本日の「さんまの東大方程式」の補足(2024/08/25)
東京大学大学院 昆虫遺伝研究室 博士3年の大津高志と申します。
体調も研究も上手くいかず、引き続きネガティブ気味ですが社会に貢献できるように少しずつ努力いたします。
私はメイン研究であるカイコの遺伝的な解析に加えて、主に趣味で養蚕資料を集めています(中国語の勉強も書籍を読むことが主目的です、第二外国語はフランス語です)。
この記事は、本日(8/24)放映された『さんまの東大方程式』について、私が話したことの補足です。
研究がうまくいかない中での出演ですが、テレビに出ていることは友人の中村さんを含め、多くの方々との交流を始めるきっかけになっております。そのため今回も出られたことに感謝しております。
番組内では拙い言葉でしたので、視聴されていて理解しにくかったことが多いと思います。一部を補足いたします。急いで書いた部分もあるので不足や間違いもあると思いますが、ご了承ください。
まだ文章を書くことへの苦手意識も強いのですが、番組についての補足は放送後すぐに出すのが良いと考えました。
そのため放送のタイミングを合わせて、ここに書きたいと思います。
まず、「『九州大学 伊都キャンパス』で桑園整備の際に番組でお話しした「文字が刻まれた刀」が出た、という話についてです。
以下にリンクを貼った「庚寅銘大刀」についてはNBRP(ナショナルバイオリソースプロジェクト)で保存されているカイコ品種のデータが書かれた冊子に書かれていました(具体的な冊子名がすぐに出て来ず申し訳ありません)。
考古学については詳しくないのですが、干支(庚寅)が書かれた金属製品の出土は同時代の出土したものや周りの出土品やその編年の年代を決める際にも役に立つため貴重のようです。
https://www.city.fukuoka.lg.jp/nishiku/c-shinko/charm/nisikunotakara/koinmeitachi.html
(邪馬台国とかの話などは今回は関係ないのと、過去にいろいろ申し上げた中に恥ずかしいこともあったので、いずれ話させてください。)
保存されている系統の情報についてはこちらに書かれております。
番組途中では話す機会がなかったのですが、「東大生が選ぶ日本人の生活を変えたベスト10」では(恥ずかしながら撮影中に初めてお名前を伺ったのですが)、QRコード(二次元バーコード)を開発された原昌宏先生のような仕事に心から憧れます。
「QRコード」がどこで生まれたか、誰が作ったかを知らない方々も世界中で使っているほど社会に浸透している。このように人々の生活を豊かにする研究に心から憧れます(研究については論文を出すどころか研究で必要なことを書くことも十分にできていないので申し訳ないです)。
(2位の渋沢栄一翁については足尾銅山などの分野で様々な意見があると思いますが、社会を良くした部分を主に尊敬しております)
中国のお酒の名前ですが、本来はスピリッツ(白酒)の「水井坊(ピンインshui3jing3fang1、数字はアクセント)」というつもりでした(日本には入ってきていないようです)。
「井jing3」を4声で発音しているのですが、中国語では「进(進)jin4」と同じ発音だと勘違いしておりました(3声は連続すると前のものが2声になるので中国語では通じない発音です)。
私の通っている中国語の学校では、日本人の先生の授業を受けております。私が習っている先生は日本の中国語の言語研究分野を非常に大切にされており、人間的にも尊敬しております(授業での政治的な発言はありません)。
お酒は日本酒もテキーラも引き続き好きですが、好きなものをゆっくり飲む環境が好きです(⚠️当然お酒は20歳になってから)。
表紙だけ映った中国語の本(中国の小学生向けの本)ですが、小学生向けなので発音も書かれています。平易な文章かつ自然な文章なので練習には最適です(ただし音声はありません)。
声を変えるAIについてですが、あのタイミングでたまたま思いつく言葉がぽポケモンの「ニャオニクス」のゲーム内の図鑑説明でした。複数の作品の文章が混ざっているため精進いたします(カラマネロやニャスパーも引き続き好きです)。
声を変えるAI技術については賛否両論ですが、私自身の意見としては「声の特徴を使う権利」のような権利やそれを守る制度は必要と感じます。技術が正しいことに使われることを祈っています。
恋愛のAIについての話ですが、男性の恋愛が不得手でAIを使うという流れだったかもしれません。その中で女性の河合さんが手を挙げて、女性もAIを使うと話してくださったことに感謝しております。
私はなかなか恋愛に縁がないのですが、自然言語のAIは性別含め様々な意見を集めているので相談相手として選びやすいと思います。
養蚕関係ですが、うまく話せなくて自分の知識の浅さを実感いたしました。反省しております。
小さな掛け軸は「蚕影神社」の掛け軸です(私も一度参拝いたしました)。
養蚕の神様といえば遠野物語の「オシラサマ」がよく知られていますが、こちらは関東一帯で崇敬された神社です(たとえば『日本民家園』ではかつての分祠を移築しております)。
「金色姫」という神様は民間伝承の神様で、後世にワクムスビ神ということにしたようです。この辺りの伝承は「うつろ船」という江戸時代の怪奇談にも関わっているらしく、滝沢馬琴も書き残しております。
大きな掛け軸についてですが、撮影時にうまく話せなかったことを猛省しております。
この掛け軸は「佐々木長淳」先生が「大島君」に送られたもので、『蠶性喜靜惡喧喜温惡溼』と書かれていました。(蚕は静けさを好み、騒がしさを嫌い、暖かさを好み、湿気を嫌う)
「佐々木長淳」先生はヨーロッパで当時のカイコの恐ろしい病気「微粒子病」の対策法について学ばれました。また息子の「佐々木忠次郎」先生もカイコの学者であり、弊研究室(今の昆虫遺伝研究室)の祖です。
送られた「大島君」は「大島喜蔵」氏(大島桑、おおしまそうの育成者)だと考えれます。
掛け軸の文章は様々な変種があり、いろいろな書籍に引用されています。
少なくとも明(1639年)の『農政全書』における過去の養蚕書の歴史を振り返る部分における、元の『農桑輯要』の注釈には『黃省曾曰:蠶之性,喜靜而惡喧』『喜煖而惡濕』と原型のようなものがあります。さらに古くなるかもしれません。
二重カッコで囲った部分は以下のサイトから抜粋いたしました。
今までの話で中国の話が多いですが、念の為申し上げますと、私はカイコ分野について日本の蚕糸研究のために世界全体から学びたいと思っています。
なかなか資料探しに苦労しているのですが、EUでは「ARACNE」というプロジェクトでイタリアやフランスなどの様々な国家での文化的な遺産や桑の木のデータを広く集めるプロジェクトがあります(300万ユーロの予算がついています)。
それでもイタリアやフランスのようなかつての養蚕国では養蚕業自体は産業というよりは文化遺産な側面が強いようです。日本ではこれからも続けられるように、何かできないかと思っています。
養蚕自体への英語の資料は歴史的に少ないようなので、まずは英語で書かれているARACNEのホームページから学びたいと思います。
カイコのアレルギーについてですが、交配の際はマスクをすれば咳などは防げます。ご安心ください。
研究を続けると同時に、日本の蚕糸に関わる方々(養蚕、蚕種、製糸、撚糸、織物や紬、呉服業、他にも文化的側面含めて全体)のために各国の歴史や文化を勉強いたしたいと思います。
日本ではカイコ含めて科学研究の歴史も深く、遺伝資源も国内で大切に保存されております。研究に貢献して未来へ繋げられるよう精進いたします。
長い文章でしたが、今後とも機会がありましたらよろしくお願いいたします。
2024/08/25 大津 高志