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舞台『結城友奈は勇者である』記録及び感想

 画像では到底収まり切らなかったので実質初のNOTEでの感想です。
 現地で二回、配信四回。
 私が #舞台ゆゆゆ で感じた全ての感想。
 そして舞台上での順を追ったメモを元にした記録を載せます。
 例によって超長いです。初見時の感想含みます。
 全部で32000文字あります。


 みんながそこに“居る”んですよ
 我々と同じ空間に“居る”んです
 それが終わるまでずっと続くんです
 これが本当にめちゃくちゃ凄い

#本西彩希帆 (結城友奈役)さん
#大森莉緒 (東郷美森役)さん
#原田清花 (犬吠埼風役)さん
#岡田あずみ (犬吠埼樹役)さん
#伊藤優衣 (三好夏凜役)さん
 アンサンブルの皆さん
 全てのスタッフの皆さん
 我々観劇者

 あの日(2024/10/12〜14)、ところざわサクラタウンジャパンパビリオンホールAに集結した全てで織り成される、当たり前だと思っている日常と幻想的で美しい神楽を思わせる切ない戦い。

 緊張と不安、同時に高まっていく期待感。
 毎週一期アニメの放送を待っていた時の感覚。

 それらが十年の時を経て装いを新たに蘇る。


 人形劇。
 何度見たか分からない冒頭部分。
 早速聞いた事ない8bitゲーム効果音みたいなのが聞こえてきて新鮮。
 モガモガモガッって動いてる人形がとてもかわいい。物体化したのでしたら欲しいので売っていただきたい。めちゃくちゃそのまんま。
 バタン。
 壁が倒れてからのヤケクソ感のリアルさが超好き。風友奈と樹東郷みたいに画面で分かれてないので全体の「あ、ヤベっ」な空気感が非常に楽しい。
 ……あのこれ観劇してる人しか解らないんですが、東郷が機転を効かせてるシーン、回転式舞台装置の上のスクリーンには大森さんドアップでピシャシャーン!って雷が走ってる原作再現映像が出てたんですよ。東郷の(園児たちを先導しないと)のアレ。それを大森さんでやってて「スゲェマジかよ!?こんなとこまでやるんか!?」って感心しながら笑い堪えるのに必死でした。
 ここでガッツリ心を掴まれて舞台の中に引き込まれ、そして観劇者の我々(園児役)の「がーんばれ!がーんばれ!」で心だけでなく我々の存在そのものもまたあの舞台を創っている一員なのだと思わせてくれて既に感動。
 人形劇終了後うどん屋(かめや)。
 二回共結構遠くの席だったから大森さん(東郷)が使ってるのが七味か一味か解らなかったんですが配信で七味だと明確に解っていやー良かった良かった。

 いずれにせよそのシェイク回数と勢いは味変とかそういう次元じゃないよ護国思想はどうした器の中は真っ赤だよ。

 東郷のエキセントリックさが既にアクセル全開なんですよ。しかも「らしい」所が本当に凄い。
 みんな全部わちゃわちゃしてて見てて楽しい。
 岡田さん(樹)「私たちの部活動をスライドで上映!とかかな?」
 本西さん(友奈)「
☝️(それ良いじゃんっ!の顔)」
 原田さん(風)「甘いっ
☝️
 本西さん(友奈)「
☝️(ダメかー……の顔)」
 大森さん(東郷)「娯楽性の無いものに大衆は靡かないですね
☝️
 本西さん「
☝️」大森さん「☝️」頷き合う。
 好き。
 本西さん、セリフ以上に顔がめちゃくちゃ喋ってる。そういう所もマジで友奈。

 風に届いたメールと独白を詳しく見せる形にしていて、初ゆゆゆの方にも「これなんか起こるな?」という匂わせを強めにしてるのが映像みたいに一時停止出来ない舞台ならではの見せ方だなぁと感心。
 あと主観なんですがスワニー製車椅子が凄くコンパクトで軽そうに見える。香川の誇り。

 舞台にまでカレーネコ出るんか(驚愕)。


 初樹海。
 時間停止からの「私たちが当たりだった」。
 ここもそうなんですが舞台全体通して犬吠埼姉妹のスキンシップ多めで非常に仲良し姉妹さんを感じて素敵。
 樹海の風景が友奈の瞳に映る演出を本西さんの瞳に映す形の素敵原作再現演出をしています。配信が初の方はここで「おおっ」ってなるでしょうし、実際私も「おおおっ」ってなりました。
 変身シーン。
 ぶっちゃけ舞台化すると聞いた瞬間に「変身どうすんの!?」と疑問ばかりでしたが想像を遥かに上回る演出と技法でぶっタマげました。
 見慣れた変身バンク映像なのにシルエットで新鮮。新規映像じゃないのこれっ!?と興奮。その70秒で姉妹変身。何度見ても早過ぎる。
 そして本西さん(友奈)の変身と共に舞うようにいらっしゃったアンサンブルの皆さん。

 ……初見時に『アンサンブル』という言葉を知らず心の中で勝手に「精霊さん」って呼んでました。


 右の手甲、左脚、そして精霊さんたちと舞い踊りながら変身していく本西さん(友奈)。
「い……いつ服が変わったの!?」
「か……カッコいい……っ!!」
 と大混乱大興奮。まさか友奈の身体の部位単位で徐々に変わっていく初変身までライトアップで再現。

 演出だったり御霊とかバーテックスまで。
 アンサンブルの皆さん凄い。背景映像で表現し切れない幅広い所を担いつつ幻想的な世界観との親和性も取れているのがアツい。初見で「精霊さん」って感じたのは当たらずとも遠からずだと今でも思います。

 そして勇者たちが“居る”んですよそこに。戦ってるんです。演技、声量、動き、それらが質量と共に観ている者の目と耳と肌に確かなパワーを伝えて来る。

 ……わ、われわれはいますごいものをみているぞっ!


 初戦後、解説とこじれ。
 東郷の迷いが大森さんの微妙そうな表情に凄く出てて場面転換が無い分場の気まずさが良い意味で生々しい。その分本西さん(友奈)の明るさが沁みる……。
 アニメだと4話回想のこの場面、風の背中を樹は眺めている事しか出来なくてあれはあれで良かったのですが……、
 岡田さん(樹)が原田さん(風)に「秘密を抱えて大変だったでしょ……?」って寄り添う舞台オリジナルがですねぇ……謝罪練習と占いの前にあったよねこのシーン!あったあった!と存在しない記憶が生えてきそうなくらい自然でかつ姉妹間の大きな愛情を感じるのが良過ぎる。原田さん(風)の右手を岡田さん(樹)が両手で包むように握るのが最高オブ最高。後半の火力アップにも繋がってる。にこにこ。
 一方その頃。
「屋根が無いぞ!屋ぁ根ぇ🫳
 うん。最高です本西さん(友奈)。めっちゃ良い笑顔ですし大森さん(東郷)のポカーンとした顔も含めて最高。勢いで全部持っていこうとするしそれでなんとかなっちゃう所が完全に友奈です。
 舞台の回毎に違うギャグしてて凄い。一日目の二回とも違う洒落を言ってたので多分ここ六回とも全部違う。
 あんちくしょう三連星出現。

 制服だった本西さん(友奈)が幕の外に出て2秒くらいで変身して上段から登場し2メートル近い段差から飛び降りてて「おいおいおいおい!?!?マジで変身してんのですかい!?!?!?!?」と既に何度目かの大混乱。


 後でXで知ったのですがアンサンブルの一人、日名子連さんがこの場面の友奈を演じていたとの事。身体能力が高過ぎる。
 舞台化で友奈が計七人になった。七人友奈。

 東郷の葛藤と決意。
 映像じゃなくて本西さん(友奈)の声との対話という形で戦闘中での回想を実現。本西さん(友奈)のお着替えタイムも兼ねているのでしょうし何度でも言いますが上手過ぎる。
 さて、ここからどうするんだ?と。
 東郷美森の変身と戦闘。舞台化で最も懸念した事項と言っても過言ではなかったです。脚が動かせない子の不思議戦闘をどうやって舞台で再現するのか?と。

 初見時の私は「精霊さん(アンサンブルさん)が担いでよいしょよいしょするのかなぁ?」なんていう甘い考えをしておりました。甘過ぎる。
 先にスナイパーライフルが手元に現れ、アンサンブルさんのリボンでの華麗な舞いと共にシルエット変身バンク。
 そして……

 な、なんだありゃあ!?!?!?


 ……ローラーブレードかと思ったのですが、

 なんとスケート型セグウェイ。初めて見た。


(名称: Segway Drift。公道走行不可。最高時速12km……意外と速い。Amazonで¥26800〜……意外と安い)

 またもや余裕で想像の上を行かれた。満開と散華の度に変身時に補助機構が加わる設定とも矛盾しない完璧過ぎるアイテム。


 更にはアンサンブルさんが大森さん(東郷)の背後でリボンを使って舞うことでアニメでの変身東郷の立ち方と移動法を再現。スロープで腰に手を添えて転ばないよう補助するアシストも光る。
 スィーーーッと舞台上を幕まで水平に移動しながらスナイパーライフルを正面に向けて数発発砲。
 私は脱帽。

 御霊(フープ)に絶妙に避けられて地団駄ダンダンする本西さん(友奈)かわいい。
 原田さん(風)の大剣担ぐ姿勇ましくてカッコいい。
 岡田さん(樹)のアンサンブルさんと連動したワイヤー攻撃の「えーーいっ」がかわいいし散っていくアンサンブルさんたちがめちゃ綺麗。
 移動して舞台左上で伏射姿勢の大森さん(東郷)、射撃演出の光(他三人も同じ方向くの好き)と映像で一体無言で即殺するのカッコいい。原田さんの「ほんっとごめんなさい……」には特に何も答えず「状況終了」って言うのちょっと怖くて好き。「勇者も勉強も両立よ」で人差し指立てて振ってる大森さん(東郷)素敵。厳しくて良い。

 ……いやー凄かったなぁ、と一息つけると思うじゃん……?
 この後に及んで私はまだ舞台の事を見誤っていたんですよ。

 この直後。カプリコーン襲来。
 伊藤さん(夏凜)登場。
 ちょーろいっ!(キター!!)
 そして即撃破。


 双剣の扱いと体捌きがめちゃめちゃキレッキレ。マジで追加戦士枠の強さが見える。
「ちんちくりん」って言われた本西さん(友奈)がええっ!?ええっ!?って感じでちょっと怯えて原田さん(風)の肩触ってるのかわいい。原田さん(風)もビックリした後にあぁん?って感じで伊藤さん(夏凜)をちょっと訝しげに睨んでるの好き。
 ……いや凄い。

 何が凄いってカプリ撃破と夏凜登場を三連星撃破直後にし、五人揃って満を持してのOPという脚本の妙技に舌を巻きました。


 OP『ホシトハナ』(オリジナルVer.)。

 そしてサカラバサアですよオリジナルバージョンっ!話の流れを知ってるのに全っ然休ませてくれない。完全に新しい『結城友奈は勇者である』を観てる気分。知ってる筈なのに知らない。そうとしか表現出来ない。


 あっあっあっ本西さん(友奈)が友奈だ舞い凄く綺麗素敵。
 あっあっあっ大森さん(東郷)が動きが少なかった頃の東郷だお清楚。

 あーーーっ!!本西さん(友奈)が大森さん(東郷)を迎えに来るのぉーーー!?


