば、別段長さは気にならないので、主観の問題と言われればそれはそうなのだが・・・

まったくの余談になるが、コレクションアイテムの大型化や種類の増加に伴い、専用の収納アイテムも商品化されるようになって久しいが、主人公が防衛チームに所属している設定だと、とてもチームの装備品には見えないそれらが非常に浮いてしまうという新たな問題も生じていたりする。

非常に目立つメダルケースを「地球人には見えない素材で出来ている」と苦しめの説明をしていたウルトラマンZ

さらに言うと、特撮パートは勿論、ドラマパートも楽しみたい私としては、OPEDとミニコーナー+次回予告を引いた21分弱という限られた本編尺を、30秒前後も消費してしまう変身バンクにはもどかしいものがあるのだ。
さらにタイプチェンジなどして、変身バンク2本分がフルで流れれば、それだけで1分近く消費する計算になるわけで。
昭和のウルトラマンを撮った奇才・実相寺昭雄監督や、平成ウルトラマンで活躍した八木毅監督も「1分あればエピソードをひとつ足せる」と揃って仰っていた。
事実、昭和ウルトラマンは全尺が26分近くもあり、加えてウルトラマンレオ(1974)まではEDが存在していなかったことから、OPと予告を除いた本編尺はなんと約24分という長さで、現行のウルトラマンより約3分以上も長い。
あっ、ウルトラマンの地球上での活動時間と同じだ(笑)

そういう目線で昭和ウルトラマンを見返すと、この3分が非常に利いているのがわかる。
役者さんたちのちょっとした芝居の間や、無言の表情カット、怪獣や宇宙人の出自や設定に関する描き込み、詩的な風景カット等々・・・
現在ならば間違いなく脚本段階でカットされるであろう、細々とした積み重ねが活きているのである。※4
これに倣って、例えばTDG三部作では、本編終盤にED曲がフェードインしてきて、ED中もドラマを継続させるといった演出や、ウルトラマンマックスではOPを短くしEDを廃止することで、+1分半という時間を獲得していた。

まあ、これらを現行のNGシリーズに適応するのは実際問題難しいのだろう。
タイアップ案件も多いED曲を廃止するなど、ビジネスチャンスを蹴ることにもなるわけだし、事実関係はわからないが、今の時代「ED中に歌を邪魔する台詞や効果音を被せてくれるな」といったお達しが先方からあるのかもしれない。

話を戻すと、希望的観測ではあるが、今回のブレーザーがシンプルな変身に回帰してくれるのならこんなに嬉しいことはない。
子供たちには少々物足りないかもしれないが、そこはブレーザーブレスのプレイバリューに免じてなんとか飲んでもらう方向で・・・(笑)
欲を言えばミニコーナーもやめてもらって、その時間を本編にまわして頂ければ嬉しい。
この点は、ウルトラマンタイガ(2019)やウルトラマントリガーでは実際廃止していたわけで、出来ない話ではないようだ。

何はともあれロボット怪獣

最早これを言うのは野暮という気もするが、やはり恐竜型のロボット怪獣というものは、一部の人間の脳に強く働きかける何かがあるように思う。
ウルトラマンZに於けるストレイジの特空機に、恐竜型ロボット怪獣を最後まで切望していた私としては、この設定だけで万々歳だ!

23式特殊戦術機甲獣アースガロン

アースときてロンと言われれば、ファンとしてはアーストロンを連想してしまうが、はたして両者に関係はあるのだろうか。
節々の間接を覆うカバー状の部位が、なんだか生体メカ的なサムシングを感じさせるデザインである。
まさか、アーストロンの骨をベースに・・・いや、やめておこう。

角を外せばほぼゴ○ラな、王道恐竜型怪獣アーストロン

その他にも、蕨野友也氏演じる主人公ヒルマ・ゲントは、特殊怪獣対応分遣隊「SKaRD」※5の隊長にして既婚者であり一児の父+ウルトラマンであるという、子供向けヒーロー番組としては尖った設定等、第一報の時点で早くも興味が尽きない。
この試み自体は大賛成なのだが、戦闘中に隊長が不在になるのはさすがにまずいと思うので、そのあたりにどう理屈をつけるのか今から楽しみである。

ウルトラマンブレーザーは2023年7月8日(土)朝9時より放送スタート!

さらにアジア圏を中心とした多言語による世界同時展開なども発表され、今年はウルトラマンの更なる飛躍の年になるに違いない!
これからのウルトラマンシリーズのますますの発展を祈りつつ、今回はこのあたりで。

ここまでお読みくださって、ありがとうございました。

脚注

※1
ウルトラマンギンガの企画は、かなりギリギリの進行だったようで、1話~6話を2013年の7月~8月に集中放送。間を空けて11月~12月にかけて7話から11話が放送された。間の空白期には劇場スペシャルなどがあったが、やはり連続放送が途切れるということは、子供たちの興味をも途切れさせてしまうリスクもあるように思える。

※2
この昇格は、おそらくウルトラマン生誕50周年というアニバーサリーイヤーであったことも関係しているのではないだろうか。
別の見方をすれば、ブレーザーは2クール体制になってから数えれば(前作のウルトラマンXは全22話)まだ8作目ということになる。

※3
この音声について、ウルトラマンオーブの変身アイテムオーブリングの説明書に於いて「天の声」と表現されていたことにちなむ通称である。

※4
逆に尺をもてあましているなぁというエピソードもある。何の何だとは言わないが、車の走行シーンが延々1分ほど続く回など・・・(笑)

※5
正式名称は「Special Kaiju Reaction Detachment」
Kaijuが世界共通語になっているあたりニヤリとさせられる。

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