平成ウルトラマンにおける防衛チームの変遷~マーチャンダイズと製作予算の狭間で~パート2
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※マーチャンダイズ(以下MD)とは、「商品計画・商品化計画」を意味します。
③英雄たちと呼ばれるその日
さて、好評の声はもちろん、さまざまな要因が重なり全65話5クールという長編になったウルトラマンコスモスが終了し、ウルトラマンシリーズはTV放送において2年弱のインターバル期間に入ることになる。 かつては「円谷はウルトラマンを作っていないときの方が黒字だ」とまで言われるほど、怪獣ソフビのセールス等で安定した人気を保っていたウルトラマンシリーズだが、この時ウルトラマンシリーズには強力なライバルが出現していた。 遡ること2000年からスタートした平成仮面ライダーシリーズである。
この強力なライバルの登場により、かつての安定した地位が脅かされることになっていく。
バンダイの子会社であり、商品開発を担当するPLEXの社員によるウルトラマンネクサス当時のインタビューでも、はっきりとウルトラマンコスモスの頃からウルトラマン関係の商材の伸び悩みが語られているほどだ。 その原因はさまざま考えられるだろうが、私が思う理由のひとつを挙げるとすれば、丁度この頃から子供たちの憧れの対象が、今までよりもヒーローそのものに集約され、ヒーローとの一体感を強く求められる時代になりつつあった結果ではないだろうか。
言わずもがなだが、ウルトラマンという題材である以上、ドラマ的な盛り上がりの頂点はウルトラマンと怪獣の戦闘パートである。 当然主人公は巨大化して戦うので、そこからは一種ドラマパートとは切り離された特撮ステージショーに場面が飛躍することになる。
この点は、スーパー戦隊シリーズの巨大ロボ戦も同じだ。 しかし、スーパー戦隊の巨大戦はロボットアニメを踏襲し、コクピットでロボットを動かす等身大ヒーローの描写が存在している。 この点がポイントだと思うのだ。
現在展開中のニュージェネレーションウルトラマンシリーズ(以下NGシリーズ)のウルトラマンには、どの作品にもインナースペースと呼ばれる内部空間の描写がある。
これは、ウルトラマンの内部空間で主人公がアイテムを駆使して戦うことによって、見ている子供たちのヒーローとの一体感をより高めようとする工夫なのである。 ようは、ロボットアニメや戦隊におけるコクピット描写と役割は同じなのだ。その意味では現在のNGシリーズのウルトラマンは巨大ロボット的な演出がなされていると言ってもいいだろう。
NGシリーズから生まれたこの演出は
「商品はアピールしたいが、ウルトラマンが巨大なアイテムをガチャガチャといじるのは避けたい・・・」
という、スポンサーの要望と現場の意思の折衷案的アプローチではないだろうか。
さらに付け加えるなら、もう一点。
NGシリーズ以前のウルトラマンシリーズには、一度変身すると、どこか人間とは別種の存在になってしまうような感覚が多少なりともあったのも、影響しているかもしれない。
もちろん作品によって例外もあるが、出自を明確にしない・必要以上に喋らせない等々、ウルトラマンの神秘性を円谷プロが意識的に高めていた平成前期のウルトラマンには、その傾向が強かったように思う。
そして、仮面ライダーのように等身大であり、変身後も変身ベルトを装着しているといった、わかりやすい外見上の共通点が変身前と後に存在しないのも、子供の没入感を削ぎ、別物感を与える要因だったのかもしれない。 もっともこの点については、変身アイテムを変身後も腕に装着しているウルトラマンマックスやメビウスで解決が図られている。
少し話題はズレるが、すでにジャンルが確立して安定し、製作側にもファン側にも慣れが生じてしまっているジャンルに共通する特徴がある。
それは、改めて考えてみると不可解だったり、ドラマとして飛躍した描写であっても「これはこういう決まりごとだから」と思考停止してしまう傾向だ。※1 ウルトラマンに慣れ親しんだ人間からすると、何の違和感もなくそれまでのドラマの延長線上として怪獣との戦いを見られるのだが、馴染みのない人や外国人からすると、完全に人間ドラマとは別の何かが始まったように映るという問題があったのだ。
これでは、作品世界に没入しようにも番組のフォーマットがそれを阻害してしまうことになる。
かつてオーストラリアで製作されたウルトラマンG(1990)には、変身シーンにおいて主人公ジャックとウルトラマンの顔をオーバーラップさせ、肉体が徐々に大きくなるカットがあった。