 あっあっあっ原田さん(風)威風堂々っ視線の先には勿論っあっあっあっ岡田さん(樹)胸の前でグーしてるのかわいい視線を原田さん(風)に向けて膝折って全身で「うんっ!」ってしてるのかわいいが過ぎてクラクラするっ。
 この辺脳と目が倍欲しいマジで。
 アンサンブルさんの動きもアシストも凄い。目が追いつかない。でも綺麗。それだけ解れば良い。
 嗚呼〜〜っ本西さん(友奈)と大森さん(東郷)が並んで歩いてるっ手繋いでるっスキップしてるっかわいい素敵っ。
 嗚呼〜〜っ姉妹がハグしてるああああああああ見つめ合ったあああっっ。
 嗚呼〜〜っまだツンツンしてる伊藤さん(夏凜)壁もたれカッコいいっ。

 そこにツーペアが集まって来て円陣キタァ!!

 サビのポーズっ!!見慣れた一期の五人のポーズっ!最高最高最高っ!!
 舞いがっ!舞いがっ!みんなの舞いがっ!綺麗!凄く!すごくきれい!


 本西さん(友奈)のジャンプパンチ!
 キリッってした後にニコッって雰囲気変わるの素敵過ぎるっ!
 すごい。
 すごく如何なる時も生きて。

 ど  語  泣
 う  彙  き
 し  が  そ
 て  死  う
 も  ん  で
    じ
    ゃ
    う

 一日目昼公演開始35分でこの舞台の成功は約束されたと確信。凄まじい。


 夏凜入部。
 伊藤さん(夏凜)の自信満々な現状説明。讃州の背景映像をアンサンブルさんたちが舞い踊り彩る。
 マジで精霊さんにしか見えないんですよねぇ。
 伊藤さん(夏凜)「基礎戦闘力がケタ違いに違うのよっ!」の重複しててちょっと慌ててる感が好き。
 本西さん(友奈)のニコニコ笑顔が本当に眩しい。
 朝練しようの流れで原田さん(風)が「朝起きられないでしょ?」って岡田さん(樹)の頭を優しくポンポンするのああああああああっ!好き。
 大森さん(東郷)の「友奈ちゃんも」で本西さん(友奈)岡田さん(樹)のダブル項垂れかわいい。
 岡田さん(樹)の両手のニュートラルポジションが胸の前でグッてしてるの凄くあざとかわいいんですよね。
「考え過ぎるとはげるはげる」「ああーっはげるワケ無いでしょ!」の動きと話の流れがリアルな感じ。みんな笑っててたのしそう。
「いや?」って聞かれてですねぇ断り切れないのがですねぇ……良い人なのが隠し切れてないんですよね。
 伊藤さん(夏凜)が根負けした後に本西さん(友奈)が原田さん(風)から夏凜の入部届を見せて貰ってるんですよね。それで伊藤さん(夏凜)が出た後に本西さん(友奈)が「あーっ!」って“何か”に気付く。
 ここの舞台オリジナル要素凄い。この後の伏線として機能してるし自然。

 夏凜宅訪問。
 友奈から電話がかかって来て驚いて慌てて殴るようにスマホをタップして切っちゃうの、キレのあるオーバーリアクションが見ててめっちゃ楽しい。
 伊藤さん(夏凜)、夏凜の私服だとよく解るんですが手足がめっちゃ引き締まっててカッコいい。キレのある動きに納得。
 みんなが自宅来訪する時テーブルに置かれてる折り鶴がチョロいを通り越してあざとい。好き。
 木刀の先をドアノブに引っ掛けて開けようとするの面白い。

 岡田さん(樹)が入って来て即テーブルの折り鶴に気付いて直行して手に取った後、同じく気付いた隣の大森さん(東郷)に手渡して「にひっ」って笑い合ってるの好き過ぎて爆発しそう。


 この辺伊藤さん(夏凜)と本西さん(友奈)に目が行きそうなんですがその陽動の間に残り三人が着々と準備してるのが手際の良さとチームワークを感じて好き。
 本西さん(友奈)の「あのねぇ」のイタズラっぽさが超好き。
 原田さん(風)の「自分の誕生日忘れてたぁ?w」のちょっと煽り入ってる感じ好き。
 風→東郷→友奈の順に「バカ、ボケ、オタンコナス」って言うけど東郷の次樹に言いそうになって止める所に押しが強い人にしか強く出られない優しさを感じるの凄い。余りにも三好夏凜。
 本西さん(友奈)「夏凜ちゃんの為の王冠でございます」すき。

 写真(並び順再現+風も三角帽被って主役の夏凜王冠)見ての伊藤さん(夏凜)の笑顔が超素敵で「うへへ」って貰い笑いしちゃう。


 樹のおうた。
 教科書逆さまとかまた細かい再現を……好き。
 雀が叫んでる(深い意味は無い)みたいなガチガチのおうた。むしろ微笑ましくて良い。
 プルプル震えて腕伸び切ってて肩に力入っちゃって目線もキョロキョロと周り気にしててめちゃくちゃ緊張してるのが凄く伝わってくる。あの樹だ。
 そして出た『α波』。大森さん(東郷)めちゃくちゃドヤ顔で自信満っ々に解説し始めて『突然何言い出すんだこの子感』が完っ全に東郷美森。本西さん(友奈)と岡田さん(樹)も興味津々で聞きに寄って来て伊藤さん(夏凜)の「んなワケないでしょ」が無かったらストッパー不在になってた恐怖。そして原田さん(風)の「夏凜も馴染んだわねぇ」とでも言いたげに四人を見てる。これよこれこれ。
 カラオケへの場面転換時の本西さん(友奈)の「れぇっつごーぅ」好き。

 原田さん(風)「ご、め、ん、ね」(渾身のドヤ顔)
 ↓
 バンッ(92点)全員正面向く。伊藤さん(夏凜)だけ思わず立ち上がる。
 ↓
 伊藤さん(夏凜)、正面向いたままガンギマリの眼👀と無の表情で「友奈、マイクを寄越しなさい」(気持ち低め)
 ↓
 迫真の「はやくぅっ!!」
 ↓
 本西さん(友奈)、慌てて伊藤さん(夏凜)にマイクを渡した後、楽しそうに全身でリズム取りながら歌い出す。大森さん(東郷)もそれに合わせてマラカスと体を揺らす。
 ↓
 伊藤さん(夏凜)、やるぞぉぉぉぉって感じで身構えて暗転中にシャウト。


 もうホント『間』とか含めてここ最高。知ってても何度でも笑ってしまう。
 観劇してる時ですが、ここみたいに伊藤さん(夏凜)がチョロいシーン全部観劇者みんな「ふふふっ」って笑いを堪えきれてない。
 岡田さん(樹)、歌い始めて途中で恥ずかしくなって切っちゃう舞台オリジナルが中学生らしさと犬吠埼樹らしさを感じて凄く微笑ましい。周りのみんな「あっ」「うーん」みたいにちょっと気まずそうに察しているのが何て言ったら良いか分からない感を感じて凄くリアル。
 それを「やっぱり固いかなぁ」って言いつつしょんぼりしてる岡田さん(樹)の肩を手を伸ばして優しくポンポンする原田さん(風)、理想の姉。
 それら全てを持っていく『古今無双』。
🫡🫡🫡🫡
 そして置いていかれる伊藤さん(夏凜)。
 ホント三好夏凜って美味しいキャラですよねぇ。
伊藤さんのキレキレのリアクションも相まって本当に見てて楽しい。
 風に大赦から連絡。夏凜との会話。
 真面目な話してるところ申し訳ないんですがバックグラウンドで『古今無双』が話の途中まで流れてて変な笑いが出そうになりました。
 伊藤さん(夏凜)の「私ならもっと上手くやれるわ」の自信満々さ。実に“大赦の勇者としての”三好夏凜って感じで好き。
 原田さん(風)の声がですね……、責任とか年長者としての振る舞いとかがないまぜになっててちょっと震えて聞こえるんですよ。
 犬吠埼宅。

 あら何かしら小鳥さんのさえずりのような素敵で綺麗な歌声が。


 ……岡田さん歌うっま。
 岡田さん(樹)が「お姉ちゃん聞いてたのぉ……?……ひどい」で俯いてスカート握り締めるのとてもとてもかわいい。
 ……この回想(犬吠埼両親落命の報せ)の岡田さん(樹)……「隣を一緒に歩いていける私だったら」の切実さが本当に……切ない。「がんばれー」って心が叫んでしまう。
 翌日。
「カラオケ作戦」とか「サプリマシマシ作戦」とか言うし大森さん(東郷)の割と迫真めの「っやはりα波をっ!」にキッチリ丁寧にツッコミ入れる伊藤さん(夏凜)。馴染み方が非常に三好夏凜で微笑ましい。
 本西さん(友奈)の笑顔と声がずっと眩しい。
 最初のお歌の時も思ったんですが岡田さん(樹)が授業で歌う所、読む前に教科書を一生懸命両手で抱き抱えてて凄く庇護欲を感じてしまいます。

 テスト始めで視線を感じて周りを見回した後、身体より圧倒的に小さい教科書に一生懸命隠れようとしてるのが凄く小動物。守ってあげたい。


 凄い……
 この手紙のシーンなんですがね、教室に見立てた回転舞台の外側で他の四人みんな居るんですよ。まるで手紙を通じて本当にみんなが側に居てくれてるみたいな演出なんです。
 この演出は舞台でしか出来ない。
 岡田さん歌うっま(二回目)。そして翻って自信に満ち満ちて花が綻ぶような笑顔での歌唱。何度でも言おう。素敵だと。

 ここの樹の“夢”、歌と同時にモノローグで語られているんですが……、アニメと違って具体的にこの後樹が裏で何をしていたのかを全く見せていないのがヤバい。初見の人を全員犬吠埼風と同等の絶望に叩き落とす為に“あえて”見せていないようにも見える。「尺の都合」を「観劇者に情報を与えない」に活かす事で後半のジェットコースターの火力を跳ね上げる逆転の調理法こわいよぅ……。


 七連星決戦。
 本西さん(友奈)のコチョコチョの威力が強くて転んじゃう岡田さん(樹)。このやり取りかわいい。転んだ岡田さん(樹)の顔を手を膝に置いて覗き込んで「大丈夫」って言う本西さん(友奈)素敵。
 円陣しようの所で伊藤さん(夏凜)に向けて右手で「こいこい🫴」ってする大森さん(東郷)良い……。
 四人ともめっちゃ良い笑顔で待ってる。この吸引力からはデレかけてるツンデレでは逃れられない。
 全部なんですが映像が凄い。夏凜の斬撃エフェクト、音波のみわわーん、樹海真っ二つ、ホーミング弾の爆発、満開の光輪。
 アンサンブルさんも凄い。水牢、満開の舞台側での機構(フープってそういう事かと納得)、ワイヤーをリボンと動作で再現。
 これら全てが演者さんの動作と連動してる。臨場感と熱量が凄い。
 流石に「元気っぽいタマ」はダメだったか……。
 スタクラ封印時の原田さん(風)の叫びが全部声掠れながらなのが緊迫感ヤバい。めっちゃ引き込まれる。
 動きが多くてこの辺も目と脳が倍欲しい。
 火球で吹き飛ばされた原田さん(風)に駆け寄りつつダウン追撃狙いの攻撃を左裏拳でダンッ!(効果音)って打ち払う本西さん(友奈)つよい……。
 本西さん(友奈)が原田さん(風)の「そいつを倒せぇぇぇっ!!」でダウンしてから前に出て打ち込む重い拳。肩で息してる。それでも正面を見据える眼がギラギラしてるんですよ。かっこいい……。
 大森さん(東郷)のスナイパーライフルの動きが効果音と一体化し過ぎてて感動で心を撃ち抜かれそう。
 リロードのカチッ!キュイーン!(効果音)で撃ち抜かれた。オトコノコが好きなやーつ。
 スタクラ御霊へ友奈東郷で突貫。
 ここでもああそう来るかぁ……と納得と感心。
 回転式舞台裏の足場に二人が立って全体背景に映像で東郷の満開の戦艦、そしてアンサンブルさんたちが爆撃を舞いで再現。
「見ててねっ!やっつけてくる!」
「いつも見てる……」
 ここですねぇ……、本西さん(友奈)が大森さん(東郷)の両肩を優しく抱えながら笑顔で元気に言うんですよ。こんなこと大した事じゃないさ、とでも言わんばかりに。結城友奈を見てる時の安心感そのものなんですよ。
 それに大森さん(東郷)のしっとりした返しがね……東郷美森の重めの親愛そのものなんですよ。

 そして本西さん(友奈)の満開。
 下半分背景の満開機構映像&背後のアンサンブルさんたちが本西さん(友奈)と揃って拳を打ち抜きそして舞う。美しく力強い。
 ここで一回スタクラ御霊再生で暗転する再現。
 暗闇の中、
「勇者部五ヶ条ひとぉぉぉぉつ!!!」
 拳一発。暗闇が少し開ける。
「なるべくあきらめなぁぁいっ!!!」
 拳一発。さらに開ける。
「更に五ヶ条っもうひとぉぉつっ!!」
「成せば大抵っなんとかなぁぁる!!!!!!」
 前傾しながらの渾身の右正拳。
 御霊が砕ける映像と共に夜が明けるように舞台に光が戻る。
 もう本西さんの気迫がヤバい。肩で息しながら時によろけながら腹からの声と魂込めた拳でこちらの心すら抉って来る。


 そりゃ動けんくもなるわ。
『密室』……もとい朝顔ベイルアウト。
 両手握り合ってお互いを解り合ってる感じなんですがここのセリフの微妙なすれ違いがねぇ……後に響いてくるんですよ……。
 暗い中でスポットが当たる伊藤さん(夏凜)の戦闘後報告電話。「霊的医療班の手配を願います!」までは逼迫した表情と声なんですが、徐々に明るくなって「私たち讃州中学勇者部一同がっ!!」の時にスマホ持ってる右腕を左手で掴んで前のめりになるのが本当に仲間になった感があってすごくすき。
 暗転。

 ねえもうここで終わりにしない?
 ……って思っちゃうんですよこの先を知ってると。どうしても。不可抗力なんです。つらいから。
 でもこの後の展開を語らずして『結城友奈は勇者である』を語ったとは言えないんです。まだここ折り返しのカラーコーンの手前なんですメンタル的にも『結城友奈は勇者である』的にも。


 場面変わって部室。
 お菓子の袋を取りつつ原田さん(風)「これアタシが好きなやつぅ!流石ね」で岡田さん(樹)に向く。
 ↓
 岡田さん(樹)、ニッコリして伊藤さん(夏凜)に向いて顔を覗き込む。
 ↓
 伊藤さん(夏凜)、気まずそうに眼を逸らす。
 ↓
 察した原田さん(風)「アンタよく見てるわねぇ」で姉妹ニヤニヤ。
 ↓
 伊藤さん(夏凜)「べっ、別にっ、偶然よっ!ん煮干しの隣にあったから、ついでに」
 ↓
 原田さん(風)「へぇ〜」ニヤニヤ
 岡田さん(樹)、悪戯っぽく笑って“スケッチブックとペン”を手に駆けつつ何かを書こうとする。
 ↓
 伊藤さん(夏凜)「あっ樹っ!余計な事書くんじゃないわよっ!」で追いかける。
 原田さん(風)、二人の追いかけっこを見つめた後「ありがとねっ!」

 この辺ずぅぅぅぅぅぅぅぅぅっとニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤして見てました。

 前半入れられなかった夏凜の煮干し要素(観音寺名産)を自然に入れてる所も打点が高い。
 本西さん(友奈)大森さん(東郷)合流しての祝勝会。かんぱーい!
 大森さん(東郷)「勇者部帰還しました!」
🫡
 本西さん(友奈)
🫡
 ↓
 原田さん(風)「お勤めごくろうさん!」
🫡
 ↓
 つられて
🫡する伊藤さん(夏凜)、やった後に「つられた……」って感じで引っ込めて何食わぬ顔でスンッってしてる。ここすきポイント。
 ちなみに岡田さん(樹)はつられてない。ここもここすきポイント。


 本西さん(友奈)「ゴミ捨て行ってくるよっ!夏凜ちゃんも一緒に行こうよーぅ」
 ↓
 伊藤さん(夏凜)「なんで私がっ」
 ↓
 本西さん(友奈)「夏凜ちゃんの華麗なゴミ捨て、見たいなぁ〜〜〜?」渾身のドヤ顔煽り。
 ↓
 伊藤さん(夏凜)「仕方ないわねっ」スキップしつつ駆ける。
 ↓
 本西さん(友奈)「やったぁぁーーー!」走って付いていく。

 こんなん笑うに決まってるやないですか。


 舞台だけで既にもう三好夏凜のチョロさというチョロさを全て煮詰めて網羅しつつある。
 岡田さん(樹)も二人に付いて行くんですがその時に姉妹で手を振り合ってるのが尊い。
 ……さて、
 “何故か”ジュースを飲む本西さん(友奈)を心配そうに呼ぶ原田さん(風)。
 “何故か”左目に眼帯してる原田さん(風)。
 “何故か”一言も話さない岡田さん(樹)。
 “何故か”左耳が聞こえなくなっている大森さん(東郷)。
 この、日常の中に不穏さが溶け込んでる感じ。
 背筋みたいに直接的じゃなくて足元からゆっくりゆっくり冷たさが迫って来ていて「大した事ない」と放っておいて気が付けば手遅れになってるよく知らない病巣みたいな恐怖感。

 日常への帰還に「おーー!」した直後に無機質に『大赦』から送られて来る後味の悪い延長戦の報せ。
 それでもめげずに団結し立ち向かう勇者部。ぞわぞわする。

 有明浜背景映像+五人揃って足踏みでED 『Aurora Days』の再現。エモい。


『エリクサー隠しゲーム』って何ぞや?
『ファンタジーRUNandCATCH』って何ぞや?

 満開の後遺症が治らず襲撃も無いまま季節が移る。
 日々が過ぎていく演出と回転舞台がめちゃくちゃ噛み合う。

 ED再現で改めて気付かされるんです。折り返しのカラーコーンが置いている場所は“ここ”なんだと。
 ジェットコースターの“登り”の終わり。ここからが本番。ここからが視聴者の心に焼き付き十年もの間語り継がれる名作の本領発揮なんです。


 延長戦。
 さあ降り始めましたもう隠す気も無い。
 暗闇に警戒色の赤ライト、不穏なBGMとアンサンブルさんの舞いと共に聞こえてくる本西さん(友奈)の気合いの声。そして明るくなると共に「勇者キック」で“最後”のバーテックスの撃破が映される。
 夕暮れに壊れた橋の背景。
 学校に戻る事なくこの場所に飛ばされて困惑する本西さん(友奈)と大森さん(東郷)。そして聴こえてくる……、

「ずっと呼んでいたよ〜、わっしー。会いたかった〜」


 ……最初からずっと書きたかった感想を満を辞してここに記したい。
 役者の皆さん、当たり前ですが声がアニメとは違うんです。十年聴いてきたんですから違いは解りますよそりゃあ。
 でも、でもですよ。
 声が違っても皆さん結城友奈だし東郷美森だし犬吠埼風だし犬吠埼樹だし三好夏凜の声なんです。
 この日初めて聞いたのに彼女たちの声だって解るんです。凄まじい事に。
 ここも同じです。

「このふんわりしているのに悲しげで切なげな声は“乃木園子”の声だ」と。
 この十年、勇者であるシリーズについて一日たりとて忘れた事の無い私の“たましい”が告げているのです。


 アンサンブルの一人にして乃木園子役、秋月愛羽さん。
 配信を見たというアニメのシリーズ構成、上江州誠さんですら「(アニメ園子CV.の)花澤香菜さんの声を収録して流しているのかと思った」との事。ホントにこの時の園子の声にめちゃくちゃ似てるんですよね。
 そしてですね、左眼と口元以外全身が包帯が巻かれてベッドごと登場するここはアニメでも辛かったんですが、こうして質量が伴うとより痛々しくて辛い。胸が締め付けられる。余りに惨い。

 秋月さん(園子)「そのリボン、似合ってるね」
 本西さん(友奈)「東郷さんの知り合い?」
 大森さん(東郷)「いいえ、初対面だわ」
 秋月さん(園子)「……ふふっ、わっしーっていうのはね、私の大切なお友達の名前なんだぁ」
↑このセリフの「……」の『間』が辛過ぎて泣きそう。
 ……初見の時、この辺ずっと喉の奥で「ぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっっっ」って唸ってました。隣の方、聞こえてたら本当にごめんなさい。