これは一説によると、ハヤタがベータカプセルを掲げてウルトラマンに変身する一連のシークエンスが、ハヤタ=ウルトラマンではなく、まるでハヤタがウルトラマンを召喚したかのように見えるという、西洋人からの反応を考慮してのものだったという逸話がある。
※1
平成ライダーのとある作品の1話で、冷静に見れば用途不明の奇妙な塊にしか見えないものを「ベルトのバックルみたいだ」と主人公が言ってのけてしまうシーンなどがパッと思いつくところだ。
その点、等身大の仮面ライダーが様々なアイテムを駆使して変身し戦う姿は、それまでの東映特撮のお約束であった変身バンク映像を廃するなどの刷新も相まって、変身前のドラマの流れを断ち切らずシームレスに戦闘シーンに移行することを可能にしていた。 その結果、玩具の変身ベルトを身につける子供たちのヒーローへの羨望と没入感をより高める効果を生み、イケメンヒーロー等の売りもあって、本来はターゲットから外れるアダルト層をも巻き込んだ一大ブームを巻き起こすことになるのである。
運の悪いことに、その間のウルトラマンシリーズが実質の休止期間中であったのもまずかった。 2003年に劇場版ウルトラマンコスモスの3作目があったとはいえ、2年弱という休止期間は大きい。
というのも、子供向けMD業界内には「3年周期」と呼ばれる法則があり、子供層の入れ替わり期間の目安とされているからだ。 つまり子供たちにとって、ウルトラマンに触れずに世代交代してしまうには2年弱という時間は、残酷な話だが十分なインターバルであったのだ。 結果として、この当時のウルトラマンは子供たちにとって少々とっつきにくい印象を持たれていたのでないだろうか。
かく言う私もまた、より一般のドラマに近い平成仮面ライダーの雰囲気に、特撮作品を見ること自体に気恥ずかしさを感じていた年頃だったこともあって、当時は同時期のウルトラマンより熱心に視聴していたように思う。
閑話休題。
そして、そんなウルトラマン逆風の時代に現れた新たな光の巨人は、ハード路線を志した意欲作ウルトラマンネクサス(2004)だ。 番組カラーに合わせるように、暗めのユニフォームに身を包んだ実働部隊ナイトレイダーもまた、異質な防衛チームであった。
航空機 クロムチェスターα・β・γ・δ 基地 フォートレスフリーダム その他 ストーンフリューゲル
実はウルトラマンネクサスの企画開始時点で、後に経営に支障を来たす円谷プロの懐事情もあって、今までのような規模の作品作りは出来ないという製作スタッフ間での共通認識があったという。 これまでの作品の縮小再生産になるぐらいならば、思い切り振り切った作品にしようという心意気は、こうした現実的な事情もあったのである。
そこでネクサスでは、番組予算を逼迫させるであろう諸要素を可能な限り排除していった。 具体的には、「毎回の怪獣の造形物」「ミニチュア破壊を伴う市街地戦」、そして三つ目として防衛チームにもメスが入れられた。 先の2点は別の機会に言及するとして、ネクサスにおける防衛チームの規模の縮小を見てみよう。
まず、メカニックは航空機と基地のみにしぼられた。
隠密部隊と設定されたナイトレイダーは、街中を派手な改造車でパトロールなどはしない実戦第一のチームとされたのだ。
そして潜水艦やドリルメカだが、これまでの経験上、航空機ほどのセールスが見込めないことや、それらを特撮を駆使して活躍させるにはそれなりの費用がかかるという事情から、姿を消すことになった。
しかし、タダでは転ばないのがバンダイである。そういった削られた要素の代替案として、彼らはウルトラなりきり玩具という新しいジャンルを切り開こうとしていた。 それまで、主に徒手空拳と光線技を駆使して戦ってきたウルトラマンにおいて、変身アイテム以外の所謂なりきり玩具の成立は難しいものであったが「武器を持たせない」という一線を守りつつ、振り子センサーとスイッチで光線遊びが楽しめるアームドネクサスやアローアームドネクサスなど、光線技をなりきり玩具に落とし込む試行錯誤が行われた。 余談だが、この時採用されなかった数々のネクサス用の商品アイディアは後のNGシリーズで実現しているものも多い。
加えて、隊員側の商品展開も決して負けてはいなかった。 ナイトレイダーが装備するディバイトランチャーは、組み換え遊びと多様な発光・音声ギミックを搭載した大型火器で、完成度の高いなりきり玩具であった。
こういったMDが成立したのは、2年弱の休止期間があったことによって開発期間もまた長く設けられたことが功を奏した結果だ。