 秋月さん(園子)と話してる本西さん(友奈)が途中からスカートを握り締めているのが辛い。

 秋月さん(園子)の、悲しそうで切なそうで、それでもふんわりした耳心地の良い声で伝えられる真実。


 それと共に回る舞台。シームレスに転換する場面。
 東郷の家。
 原田さん(風)「勇者は、決して死ねない?」
 大森さん(東郷)が自害しようとして精霊(アンサンブルさん)に止められ、本西さん(友奈)の息を呑む声。
 止まぬ秋月さん(園子)のモノローグ。

「……治りたいよね。私も治りたいよ。……歩いて、ともだちを抱きしめに行きたいよ……」
「悲しませてごめんね……大赦の人たちもこのシステムを隠すのは一つの思いやりではあると思うんだよ」
「……でも、……私はそういうの、ちゃんと言って欲しかったから」
「……っ、わかってたらっ、ともだちと、もっともっとっ、たくさんあそんで……」
「だから…………つたえておきたくて」


 途中から秋月さん(園子)の声が涙声になるのが辛くて貰い泣きしてしまう……。
 急転直下速度が想定より遥かに早い。この辺ずっと肩に力入ってたしまだ唸ってた。隣の人ごめんなさい。

 本当に辛いんですが、ただの辛さではないんです。
 舞台でこの場面を初めて観た時、私はまさしく十年前に『結城友奈は勇者である』を視聴し、この“真実”を知った時と全く同じ気持ちでした。それを思い出させてくれました。
 足元に這い寄っていた冷たい現実が背筋まで届いて、先を「見たい」と「見たくない」が恐怖と悲しみと共にせめぎ合い、何がどうなればみんながまたあのお日様みたいな笑顔になれるのか見当もつかなくて、「こんな良い娘たちがあんなに頑張ったのに、酷い目に遭ったままこれからも生きて行かなきゃならないなんて嘘だろう?」と、希望を捨てられない。だから先の展開を待つ。見る。

 視聴者を魅了する穏やかな日常。
 やがてやって来る残酷な真実。
[ああ、真実ほど人を魅了するものはないけど]
[ああ、真実ほど人に残酷なものもないのだろう]
 まさにその通りだと、いっそ清々しいとすら言える納得と共に物語に一気に引き込まれていく。
 私を十年もの間釘付けにし未だ離してくれない『結城友奈は勇者である』とはこのような作品なのだ。


 ……書いててパッションが溢れてしまいました。戻ります。

『満開』の後遺症……力の対価として差し出した身体機能は治らず、決して死なない。その成れの果てが左眼と口元以外を全て包帯で覆い隠した余りにも痛ましい乃木園子の姿だった。
 それを知らされないまま部員を集め、戦いに巻き込み、『散華』で身体機能を失わせてしまった。
 罪悪感。何より最愛の妹から声を奪ってしまった事実に苛まれ、動揺に震える声と後悔に流れる涙。
「じゃあ……、樹の声は……もう、二度と……」
 風の、一言毎に浅くなる呼吸、焦点の定まらない右眼。力が抜けて項垂れ、誰に対してでもなく自分へと向けられる言葉の刃。
「私が樹を勇者部に入れたせいでっ……!」
 それら全てが質量を伴って身体の芯にまで響き、胸を締め付け、心を抉ってくる。
 辛い。書いてて辛い。

 東郷も、今までずっと明るい笑顔で舞台を照らしてくれていた友奈ですら、何も言えずに立ち尽くす事しか出来ない……。
 フェードアウト。まるで太陽を失ってしまったかのような暗い暗い中で、雨音だけが鮮明に頭に残る。
 その後。
 夏凜へと大赦から届く一通のメール。
【勇者たちの精神状態が不安定。あなたが監督し導きなさい】
 来たばかりの頃であれば「監督し導きなさい」の文言は望む所であったはず。……なのに、最初から読み進めていくと、勝ち気に腰に当てていた左手が徐々に下ろされ、スカートのプリーツを親指と人差し指で摘み握り込んで、声と表情からも動揺が隠し切れない。
 今度は風に届く大赦からのメール。
【勇者の身体異常は調査中。肉体に医学的な問題は無く、じき治るものと思われます】
 件名欄に「RE:」。つまり風から大赦へ向けたメールの返信。
 乃木園子からの話と辻褄が合わない内容を読むその声には、いつも勇者部の前を歩く頼り甲斐のある先輩の覇気は無い。
 そこへ、犬吠埼姉妹の家の固定電話へとかかって来る一本の電話。

 それは樹が声を失う前、姉に内緒で受けていたボーカリストオーディション一次審査通過の報せだった。


 茫然自失し力無く受話器を取り落とし、妹の部屋へと名を呼びながら入っていく。丸机に置かれたノートとノートPC。
 妹といえど勝手に覗くべきではない事すら意識に無いままそれらを見てしまう。
 ノートには『体の調子を良くするには』という題目で自分の声が戻って来ると信じて努力すべき項目が樹の文字で記されている。
 そして、
 ノートPCの画面に映されていた音声ファイルを開く。
 先程のオーディション用の録音音源らしい。

 歌が好きで、それが夢になって、それを自分の生き方にして、やがては尊敬する大好きな姉の隣を歩きたい。
 そんな言の葉で綴られた、妹の失われた声が聞こえて来る。

 もう聴けない歌が聞こえて来る。

『祈りの歌 acoustic guitar ver.』

 その切なくノスタルジックなイントロと共に流れる美しく黄色い花びらが舞う背景映像。
 犬吠埼風の、悲しみと怒りと罪悪感と愛おしさの全てが籠った悲鳴とも叫びともとれる嗚咽。
 歌のテストの後に交わされ、「秘密」とはぐらかされていた妹の夢の話。その温かいモノローグが聞こえて来る。
 穏やかな歌。その時の心象を顕すかのようなアンサンブルの跳ねるような舞いと触れ合いが見える。


 勇者装束に変身した犬吠埼風はゆらり、ゆらりと進む。世界を守る為の力で、最愛の妹の声を奪っておいてのうのうとシラを切り続ける大赦へと報復する為に。そこに“大赦の勇者”三好夏凜が立ちはだかる。
 風は怒りを込めた大剣を振りかぶると共に声を枯らして叫ぶ。

「大赦を……潰してやるっっ!!」
「邪魔するなぁっっ!!!!」


 夏凜に風を傷付けるつもりはなく、刀の峰部分で大剣を受け続ける。
 治らない後遺症、知っていて黙っていた大赦。ボロボロになった乃木園子という勇者。
 風の激情、絶望と共に知らされるそれらに動揺し、夏凜は風に圧倒される。
「そして今度はっ私たちが犠牲にされたっ!!」
 もしかすると、その『私たち』には今戦っている夏凜すら含まれているのかもしれない。犬吠埼風は本当はそんな優しい少女なのだ。

「なんでっこんな目にっ、遭わなきゃいけないっ!!」
「なんで樹がっ声を失わないといけないっ!!」
「……夢を諦めないといけない……っ」


 だけどそんな優しい少女だからこそ、最愛の妹である樹から夢を取り上げた世界の仕組みが赦せない。
 息が絶え絶えで怒りだけを悲鳴のように喉から震わせて風は叫ぶ。

「世界を救った代償がっ……これかあああああああああああ!!!!!」


 気迫に圧倒され吹き飛ばされた夏凜に斬りかかる風。

 そこに颯爽と現れ、拳で大剣を受け止める結城友奈。


 それでも風は止まらない。
「退きなさいっ!」
「嫌ですっ!!退いたら風先輩は大赦の人たちを傷付けるんでしょう!?風先輩が人を傷付ける姿なんて見たくありません!」
「大赦が私たちを騙した事っ、分かってんでしょう!?」
「分かってますっ、ぐっ、でも、もし後遺症の事を知らされていたとしても、結局私たちは戦ってたハズですっ!」

 風の大剣を友奈は拳で打ち飛ばし、諭すように結城友奈は犬吠埼風へと告げる。
「世界を守るためにはそれしかなかったから、誰も悪くない。選択肢なんか誰にも無かったんですっ!」
 だが違う。犬吠埼風が怒りを感じ、涙を流し、大剣を振りかざしてまだ立ち上がる本当の理由はまた別の所にある。

「知らされてたら……」
「私はみんなを巻き込んだりしなかった……っ」
「そしたら少なくともみんなはっ!」
「樹はぁぁっっ!!!!」
「無事だったんだぁぁぁぁ!!!!」


 満開の後遺症を知っていたら、きっと自分はたった一人ででも戦っていただろう。後輩の友奈や東郷も、妹の樹も、もしかしたら夏凜ですら巻き込まずに何度も何度も満開を繰り返して乃木園子のようになってでも戦っていただろう。
 そんな『もしも』という自分への怒りと罪悪感に囚われて、大剣を振るう腕を止められない。
 風との攻防で友奈の満開ゲージが貯まっていく。夏凜の制止も友奈は聞く気がない。
 結城友奈、極限の集中。今戦う相手の風を含めた周囲の全てがゆっくりと流れていく。
「風先輩を止められるならっ、これくらいっ!!」
 右拳で大剣ごと風を打ち飛ばす。同時に友奈の満開ゲージが最大値へと到達する。
 だが、結城友奈はそんな事を気にも留めない。
「だって私は……、勇者だから」
 たらればもしなんて最初から無かった。望んで勇者部へと入った友奈にとって『人のためになる事を勇んで実施する』が劇やボランティアだけでなくバーテックスと戦う事でもあったのだから。それで納得して進んで協力していたから。
 味覚を失った友奈にだって糾弾する権利はあったはずなのに、それでも風を止める為にここに来た。
 犬吠埼風から少しずつ、少しずつ、力が抜けていく。

 その時、緑の人影がぶつかるように風を後ろから抱き締める。
 声を失い、得たばかりの夢を失った最愛の妹がそこに居た。


 樹は必死に首を横に降っている。風の呆然とした表情の中に『理解』が浮かぶ。必死に“もうやめて”と伝えている。
 風は遂に右手に握っていた大剣を取り落とし、うずくまるように膝と両手を地に付く。
 やり場の無くなってしまった罪悪感だけが嗚咽と共に右眼から流れ落ちる。「ごめん、ごめんみんな」と、出てくる言葉は後悔と懺悔ばかり。
 樹はそんな姉に自分のスマートフォンに打った文字列を見せる。
【私たちの戦いは終わったの。もうこれ以上、失う事は無いから】
 そこに姉を責める言葉など無かった。
「でも、でもっ、私が勇者部なんて、作らなければ……っ」
 顔をくしゃくしゃにして、それでも勇者部部長犬吠埼風の後悔は止まらない。
 必死に首を振って“違う”と伝えたい樹。だが顔を伏せた風にはそれは伝わらない。

 樹は一枚の便箋を取り出して風の目の前に掲げ、そこに勇者部員で唯一書かれていなかった樹の文字が記される。

 また、祈りの歌が、聞こえて来る。

「勇者部のみんなと出会わなかったら、きっと歌いたいって夢も持てなかった。勇者部に入って本当に良かったよ。樹」


 聞こえるような文字で、妹からそんな事を意われ、
「風先輩、私も同じです」
 顔を上げたその先に居る桜色の少女に、
「だから、“勇者部を作らなければ”なんて、言わないで下さいっ」
 眩しい笑顔でそんな事を言われてしまったら、もう自分を責める事など出来なくなってしまうに決まっていた。
 祈りの歌が終わり、犬吠埼風の嗚咽と共に、舞台が暗くなる。

 さて、展開を置いてこの辺の感想を述べたい。
 書き方が変わってしまいましたが、ここいらの場面で内容の途中に私の心象を書き入れようとすると拒絶反応が出たのでやむなくです。


 まずこの辺ずっと泣いてました。なんなら鼻を啜る音が劇場でポツリポツリと聞こえて来ていました。
 ですがその実、初観劇時に私はその涙が引っ込む程の驚愕に二回も襲われました。
 私の心の臓に叩き込まれた全く想定外の重い一撃目。
 それは、

 岡田あずみさん歌唱の『祈りの歌』


 犬吠埼樹の“声優”は黒沢ともよさんである。十年前に樹役でその声を初めて聴き、黒沢さん歌唱の『祈りの歌 acoustic guitar ver.』もこの十年で何度聞いたか分からない。食べたパンの枚数を覚えていないのと同じです。
 故に、私の中で犬吠埼樹の声は黒沢ともよさんで定着しています。
 しかし、

 ここでもまた私の“たましい”が告げるのです。「この歌は“犬吠埼樹”が歌っている」と。


 そして二撃目。

 原田清花さんの愛憎と罪悪と憎悪の籠った演技。またしても私の“たましい”がずっと「この叫びは“犬吠埼風”の叫びだ」と言い続けてくるのです。

 特に上記の「樹は、無事だったんだ」の「樹は」の部分。
 悲鳴と一体化しているように樹の名を叫ぶんです。自分と妹の心の痛みを世界に知らしめ自分の喉すら妹と同じように潰そうとしているかのように。


 姉妹のスキンシップ多いなー素敵だなーとか思ってたらこれだよ。もう情緒はぐっちゃぐちゃ。鳥肌と震えが止まらないんです。展開知ってるのに別角度から別属性の衝撃が来るんです。耐えられません。
 それでですね、まだ続くんですよ。終わってないんです。
 この状況で入れるメンタル系の保険ありますでしょうか?無いです。でも見るんです。『結城友奈は勇者である』が好きだから。
 舞台に戻ります。

 場面は移り、暗闇の中。
 よりけたたましく鳴り響く警報。
 浮かび上がる『特別警報発令』の文字。
 破壊された壁の向こうから飛んでくる夥しい数の白い化け物。
 それを行った人物が舞うリボンを背後に姿を現す。

「これでみんなを助ける事が出来る」
「私一人だけが生贄ならまだ良かった」
「それを……」
「友奈ちゃんたちまで供物にするなんて許せないっ!」


 そう。『自分一人が犠牲ならまだ良い』と思っていたのは何も犬吠埼風だけではない。だがその人物は知っている事も“経験した事”も風とは別のもの。
 そしてそれらから弾き出した結論もまたスケールの違うもの。
 再び、壁に向けたスナイパーライフルの発砲音が響く。

「こんな世界、私が全て終わらせるっ!」


 四国を囲う壁を破壊しているのは東郷美森だった。
 風を止めた友奈と夏凜が東郷の元へと駆け付ける。
 世界を滅亡させる暴挙。一体何のために?
「友奈ちゃん……私、もうこれ以上あなたを傷付けさせないからっ!」
 言っている事とやっている事が噛み合っていないように思える。だがそれでも、
「やらなければならないの!」
 言葉と共に舞台が回る。
 四国を囲う壁の向こうが映し出される。

 そこは有り体に言ってしまえば『地獄』だった。
 炎、炎、炎。
 そしてそこには無数の悍ましい白い化け物がその身を喰い合い融合させ、かつて勇者部が倒したはずの幾つものバーテックスへと形を成していく姿があった。


「これが世界の真実の姿。……壁の中以外全て滅んで……そして、バーテックスは12体で終わりじゃなかった。……無数に襲来し続ける」
「この世界にも私たちにも未来なんて無い。私たちは満開を繰り返して、身体の機能を失いながら戦い続けて」

 身体が樹木のように動かなくなって、最後には乃木園子のように人間として扱って貰えず、神のように祀られる。
「いつか……大切なともだちや楽しかった日々の記憶も失って、ボロボロになって、何も分からなくなって、それでも戦い続けて……そうやって守るものがっ…………」
「もうこれ以上……“大切なともだち”を犠牲にはさせないっ!」

「勇者という存在もこの世界もっ、私が断ち切る……」
「勇者という生贄から逃れる為には、これしか方法が無いの!」
「この世界そのものを破滅させるしか」

 再び東郷はスナイパーライフルを構える。
 夏凜が「待って」と東郷の前に出る。世界を守る為に“大赦の勇者”として派遣された夏凜は立場的にもそんな事は見過ごせない。
 だが大赦は真実を隠し、勇者を選抜し、使い捨てようとしているとしか思えない。

「ともだちが傷付いていくのも……大切な人を失うのも……」
「私……もう耐えられない……耐え切れないのっっっ!!!!」


 白い化け物を率いて東郷美森は世界を滅亡させんと進む。
 物量に押され、友奈と夏凜は東郷を見失う。
 大親友であるはずの東郷の言葉が全く理解出来ずに精彩を欠いた友奈を庇って夏凜は気を失う。

「……どうして…………、私っ、友だち失格だぁ………………」


 か細く、絞り出すような声でそう呟く友奈。
 最大のバーテックスも、激昂する犬吠埼風ですら止められた、あの元気で太陽のように明るい友奈が、今や見る影も無かった。

 この辺の感想です。
 ここまで見てて思ったのが、
 二時間という限られた中でキャラ毎の見せ場をしっかり見せてくれているのが凄い。
 基本は比較的全員に均等にスポットを当てて『勇者部』という全体を見る構造になっているんですが、だからといって個人個人の魅力に迫るエピソードに省略が一切見られない。
 伊藤さん(夏凜)のやられ方とそれを見た本西さん(友奈)の悲鳴が迫真過ぎる。展開知らなかったら「……ぇ?死んだ?」って思ったと思うくらい。
 そして勇者部の精神的支柱である友奈が折れそうになるのが本当に絶望的。『この子さえいれば何とかなる』を七連星戦と風の時に見せといて直後に落としに来るのがエグい。
 そういう所は舞台は容赦がない。休ませてくれない。
 海温泉東郷過去回の省略もプラスに捉えると急転直下速度を上昇させて観劇者を休ませない妙技にすら見えて来る。
 舞台って奥が深い。

 あとこの辺大森さん(東郷)に注視していて言語化出来た事が一つ。
 例えば「私一人だけが生贄ならまだ良かった」の「まだ良かった」の所。それまで正面を真っ直ぐ迷い無く見ていたのにそこだけ目を伏せて残念そうに言うんです。凄い。
 いや何が凄いって一つの短いセリフの中に“表情での”感情の変遷があるんですよ。ここだけじゃないんですが目は口ほどに物を言うと言いますがまさにそれ。

 質量、役者さんの演技、そういった“リアリティ”が『結城友奈は勇者である』の長所を高めているんですよ。変身して戦う作品にリアリティが乗ってそれがパワーになってる。


 詳しくないのでよく分からないんですが特撮とかに乗ってるリアリティってこんな感じなんですかね?
 大森さん(東郷)、セグウェイドリフトでずっと静止してる場面ありますけどひょっとして体幹強くないとあれで静止って難しいのでは?それで演技してスナイパーライフル構えてバンバン撃つんですから意識しなきゃいけないタスク多いし……。
 あと大森さん(東郷)の背後のアンサンブルさんの舞いが荒々しい感じで東郷の感情にシンクロしてるみたいで好き。

 アンサンブルさんといえば兼ね役数がヤバい。星屑までやってる。20人くらい居るのかと思ったら後でパンフレット見て驚愕した。たった6人!?
 友奈東郷園子の兼ね役とか東郷変身時のリボンの役とか考えたらほぼ全員出突っ張りじゃないですか!?……ホントに精霊さんだったりしません??


 逃避気味でしたが戻ります。
 舞台が回る。
 一方その頃犬吠埼姉妹。
 行き場の無い想いが抜け落ちて空っぽになったように座ったまま虚ろな眼で動けない風を必死で揺する樹。必死で喉を震わせても言い慣れた「お姉ちゃん」という言葉は出てきてくれない。白い化け物……星屑は待ってはくれず迫って来る。
 やがて樹は意を決するように姉の前に立って武器のワイヤーを振るう。
「樹……」
 多勢に無勢。それでもたった一人で足を踏ん張って星屑を捕らえて引き合う。
「どうして……そこまで……?」
 踏ん張って、引っ張られて、転んで。
 引っ張られて、踏ん張って、また転んで。
 歌が好きで、それが夢になって、それを自分の生き方にして、やがては尊敬する大好きな姉の隣を歩きたい。
 そんな事を言って、叶わなくて、きっかけを作った風を責めず、勇者部に入った事を後悔していない。
 そして今、他の誰でもない姉の風を守る為に妹は前に立って、戦っている。
「隣どころか……、いつの間にか前に立ってるじゃない……っ」
 よろめきながら、大剣を杖代わりに、それでももう一度、犬吠埼風は大地を踏み締め、立ち上がる。
 ワイヤーが切れ、星屑は姉妹を屠ろうと迫って来る。
 が、
「姉としてぇぇぇぇっっっ!!」
 大剣が、迫る星屑を両断する。
「妹に任せっきりってワケにはっ、いかないでしょうっっ!!!!」
 それを聞いて、樹は満面の笑みで振り返る。
 そこには活力を取り戻した樹の最愛の姉にして勇者部部長、犬吠埼風が居た。
 風が座り込んだ樹の手を取って、引き上げるように立たせて両腕で包み込む。
「本当に……私の自慢の妹だっ……」
 樹からの返事は無い。
 だが今は言葉はいらない。
 二人は東郷の元へと駆け出していく。

 ここの感想。

 岡田さんの、声が聞こえないのに表情とジェスチャーの演技だけでも伝わって来る犬吠埼樹の健気さよ……。


 空っぽになって燃え尽きた原田さん(風)を必死になって揺さぶるし、星屑(アンサンブルさん)がやって来ると焦る。
 それでもワイヤーを振って必死に星屑を追い払うんです。
 逆に引っ張られて何度も倒れるんです。苦しそうに。
 またモノローグで泣かせに来るんです。ああニクイ。
 そして風の復活の声を聞いてめちゃくちゃキラキラした笑顔になるんですっ!!眩しい。
 手を取り合って抱き合うと原田さん(風)が空いた左手で岡田さん(樹)の頭を撫でるんですっ!!