組み替え遊びという点では、クロムチェスターもまた長い開発期間を設けて投入された商品であり、ブロック玩具的な自由度は今でも目を見張るものがあるのだが※2、一方で航空機的なラインからは外れた下のγ機のデザインなどには現場から反発の声もあったという。
結果的にさまざまな事情で規模が縮小したとはいえ、ひとつひとつの商品の質を上げることによってMDにおける防衛チームの存在感は維持したと言えるのではないだろうか。
さて、劇中の活躍を見ると歴代防衛チームの中でもかなり強い部類に入るナイトレイダーだが、ご承知の通り深夜31時半のドラマとまで言われたネクサスのムードも相まって、広く一般に受け入れられたとは言い難く、結果としてウルトラマンシリーズはひとつの分岐点に立たされることになる。
※2
航空機モードだけではなく戦車モードのメガキャノンチェスターや劇中で未使用に終わったドリルメカモードのディグチェスター等プレイバリューは高い。ネクサス側の装備であるストーンフリューゲルとも合体可能だ。ディグチェスターに関しては本作の雰囲気とのミスマッチもあるが、特撮シーンの手間など予算や現場的な事情もあって実現出来なかったのではないだろうか。
そんなネクサスの商業的不振を受けて急遽企画されたのが、ウルトラマンマックス(2005)だ。 「もう失敗はできない」という危機感から製作予算も増額され、所謂「誰もが知ってるウルトラマン」をもう一度という意気込みを感じる作品であった。 最強最速をテーマに掲げつつ、ファンサービスとして円谷プロ作品御馴染みの俳優陣の出演や、昭和の人気怪獣の投入等々・・・ 翌年に控えたウルトラマンシリーズ40周年のアニバーサリーを見据えつつ、本作独自のバラエティに富んだエピソードを見せてくれたのも印象的だった。
こうした世界観は刷新しつつも、過去の人気怪獣を惜しみなく投入する姿勢などは、現在のNGシリーズにも大きく影響を与えている印象だ。 登場する防衛チームはチームDASH。
航空機 ダッシュバード1号、2号、ダッシュバードβ 大型メカ ダッシュマザー 潜水艦/ドリルメカ ダッシュバード3号 特捜車 ダッシュアルファ バイク ダッシュドゥカ(未商品化) 基地 ベース・タイタン
ここにきて大型メカの復活が嬉しい。
開発期間の短さも相まって、ダッシュバードのギミック自体はクロムチェスターほど凝ったものではないのだが、主翼を刃として怪獣に直接攻撃するアグレッシブな防衛チーム像は、次作に少なからず影響を与えているのではないだろうか。
アルファロメオとドゥカティという地上戦力も、ルックからしてリッチな印象を与えてくれる。
本作の陽性な雰囲気の印象に貢献しているメカニックの筆頭であるダッシュドゥカの未商品化が悔やまれるところだ。
加えてダッシュバードβといったリデコ商品や、ダッシュバード3号の潜水艦とドリルメカを折衷したギミックなど、これまでの防衛チームで培われてきた商品展開のノウハウも取り入れられている。 特にダッシュバード3号のドリルモードは、出番のないまま終わるかと思いきや、最終回直前に印象的な活躍を見せてくれたのは嬉しいサプライズであった。
さて、この記事の最終章ともなるウルトラマンシリーズ40周年記念作品ウルトラマンメビウス(2006)である。 前作マックスで取りこぼした昭和第2期ウルトラマンシリーズの要素を積極的に取り入れた作風で、人気怪獣から変り種怪獣の登場、そしてなによりウルトラ兄弟の復活と見所満載であった。 そして、防衛チームというものをより主体的に描くために様々な趣向が凝らされた本作は、ぶつかり合いながらも成長し団結するCREW GUYS(クルーガイズ)の青春物語でもある。
航空機 ガンクルセイダー(未商品化)、ガンスピーダー、ガンフェニックス(ガンウインガー+ガンローダー)、ガンフェニックストライカー(前2機+ガンブースター)、シーウインガー 潜水艦 ブルーウェイル(未商品化) 基地/大型メカ フェニックスネスト その他 マケット怪獣
現在(2022)のところ、1年間4クールの放送であった最後のウルトラマンシリーズである。