 なんでそういう我々ファンが喜ぶ事するかなぁ!?!?💢💢好きィ!💢


 戻ります。
 舞台が回る。
 一方その頃、友奈はダウンした夏凜を守りつつ星屑と戦う。
 星屑の軍団に翻弄され囲まれる中、それらを一閃する刃。そして言葉。
「友だちに、失格も合格も無いってぇの!」
 いつも通りの勝ち気な声。三好夏凜の復帰。
 自分を責めて迷う友奈に夏凜は問う。
「ねえ友奈、アンタはどうしたい?……東郷の事」
 すぐに答えは返って来る。
「止めたいっ!東郷さんを止めたいよ!だってこの世界が無くなったら、みんなと一緒に居られなくなるっ!東郷さんと一緒に居られなくなるっ!!」
 切羽詰まって、悲痛に。今の自分では止められないとも言う。
 いつもみんなを引っ張っていた友奈が、親友の東郷の事を何も分かってあげられず、凶行に及ぶまで何も出来なかった。
 自信の喪失、それが友奈の眼から溢れていた。握った拳を抱えて背中を丸めている。
 それを見て、派遣されてきた“大赦の勇者”三好夏凜はいっそ開き直ったかのようにあっけらかんと言う。

「友奈ぁ、……私、大赦の勇者として戦うのは辞めるわっ」
「これからは、……勇者部の一員として戦う」
「私たちの勇者部を壊させたりしない」
「友奈の泣き顔……見たくないから」


 そして、三好夏凜は駆け出す。
 樹海の上に到達する。戦場には星屑が無数、これまで倒し復活したバーテックス五体。
「五体……まずはあいつら殲滅して……それから、東郷を探して……」
 自分の満開ゲージを見つめる。
 滲み出る恐怖を振り払うかのように、あえて軽く言ってのける。
「流石にっ、犠牲無しって訳にはいかないでしょうねっ!」
 端末をポケットから取り出し、一枚の写真を見つめる。
 ボイコットしてしまった自分でさえ受け入れ、強引に産まれた日を祝ってくれた能天気な彼女たちと自分が並んだ写真。
 まるで何を“持っていかれる”のか分からないから、目に焼き付けようとしているかのように。
 あの日迷惑そうにゴミ捨てした時と同じ笑みが浮かび、一言。
「……バカね」

 そして、“大赦の勇者三好夏凜”改め“勇者部部員三好夏凜”の真なる初陣が幕を開ける。
 その瞳をギラギラと輝かせて、迫る世界の滅亡を知った事かと吐き捨てるかように笑い、歌舞伎の千両役者の如く高らかに宣言する。

「さあさあここからが大見せ場ぁ!」
「遠からん者は音に聞け!!」
「近くば寄って目にも見よ!!」
「これが讃州中学二年っ、勇者部部員、三好夏凜の実力だぁ!!!!」

 駆ける。剣筋に迷いはない。

「さぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「持ってけぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 腰を低く構え、迷い無く叫び、光輪が、赤い光が背後に浮かび上がる。

「勇者部五ヶ条ひとぉぉぉぉつ!!」
「挨拶はきちんとっ!!」

 舞うように4閃。直ぐに次へと視線を向ける。

「勇者部五ヶ条ひとぉぉぉぉつ!!」
「なるべくっあきらめないっ!!!」

 一閃。同時に反撃を喰らう。満開が解け右腕の機能が奪われる。右腕を一瞥だけして再び前を向く。

「勇者部五ヶ条ひとぉぉぉぉつ!!!」
「よく寝てっよく食べるっ!!」

 残る左の刀で素早く一閃。右の蹴り。反撃を喰らう。
 今度は右脚が持っていかれる。
 右半身を引き摺るように、それでも声を張り上げる。まるでやって来る恐怖を吹き飛ばすかのように。

「勇者部五ヶ条ひとぉぉぉぉつ!!!」
「悩んだらっ、相談っ!!」

 もう一体残ったバーテックスを探す。が、不意を打たれて後退する。同時に、今度は頭の何処か。
 それでも三好夏凜は前を見て、叫ぶ。
 眼が死んでいない。

「勇者部五ヶ条ひとぉぉぉぉぉぉぉぉぉつ!!!!」
「成せば大抵っなんとかなぁぁぁぁぁぁぁるっっっ!!!!!!」

 死に物狂いの左の縦一閃。

「見たかぁ!!!!!?」
「勇者部の力ぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 かつて「具体性の無いフワッとしたスローガン」と小馬鹿にすらしていた。それでも今は、今の“勇者部部員の”三好夏凜にとっては、体の底から力を引き出す為に必要な誇りそのものだった。
 樹海へと力無く倒れる夏凜に友奈が駆け寄る。大型バーテックス四体撃破の大立ち回り。しかし代償は大き過ぎた。

「……誰?」

 虚ろな顔で、自分を抱く“誰か”を確かめるように動く左手を友奈の頬へと当てる。

「友奈?」

 いっそあっけらかんと、大した事では無いかのように、焦点の合わない眼のまま夏凜は言う。

「ごめん……なんか……眼も耳も持ってかれたみたい……友奈、よね?」

 友奈は応える。だが夏凜は受け答えにならないまま足早に言葉を続ける。

「見てたぁ?友奈……このアタシの、大活躍をっ」

 怖いくらい、いつも通りに、勝ち気に、夏凜は言ってのける。

「東郷を……っ探そうと思ったんだけどね」
「ねぇ友奈……、言いたかった事があるの」
「ありがとうって」
「私、長い間ずっと勇者の訓練を受けてきた。……戦う事だけが私の存在価値で、……私はただの道具だった」
「でも、みんなのお陰で私はっ……」
「……友奈なら、東郷の心だって変えられる。きっと」
「東郷を救えるのは、友奈だけよ」
「一番の、友だち、なんでしょ?」

 それを聞いて、夏凜の手をもう一度強く握って、
 結城友奈は前を見据える。

 感想を挟みます。

 伊藤さんめちゃくちゃカッコいい。
 そりゃブロマイドも一番最初に完売しますよこんなにカッコいいんだもの。
 写真見る時の笑顔がゴミ捨てした後に送られてきたそれを眺めた時と全く同じなんですよぉぉぉぉ!!!!

 この大見せ場の所基本笑顔なんですよ。
 やぶれかぶれではなく『絶望的な状況こそ笑って乗り越えてやろう』というニュアンスを感じました。戦士。
 そして満開後に友奈にかける言葉も笑顔のまま言うんです。
 眼も耳も持っていかれて深淵みたいな沈黙の暗闇の中で、視線も合わずレスポンスも噛み合わなくて本西さん(友奈)は歯を食いしばって俯いてるのに。
 まるで言外に『大した事ないよ』と安心させるかのように優しく、それでいて自信満々な“いつもの三好夏凜”として友奈の背中を押してるんです。
 なんとな〜く『GでIでNなアイツ』っぽいんですよここの伊藤さん(夏凜)の感じ。それもあって“たましい”の震えが止まらないんです……。

 これが“舞台の三好夏凜”の真の実力か。恐れ入りました伊藤さん……。


 戻ります。
 復活した風は咆哮を上げて東郷に斬りかかる。
 スナイパーライフルでそれを受け、勇者たちが救われる道は苦しみを長引かせずに世界を終わらせる事しか無いと説得しようとする東郷。
 東郷が大剣を弾いて追撃を撃とうとするが、樹のワイヤーで絡め取られて不発。
 大きな隙。風が大剣を振りかぶって東郷を吹き飛ばす。
 が、攻防で蓄積した満開ゲージ解放し、かつてはスタークラスター撃破に大貢献した東郷の満開、朝顔の戦艦が犬吠埼姉妹に立ちはだかる。
 東郷は謝りつつ姉妹を迎撃し、躍進する。勇者の力で神樹を壊す事は叶わない。故に『それ』を背後に引き連れて。
 レオ・バーテックス。人類の敵へと東郷は呼びかける。

「私を殺したいでしょう?……さぁ、おいで」

 導く。

「これで……みんなをっ」

 放たれる巨大な火球。
 それが神樹の元へと一直線に飛んでいく。
 が、

「勇ぅぅ者ぁぁぁぁパァァァンチッッッッ!!!!!!」

 救いの在処を終焉に見た少女の元に、桜色の勇者が姿を現す。
 巨大な火球をたった一発の右拳で簡単に打ち消して、結城友奈は光を纏って東郷美森の前へと駆けていく。

「もう迷わない。私が勇者部をっ……、東郷さんを守るっっ!!!!」


 ごめんなさい一旦感想タイム入らせて下さい。良い所だけど挟まないと書いてる私が保たない。
 まず大森さん(東郷)と原田さん(風)の戦いの所。
「あれ?セグウェイドリフト消えた?」と思ったら納得。
 大森さん(東郷)が原田さん(風)の大剣を弾く。
 ↓
 追撃で撃とうとして樹のワイヤーの音。
 ↓
 スナイパーライフルが引っ張られて止められる。
 ここ凄い。紐もリボンも無いのにマジで銃が引っ張られてるみたいに見える。このパントマイムするのは確かにバランスが取れてないと無理。
 大森さん芸達者過ぎる。

 この後吹き飛ばされて回転舞台の裏に行ってスタクラの時と同じように中央に戦艦が出て来る形だから流れも上手い。
 あの時あんなに頼もしかったのが敵で来る絶望感よ。
 ここでまたしても予想外の大森さんのニューアイテム『満開用座席式機構』(勝手に命名)登場。動力:アンサンブルさん。
 同時に膝を打つ勢いで納得。
 一番大事なこの後の友奈とのタイマンを実現させる為には絶対に必要なアイテム。

 ……ここまでやるのかよ……。


 そしてそして主役の結城友奈登場。
 この脳汁ドバドバ出て来る感じよこれよこれ!
 もうずっと心の中で「いけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!ハッピーエンドを掻っ攫えおらああああああ!!!!」って“たましい”の叫びが止まらない。

 さあ戻ろうか舞台へ。

 拳を振りかぶり、跳び避け、蹴り上げ、進み続ける友奈。

「止まれぇぇぇぇ!!!!」
「ダメよ友奈ちゃんっ!!」
「そいつら辿り着いたらっ私たちの世界が無くなっちゃうっ!!」
「それで良いのっ!!一緒に消えてしまおう!!」
「良くないっっ!!!!」

 風の制止、星屑との戦闘、連戦に次ぐ連戦で息が上がる中、
 結城友奈、満開。迷いなど欠片もない。
 右拳でレオの御霊を発現させる。
「御霊っ!」
「ダメっ!」

 御霊を守り友奈に横槍を入れる東郷。

「っ何も知らずにっ、暮らしてる人たちも居るんだよっ?……私たちが諦めたらダメだよっ!!だってそれが」
「勇者だって言うの!?他の人なんて関係無い!!一番大切なともだちを守れないのだったらっ、勇者になんてなる意味が無いっ!!……頑張れないよ……」

 東郷と友奈、互いに魂同士をぶつけ合うかのような口論。互いに折れない。勇者とは何か?この救いようの無い世界に価値はあるのか?
 御霊から立ち昇る火炎。
 東郷が、悲しそうに告げる。

「友奈ちゃん……、あのままじっとしていれば良かったのに……」
「眠っていれば、それで何もかも済んだのに……っ」
「もう手遅れだよ……」
「戦いは終わらない……」
「私たちの生き地獄は終わらないのっ!!!!」

 東郷の爆撃に友奈は耐える。そして応える。
 終わらない戦い。そこに希望は無い。
 それでも、

「っ……東郷さん、地獄じゃないよっ、だって……、東郷さんと一緒だもんっっっ!!!!どんなに辛くてもっ、東郷さんは私が守るっ!!!!」
「大切な気持ちや思いを忘れてしまうんだよっ!!?大丈夫なわけないよぉっ!!」

 東郷の砲撃に、友奈は倒れる。

「友奈ちゃんやみんなの事まで忘れてしまう……、それを仕方が無いなんて割り切れない……一番大切なものを無くしてしまうくらいなら……」
「忘れないよっ!」

 倒れながら、それでも友奈は鬼気迫るように否定する。

「どうしてそう言えるのっ?」

 桜色の髪は乱れ、息は絶え絶えで、よろけながら、もう一度、結城友奈は立ち上がる。
 目の前の大親友を否定しないために。

「私がっそう思ってるから。……めちゃくちゃ強く思ってるからっ!!」

 だがその言葉はまだ東郷には響かない。

「“私たち”もそう……きっとそう思ってた……っ」
「今はただ……悲しかったという事しか覚えていない……っ」
「自分の涙の意味がわからないのっ!!!!!!」
「嫌だよっ!!」
「こわいよっ!!」
「きっと友奈ちゃんだって私のことを忘れてしまうっ!」
「だからぁっ…………」

 まるで幼な子のように声を荒げて泣き喚く東郷。
 東郷の悲しみを受け止め続け、多くのそれらのその中心にあるものを友奈は見つける。
 友奈の満開の機構が東郷のそれを抑え付け、友奈は駆ける。

「東郷さぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」

 右拳を一発。

 暗転。

 東郷の胸の内を示すような暗闇の中、ようやく友奈は東郷の元へと辿り着き、力無く項垂れるその肩を抱く。
 迷子の少女を安心させるかのように、友奈は力強く言う。
「忘れないよ」
 不安に押し潰されそうに東郷は呟く。
「……嘘」
 首を振って友奈は言う。
「嘘じゃない」
 震えて、東郷は言う。
「……うそっ」
 友奈は、東郷の顔を覗き込んで、
「嘘じゃないっ」
 そう、お日様みたいに笑って言った。
 東郷は縋るように友奈の右腕を掴む。

「……ほんとう?」
「うんっ。私はずぅっと一緒に居るっ。そうすれば忘れないっ!」
「友奈ちゃん……っ、忘れたくないよぉ……っ!私を一人にしないでぇっ!!」
「うんっ!」

 根拠なんて無い。それでも友奈は、これまでずっと明るく笑って、くじけても立ち上がって、こうして東郷の元へと辿り着いた。その事実が根拠以上に“なせば大抵なんとかなる”をしている証明だった。

 感想。
 友奈東郷共に満開の機構を演じるアンサンブルさんの一糸乱れぬ連携。それを含めたここの友奈と東郷のやり取り。

 音圧でマジで殴り合ってる。
 質量がもたらす現実的な迫力。仰け反るような感情のぶつけ合い。脊椎に響き轟く声。

 悲鳴混じりの大森さんの叫びと悲しそうな嗚咽。口に出してないだけで友奈に「助けて」って言ってるのが解る。不安に押し潰されて心がぐちゃぐちゃになってるのが痛過ぎるほど伝わって来る。もう何回目か数えてないが辛い。大森さんの伝える力が強過ぎて辛い。心が痛い。

 そして本西さん。友奈が持ってる安心感の再現度が本当に凄い。
 友奈が与えてくれる安心感って理屈じゃないんですよ。“ただ笑ってそこに居てくれる”。それだけでなんか大丈夫なんじゃないの?とかフワッと気持ちが楽になる感じ。
 約束された勝利よりも肩に入った力と緊張を和らげてくれて、もう一度自分の脚で立ってみようと思わせてくれる安心感。
 笑って「大丈夫」って言ってくれるだけで力が湧いて来る安心感。

 あんなきらきらした笑顔で「ずっと一緒に居る」なんて言われたらそりゃ不安なんて吹き飛びますよ。
 それを本西さんは“結城友奈”として見事に世界に出力して下さっている。

 ずっと痛かった心に染みて暖かくなる。
 ありがとう本西さん。私はもう大丈夫です。


 戻ります。
 東郷を止めても戦いはまだ終わっていない。
 火球と化したレオ・バーテックスが迫る。
「っわたし、っ大変な事をっ」
「東郷さんのせいじゃないっ!」
「あいつを止めるっ!」
「っ、はいっ!」

 しかし二人では止まらない。
 友奈の満開が解け、離脱。脚を散華で持っていかれて動けなくなる。
 残った東郷一人では火球を止められない。
 一人では。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「ごめん!大事な時にっ!!」

 我らが部長犬吠埼風とその妹犬吠埼樹、合流。火球を押し返す力が増す。
「樹ちゃん……風先輩……っ、私……」
 嬉しさはある。だがそれよりも東郷にとって罪悪感の方が大きくそれが声にも滲んでいた。
 だが、

「おかえりぃ東郷っ」

 風はこんな時でも穏やかな言葉を投げかける。まどろっこしい言葉なんていらない。全てを察しそれだけ言えば良いと解っているから。
「いくよぉぉぉぉ!!押し返すっっっっっっ!!!!」
 だが、三人でも足りない。
 そこで、有り得ない声が聞こえて来る。

「そこかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「勇者部をっ、舐めるなぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!」

 眼も耳も右腕も右脚も散華で持っていかれ、何も見えず何も聞こえない三好夏凜がそんな事はお構い無しとばかりに援護に飛んでくる。
 これで四人。

「よぉぉぉぉぉぉぉしっ!!!!」
「勇者部ぅぅぅぅぅうううう!!!!」
「「ファイトぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!」」

 叫び、踏ん張り、歯を食い縛って、東郷美森、犬吠埼風、犬吠埼樹、三好夏凜は世界を滅ぼす巨大な火球を正面から受け止める。何度も満開し、何度も散華を繰り返し、今自分の身体のどこが動き、どこが動かないのかも分からないだろう。
 それでも今ある世界を守る為、讃州中学勇者部は進む。進み続ける。

 そして、禍々しい炎の中、
 桜色の光が、舞台に満ちる。

「うああああああああああああああああああああああああああっっっっっっっっ!!!!!!!!!!」
「私はっ、讃州中学勇者部っ!」
「勇者っ!!」
「結城友奈ぁっ!!!!」

 満ち開き、飛んで来た結城友奈の右正拳が炎を捉える。

「届けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!」

 身体ごと投げ飛ばすかのような右の拳がもう一度繰り出される。
 炎の塊が炸裂し、虹色の光となって消えていく。

 暗転する中、
「友奈ちゃん?」
「友奈ちゃん……っ」
「友奈ちゃーーーーーーん!!!!」

 と、東郷の声だけが響いていた。

 感想。

 凄いんですよここ。いや何回凄い凄い言ってんだってハナシですがね。

 良い意味で泥臭いんです。良い意味で綺麗じゃないんです。だって一生懸命な顔ってみんなそうですから。
 必死に顔を歪めて歯を食いしばって、身体は強張って、身体の内から力を振り絞って声を張り上げる。
 そしてみんな声が枯れそうなんです。アンサンブルさんが居なくて正真正銘勇者部五人だけで戦うんです。押すんです。キャラクター同士でやり合ってた圧力が全部客席の我々に向けて放出されるんです。言葉にならない。

 とにかくこっちも手に汗握るし肩の力が入りまくって僧帽筋が攣るかと思った。

 そして本西さんの「届け」。
 瞬間最大声量。
 届き過ぎて心身共にぐちゃぐちゃになりそうでした。放心しそうになるのを必死で堪えてました。


 さて、この辺で私の心象と場面を合流させます。山は越えましたしこっちの方が私の本来の書き方に近いので。
 舞台が回る。
 平和な讃州の風景映像と共に再びアンサンブルさんの舞い。バックで流れてる樹海への影響のフィードバックで起こった災害の報道が流れる。
 やっぱりアンサンブルさん五人精霊さんにしか見えない。
 ん?五人?