シリーズ40周年ということもあり、放送期間中の本作の盛り上がりは尋常ではなかった。 特に平成の世において、ほとんど過去のものとなっていたウルトラ兄弟という設定を復活させたのは、現在のウルトラマンシリーズの設定の基盤を作り上げたと言っても過言ではないだろう。 さまざまなイベントを意識的にシリーズ構成に取り入れようとする姿勢は、マックスから続く「もう失敗できない」という製作陣の強い意思を感じさせ、高い熱量のドラマが繰り広げられた。 特にウルトラ兄弟が客演した放送日は、誇張抜きに毎回ネットを中心にお祭り騒ぎの様相であったように記憶している。 防衛チームの描写についてもチャレンジングな展開が多く、第1話で防衛チームGUYSが全滅してしまうところから物語が始まるのには驚かされた。 そして続く2話以降で、志を同じくする新メンバーを集め、まさに不死鳥のように復活していくチームの姿が生き生きと描かれる。 この一種スーパー戦隊風にも思える展開は、本作は防衛チームの成長物語であるという力強い宣言のようであった。
肝心のGUYSの装備自体はというと、航空機と基地のみであり、一見ナイトレイダーシフトに戻ってしまっている。 しかしプラスアルファがないわけはなく、基地であるフェニックスネストは変形機能を有し、基地であり大型母艦メカでもある。
これは、潜水艦とドリルの機能を折衷するといった、これまでのアイディアが規模を拡大して採用された形だろう。 現場的にも司令室の飾り変えによってブリッジセットとして撮影できるので、一石二鳥のコンセプトである。 加えて、ガンスピーダーというコスモスのコアモジュールシステムに似た小型メカが設定されているが、これはどちらかというと車をモチーフにしたメカであり、フェニックスネストとのトミカ駐車場的な連動遊びを想定したものだった。単機で潜水も出来るすぐれものである。
このメビウスで培った財産は大きく、特にこのガンスピーダーのセットはメビウス終了後も大活躍で、6年後のウルトラマンサーガ(2012)まで使用されることになる。
隊員の装備はメモリーディスプレイやGUYSタフブック等の新しいジャンルが目を引くものの、完全にMD用にデザインされたであろうメテオールショットが商品化されなかったのには驚かされた。 1話をまるまる使って初登場エピソードが作られていただけに、謎である。
メテオール・・・ そう、GUYSと言えば、何はともあれ目玉はメテオールである。
それまでの防衛チームが抱える共通のジレンマとして、「怪獣を倒しすぎてはいけない」というものがあった。 そう、決して倒せないのではなく、倒し「すぎては」いけないのだ。 理由は単純で、防衛チームが万能で単独でどんな事件でも解決できてしまえば、ウルトラマンが必要ないからである。 だからこそ防衛チームは多少の例外を除いて、最終的にはウルトラマンに花を持たせ、基本的にアシストに徹するのが第一義として描写されてきた。 しかし、だからと言ってウルトラマンに頼りきりというわけではなく、先人たちはこのジレンマをなんとか解決しようと様々な手を尽くしてきた歴史がある。
例を挙げれば初代ウルトラマン最終回等、枚挙に暇がない。 そして製作陣はこのウルトラマンメビウスにおいて、そのジレンマにひとつの回答を示して見せた。 それがメテオールなのだ。
メテオールとは、かつて地球を侵略した宇宙人の残した円盤の残骸や兵器等を地球側が回収し、解析して作られた超絶テクノロジーという設定で、起動させれば航空機では通常不可能な挙動が可能になったり、怪獣をも吹き飛ばす竜巻を発生させたりなど、用途は多岐に渡る。
この、ウルトラQ~ウルトラマン80の延長線上というメビウスの世界観を見事に体現したメテオールという設定は、援護に止まらず、より防衛チームを能動的に戦いに関わらせることを可能にしたと言えよう。 さらに解析再現出来る対象はウルトラマン側の能力も例外ではなく、中でも目を引くのがマケット怪獣の存在だ。
過去に確認された怪獣をデータ上で再現し実体化させた、言わば防衛チームが使役する怪獣という設定は、ネクサスの頃から提案はされつつも、戦隊ロボとの競合等から見送られてきた防衛チームの装備する巨大ロボット※3という設定を、昭和ウルトラマンシリーズ風の味付けを施すことで実現した好例ではないだろうか。
この他、劇中で登場する超兵器の類はすべてメテオールであると設定され、最終回に登場するファイナルメテオールの機能や、そこへ至るメビウスのパワーアップ描写は、ある意味で防衛チームの到達点を見せてしまった感もある。
※3
防衛チームが装備する巨大ロボットという設定は、後にウルトラマンZ(2020)の特空機として実現した。1号機であるセブンガーがゆるキャラ的人気を博したのは記憶に新しい。
④挑戦しない成功なんてないさ、だから・・・