 舞台が回る。背景は青空の大橋。

 紫の帯の和服を着た秋月さん(園子)が立ってそこに居る。
 右手の包帯がハラリと解けて垂れる。
「私たちの戦いは、終わったのだろうか?」
「神樹様は……私たちを」

 えっ

 この場面出すの!?しかもセリフ有りで??
 あの……?期待して宜しいんでしょうか??
 こんな意味深な場面出して。


 舞台が回る。
 勇者部部室に松葉杖の伊藤さん(夏凜)と座っている原田さん(風)。
 いやもう五体満足でそこに居るってだけで凄く安心。よく生きててくれたって思っちゃう。
「変身出来なくなってる」「欠損したものが帰ってきてる」「神樹様に解放して貰えた」「外の世界は変わっていない」
 でも確かに根本的な問題は解決してないんですよね。バーテックスも“きっと”来るし。
 歩いてきた伊藤さん(夏凜)をそっと支えて座らせてあげる原田さん(風)優しくて好き。
「でも、どうしてあの子だけ目を覚まさないの?」
「あの子は、一人で頑張り過ぎたから……」

 つらい。
 入室する大森さん(東郷)と岡田さん(樹)。
「私があんな事を……」って後悔する大森さん(東郷)に原田さん(風)が「言うなっ!!」って食い気味に結構強めに言うの超好き。岡田さん(樹)がちょっとビクッってするのも好き。
 舞台が回る。病院の背景。
 ベッドでピクリとも動かない本西さん(友奈)だけが見えて舞台がそのまま止まらずに一周するのが辛い。
 大森さん(東郷)が立てるようになってお役御免になったスワニーの車椅子だけが本西さん(友奈)を見守ってるんですよここ……香川の誇り。
 舞台が回る。
 友奈だけが居ない部室。迫る文化祭の演劇。
 割り切れない。友奈が帰って来ると信じたい。
 泣く。
 声が戻りつつある樹のたどたどしい「おしばいのれんしゅうをつづけよう」「ゆうなさんはきっと、きっと」
 あああああああああああああああああああああああああああああああああ泣く泣く泣く泣く泣く泣く泣く泣く泣く泣く泣く泣く泣く泣く泣く泣く泣く。
 舞台が回る。
 暗闇の中、松葉杖で立って歩く大森さん(東郷)だけにスポットが当たる。
 やがて視界が開ける。病院の庭。
 ごめん香川の誇り。まだお役御免じゃなかった。本西さん(友奈)を頼むぞっ。
 人形のように虚ろで動かない本西さん(友奈)に、大森さん(東郷)が劇のセリフを読み聞かせる場面。

 舞台のここ、大好きなんです。
 樹の歌のテストの時と同じで、友奈と東郷が居る回転舞台の外にみんなが居るんです。
 しかも背景の青空には今本西さん(友奈)が手に持っているであろう五つの押し花が映るんですっ。素敵演出。

 舞台左下で伊藤さん(夏凜)が持った木刀ごと手を上げて右上の岡田さん(樹)が手を振ってるのかわいい。一回目見逃したけど二回目で岡田さん(樹)が木刀貰ったりとか三人がわちゃわちゃしてるのとってもかわいかった。

 ここの大森さん(東郷)の、悲しそうな嗚咽が辛い……。悲しみの波動が涙腺を直撃してもうつらい……。

 でも、
「とう、ごう……さん?」

「一緒に居るよ?ずっと」
「……友奈ちゃん……」
「東郷さん、聞こえてたよ。……東郷さんの声」
「友奈ちゃん……おかえり」


 そして掻き抱くように本西さん(友奈)を抱きしめて泣き続ける大森さん(東郷)の肩を、押し花を持った右手でポンポンと優しく叩きながらお日様みたいなあの笑顔で言うんです。

「ただいまっ」


  そして画面が暗転。

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
(心の中で拍手喝采感謝感激雨霰)

 が、まだまだ休ませてくれないんですこの舞台はっ!!


 ビーーーーーーーー、と。開演ブザーの音が鳴るんです。

 演劇『明日の勇者へ』開演。


 台本見つつセリフチェックして「うんうん」ってしてる伊藤さんすき。
 原田さんのノッリノリの「ぎゃぁっはっはっは」すき。
 セリフ毎に笑みが深まっていく岡田さんすき。
 勇者役本西さんの言葉に眼で頷きながら微笑む大森さんすき。
 めちゃくちゃ元気いっぱいの本西さん好き。


 キィィンという音で、本西さんが突然倒れて、劇のまっ最中だというのにみんなが本西さんの元へと駆け寄る。

 その瞬間、理解。

 最後にして最大の驚愕。
 最初も最初。人形劇の時の我々観劇者(園児たち)の「がーんばれ!がーんばれ!」が丸ごとこの場面の伏線。

 気が付けば我々が作品に手を取られて共にこの舞台を創っていた。

 何この死ぬほどテンションがアガる展開っっっっっっ!?!?!?!?

 もうこの場面は色んな意味で拍手以外に有り得ない。天晴れとしか言いようが無い。

 パチパチパチパチと、我々の拍手の音が劇場に響く。

 紙吹雪が舞う中。

「そう。どんなに辛い事があっても」
 大森さんと原田さんの手を取って、その勇者は立ち上がる。
「疲れて、倒れてしまう事があっても」
 仲間たちに見守られて、その勇者は続けて言う。
「私は何度でも立ち上がる」
 勇者は右を向いて大森さんと岡田さんを見る。
「大好きな人が居るのだから、諦めるわけが無い」
 勇者は今度は左を向き、原田さんと伊藤さんを見る。
「挫けるわけが無い」
 五人は笑い合う。
「なんだって出来るんだ」

 そして勇者は……、

 結城友奈役の本西彩希帆さんは、キラキラした笑顔のまま、東郷美森役の大森莉緒さん、犬吠埼風役の原田清花さん、犬吠埼樹役の岡田あずみさん、三好夏凜役の伊藤優衣さんの笑顔に囲まれて、

 作り物でも確かな質量を持つその剣を掲げて、言い放つ。

「だーい好きな、みんなと一緒ならっ!!!!」


 カーテンコール。
 六人の精霊さんたちのお辞儀。
 優雅に脚をクロスさせて一礼する伊藤優衣さん。
 元気よく手を合わせてお辞儀すると同時に頭に乗った紙吹雪が落ちて来る岡田あずみさん。
 おしとやかにゆっくりと一礼する原田清花さん。
 膝くらいまで深々とお辞儀する大森莉緒さん。
 にこやかに笑って一礼する本西彩希帆さん。

 そして五人は、
「文化祭大盛況の中終了!!」
「讃州中学勇者部は永久に不滅」
 と書かれた明らかに手作りの『讃州中学新聞』を部室の黒板に貼り付けて、
(また伊藤さん(夏凜)が大森さん(東郷)に「こいこい
🫳」されてるw)(新聞に明らかに見覚えのある“あの猫”が居る)(ラブリーニャンズすき)
 回転舞台の扉から出る時に本西さんが振り返って一礼。
 そして、手を振って扉の向こうに。

 fin.


 千穐楽挨拶。
 アンサンブルさんに拍手を求める本西さんの言葉で勇者部五人全員しゃがむ前にふわっふわの謎の動きしてるの好き。
 伊藤さん挨拶。
「ファンの方々が温かくてパワーを貰った」「役者だけじゃ初日を迎えられなかった」
 岡田さん挨拶。
「樹はかわいさと臆病な中にも強い心」「勇者部とお姉ちゃんが大好きなところを表現したかった」「作品に携われた事も、勇者部になれた事も、風の妹になれた事も、樹になれた事も幸せだった」
 原田さん挨拶。
「2.5次元もアクションや殺陣も初めてで壁にぶつかる事は多かった」「風とは素の自分は真逆で何度も壁にぶつかって諦めそうになる事もあった」「みんなに支えられて最後まで勇者部として走り抜けた」「愛情を感じた」
 大森さん挨拶。
「東郷は自分の素と全く逆」「稽古している間、本読みで『東郷さんだったよ』と言われて自信がついた」「セグウェイ乗るの難しい。たくさん練習した」「アンサンブル、スタッフのおかげで千穐楽まで来られた」
 本西さん挨拶。
「えー本日はぁえー✋」「舞台を始めると知らせてからみんなから愛情を感じた」「明るい役久々だった」「ゆゆゆという作品を誰よりも愛してる演出家の田邊さん(聖地観音寺出身)を筆頭にみんなで愛を以て舞台を作る事が出来た」

「あのー(泣きそう)……っくそー、みんな泣かなかったからっ」
 本西さん以外の四人「「「「がーんばれっがーんばれっ」」」」
「(泣きながら)結城友奈という役を演じられた事を心から感謝」
「皆さんと出会えて幸せでした」

「本日は舞台『結城友奈は勇者である』にお越し下さいまして、誠にーーー」

「「「「「ありがとうございましたー!!!!!」」」」」


 うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ(感涙)

 感動をありがとうっっっ!!!!

 Bravo!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
 Bravo!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
 Bravo!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 もう心の中はそればっか。ホントもう最高に最高でした。


 最後に。

 私は都合で初日の二回しかこの舞台を観劇する事が出来ませんでした。
 最初は正直『舞台』と聞いて想像が付かずに「あれをどうするんだ?」「これをどうするんだ?」と不安を感じる事の方が多かったです。
 だがその二回を見て、ところざわサクラタウンを後にする時。私の心に浮かんだのは全く別の考えでした。

「ああ……明日も明後日も観られる人が羨ましい……」
「舞台に……現実に姿を見せてくれた彼女たちにまた会いたい」


 名残惜しむようにそんな事を考えて、後ろ髪を引かれつつサクラタウンを後にしました。
 ですが、舞台で貰った熱量は未だ冷めておらず、友人たちと見た感想を共有して、買い込んだパンフレットやブロマイドを見返して新しい気付きと楽しみを頂きました。
 私はこういったささやかな……と言うには少ーしばかりパッションが溢れ過ぎてゴチャついた文章ですが気が付いたら書き始めていてこのような文量になってしまいました。
 感想ってより感想兼記録ですね。

 知っているはずなのに知らない物語。空想の中から飛び出したかのような役者さん。舞台ならでは演出と臨場感。そして殴りつけてくるかのような圧と質量。
 開始35分のOPで『成功は約束された』と思った。
 その後の私にはそれを上回る驚愕が何度もあった。


 観劇している間に何度も疑問が浮かびました。

『これ』は……なんだ?と。

 直ぐに答えは出る。

『結城友奈は勇者である』だ。


 ならば私は何故、知っている作品の知っている展開でここまで心を乱され驚愕しあまつさえ滂沱の如く涙を流しているのだ?
 そんなものは決まっている。
 この舞台という新たな『結城友奈は勇者である』に心を奪われているからに他ならない。
 あの舞台の上に質量と感情を持って“彼女たち”が居るからとしか説明出来ない。
 だから最後まで見届けられた。やり方をもう知っていたから。
 ただ祈る。見慣れたあの街で過ごす彼女たちに幸せがあらん事を。
 だって悲劇を越えた先で彼女たちの笑顔をもう一度見たいのだから。
 それを見ないだなんて勿体無いじゃないですか。
 だから見るのが辛くても何度だって見られるし、何度だって感動出来るんです。


 十年の時を経て、『舞台』として音を変え色を変え形を変えた全く新しいものにも関わらず、作品の本質は何も変わらない。
 そんなもの、ゆゆゆが好きな人たちが集まらなきゃ作れない。
 ただただその事に、そしてこの作品に関わった全ての人に心からのお礼を言いたい。
 私の大好きな作品と、新たな驚きと感動と共に再び巡り逢わせてくれた。そんな舞台を創ってくれた全ての縁に心から伝えたい。

 ありがとう、と。


 さて、流石にそろそろ筆を置かせて頂こう。
 次の舞台で咲く花は、果たして私に何色の景色を見せてくれるのだろう?
 今から楽しみで仕方が無い。

 舞台よ、まわれ、まわれ、明日になあれ。
 ふたたび会えるときまで。


 またね。



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