ウルトラマンティガから10年、7作品7様の姿を見せてくれた防衛チームは、スポンサー側の意向や製作予算等さまざまな事情に左右されつつも、各作品毎に新しいアイディアを投入し我々を楽しませてくれた。 ご承知の方も多かろうが、メビウス終了後の2007年に円谷プロは経営に支障を来し、新規のTVシリーズの製作が困難な状況に陥ってしまう。 そしてそこから約7年弱、映画やOV作品は製作されつつもウルトラマンシリーズはTVから姿を消すことになる。 7年の空白期間が子供向け作品にとっては致命的な時間であることは、前述した「3年周期」の法則から見てもあきらかであろう。 ウルトラマン冬の時代の到来であった。
だが、そんな困難な状況でもウルトラの光を絶やしてはいけないという円谷プロをはじめとする人々の努力や、映画大怪獣バトル・ウルトラ銀河伝説(2009)でデビューし、今や不動の人気者になったウルトラマンゼロをナビゲーターに据えたウルトラマン列伝等々の番組枠の継続的な確保と、もちろんTVシリーズの新作を渇望するファンの声も重なって、約7年の沈黙を破り2013年、番組内番組という形式ではあるが、ついにウルトラマンがTVに帰ってきた。
後にニュージェネレーションウルトラマンシリーズと冠される、このウルトラマンギンガからはじまるシリーズは、今年2022年、ついにウルトラマンの連続TV放送記録としては最長の10年目を迎えようとしている。 逆境を乗り越え、見事にウルトラマンは子供たちのお馴染みのヒーローとして再び定着したのである。
しかし、一大人世代のファンの嘘偽りのない本音を言えば、一抹の寂しさがあるのも事実だ。 まず、2クール放送であるという点は置いておくとしても、製作予算の厳しさは如実に見て取れる。わかりやすいところで言えば、2クール全25話中での新怪獣の総数が10体にも満たないのは寂しい。 加えて、装備品やセットの制作費、維持費などの観点から防衛チームもまた露骨に影響を受けている印象だ。 こうした、NGシリーズの予算規模ではかつてのような大組織を描くのは困難という現実的な判断と、ウルトラマンギンガS(2014)やウルトラマンX(2015)での、防衛チーム復活を企図した幾度かのトライでもMDの結果が芳しくなかった点も問題視され、防衛チームはついにウルトラマンシリーズから姿を消すことになってしまった。 ウルトラマンXから続投して、ウルトラマンオーブ(2016)でもメイン監督を任された田口清隆氏のインタビューによると、オーブにおいては「防衛チームを置かない」という点が最初から決定事項だったとのことである。
これらの結果に私は、もはや防衛チームの隊員たちやメカニックは子供たちの憧れの対象ではなくなり、MDとして機能しないのではないかと一時は悲観したものだ。
・・・そう、これに関しては一時なのである。
現在のウルトラマンシリーズにおける防衛チームへの風向きは決して悪くない。 それは、ウルトラマンZにおけるストレイジの成功があったからだ。
セブンガーを中心に、特空機関連のMDのセールスは好調であったと聞く。 これはまぐれ当たりでもなんでもなく、劇中での活躍が魅力的だったからに他ならない。 それを受けてか、ウルトラマンティガ25周年記念作品のウルトラマントリガー(2021)においても、GUTS-SELECTとして2年連続で防衛チームが設定されたのは驚きであった。
既存のロケ地を飾りこんだ所謂ロケセットではない、ナースデッセイ号のSFチックな司令室を見たときの喜びと興奮は忘れられない。 やはり怪獣という巨大な災害の前では、ヒーローだけではなくそれに立ち向かう人間たちの頑張りが見たい、という思いを再確認した。
もちろん現実としては予算の問題があり、かつての円谷プロが、文字通り身を削って作り上げたウルトラマンシリーズのような豪華な作品を再び見ることは、残念ながら難しいのだろう。 支出をなるべく抑え、利益を上げる。会社としてはむしろそれが普通の製作体制であることも忘れてはならない。 しかし、それを理由に良い時代はもう終わったのだとは言いたくない。 ウルトラマンを大人たちの思い出の中だけで独占してしまうような真似はしたくない。 それは現行のウルトラマンを楽しむ子供たちに対して不誠実だ。
NGシリーズの総括、そしてそこで描かれた防衛チーム像については、10年後、20年後の子供たちに執筆してもらえればこんなに嬉しいことはない。
・・・そして今年もまた、新たなる光が現れてくれたようである。
2022年3月31日 追記・修正
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