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2024年ゴアグラインド名盤20選

本年もたくさんのゴアグラインドに出会うことができました。毎年のことではありますが、20作品ほど紹介していきたいと思います。視聴リンクも貼っておりますので、レビューと合わせて聴いていただければと思います。


2024年の私まとめ

・弊レーベル作品第2弾をリリース

リリースしました。

リリース企画も挙行しました。

・Obscene Extreme 2024に参加

参加しました。

当時の模様は以下の記事にて↓

また当時についてトークした『はるまげ堂TV』も公開されています。

・『オールドスクール・デスメタル・ガイドブック』著者ゲルマニウム氏との対談記事が公開

公開されています。


そんなこんなで「まあ年1回は頑張る日 (リリース、企画など) を作れればな~」程度に考えている私ですが、今年はやりすぎなくらいいろいろなことをやった気がします (これ以外に所属バンドのライブなどもいろいろあり) 。
肝心の2024年の音源はというと昨年同様まあ少なめという感じです。やはり円高の影響もありフィジカルもなかなか気軽に買えなくなりましたね。定期的に最新情報をチェックはしているのですが、最新音源は思ったほど聴けませんでした。元来この記事は「ベスト20」的な意味を含んでいたのですが、もはや聴いた音源を全部並べても大体20ぐらいだと思うので純粋な紹介記事のようになっているかもしれません。

それでは以下本編です。

・Impotence Trichomonad “Look Your Back, Gore Is Back!”

初っ端手前のレーベル作品で恐縮ですが、紹介いたします。名古屋出身3人組ゴアグラインドバンドの初のミニアルバム。終始一貫してスローなテンポで進み続ける楽曲を収録。スラムのように落とすパート、デスメタルのようにひたすら重いパートもありながら、ノれるグルーヴ感を常に内包したようなサウンドが特徴的。所謂パーティゴアとも親和性が高いが、独特の重圧感も兼ね備えた楽曲こそが彼らが標榜する「遅ゴア」の真髄である。

・Hemorrhoid “Raw Materials Of Decay”

ポートランド出身、来日経験もあるNekro Drunkzのメンバーが参加しているバンド。OSDM影響下のステンチなサウンドが特徴的なデス/ゴアグラインド。疾走感溢れる心地よいブラストが耳に残るが、やはりNekro Drunkzの影響もあるのかミドルテンポのノれるパートも多い。昨今広く謳われているOSDMとゴアグラインドの親密度がさらに深まるきっかけとなる作品と言えるだろう。

・Organ Failure “Assisted Anatomical Butchery”

1stアルバムも本当に素晴らしかったシカゴ出身4人組バンドの最新作。まず耳に飛び込んでくるゴアグラインド好きなら全員大歓喜するであろう音作り、そして90年代中盤ごろのゴアグラインドの魅力をたっぷりと含ませた楽曲とまさしく今回も完璧に作り上げてきたなと思わせる作品。今作は医療テーマになっているがパソロジカルゴア的なメタルアプローチはあまりなく、むしろよりグラインドを前面に出し全てをぐちゃどろに粉砕するような作風になっている。

・Posthumous Regurgitation “The Coroner's Guide To Cadaveric Cuisine”

過去作も大好評なポートランド出身ゴアグラインドの1stアルバム。こちらは不穏なギターリフや喉を掻っ切るようなシャウトなども組み込まれたオールドスクールデス/ゴアグラインド。彼らのようにブレることなく80年後半~90年前半のデスメタル/ゴアグラインド崇拝系サウンドを鳴らし続けるバンドが存在するのも現行シーンのおもしろいところである。OSDM独特の腐敗臭と堅固なブラストが好きな方には特にオススメ。

・Trocar “Extremities”

Fluidsメンバーが参加するインダストリアルサイバーグラインドプロジェクト。言うならば「Catasexual Urge Motivationをスピードアップさせた」、「Agoraphobic Nosebleedがデスメタルをやっている」ようなサイバーデス/ゴアグラインド。ピッチシフターヴォーカルやギターの音などゴアっぽいところも多いが、公式紹介文にもあるようにCattle Decapitationのようなブッ飛び感も感じられる。

・Viscera Infest “Teratoma”

今や大分県から世界に羽ばたくハイスピードゴアViscera Infestの最新作。本作でも余すことなく音速ブラストが導入されているが途中ミドルテンポなども挟み込まれており、それらの緩急の付け方が非常に洗練されている。彼らの影響元でもあるDisgorge (Mex) なども利用している手法ではあるが、まさにViscera Infest流といえる卓越したスピードコントロールは今後も多くの人々を魅了し続けるだろう。また曲間のややカルトなSEも聴き応えアリ。

・Oxidised Razor “Stench, Putrefaction And Death”

今年奇跡の来日を果たし、すべての公演で観客の心を鷲掴みにしたOxidised Razorの新アルバム。前作は非常に小綺麗な仕上がりになっておりありがたいやら物足りないやらという感じだったが、本作は聴きやすさは残しつつも唸るような低音、地下室のような雰囲気のサウンドなどメキシコらしいブルータルさも残した作品になっている。新曲ももちろんだが過去曲の新録やアレンジヴァージョンが収録されているのもファンとしては非常に嬉しい。

・Septage “Septic Worship (Intolerant Spree of Infesting Forms)”

デンマークはコペンハーゲン出身デス/グラインド3人組バンドの1stアルバム。このバンドもOSDMとゴアグラインドの間で揺れ動くようなサウンドで知られているが、本作はもう完全にゴアグラインドになったと言っていいんじゃないかというほどのザ・ゴアグラインドな出来栄えの一枚。もしCarcassが1stの音楽性を保ちつつ現代まで活動し続けていたとしたら、まさにこのアルバムのような世界観になっていただろう。

・Expired “Exquisite Display Of Expired Human Remains”

ロサンゼルス出身、数々のゴア/ブルデスプロジェクトで活動するCorey氏によるワンマンゴアグラインド。Regurgitate等90年代中~後半のゴアの影響が感じられ、演奏は安定しているが古き良きゴアグラインド特有のちょっとしたヤケクソ感というか、衝動のままがむしゃらに駆け抜ける感じも併せて表現されている。ドラムも含めて一人で全ての楽器を担当しており、バンドの雰囲気作りも含めてかなりのエキスパートであることが窺える。

・Biocyst “Advanced Surgical Techniques & Diagnosis”

昨年Anal Birthの新譜をリリースしまさかの復活を遂げたカルトレーベルKlysma Records。そして今年そのKlysma Recordsを運営するMarc Palmen氏 (ex. LDOH) によるプロジェクトBiocystの新譜がこれまたまさかのリリース。彼の代名詞とも言える冗長なSE、やり過ぎなほどのマシンブラスト、下水道ヴォーカルが次々と押し寄せるこれぞゴアノイズな作品。しかしミドルテンポなパートも組み込まれており、1曲1曲が作品として成り立っているのでゴアノイズを敬遠しがちな人でも意外と聴けそうな一枚になっている。

・Haggus “Three Cadavers, Two Corpses And A Carcass”

近年US中心に絶大な盛り上がりを見せているミンスゴア、そしてその元祖とも言われるHaggusの新作がまさかのパワーヴァイオレンスの名門Tankcrimesからリリース。血が滾るような荒々しい演奏、ゲロゲロなヴォーカル、程よいグルーヴ感とクラシックなミンスゴアのパターンに則りつつ、クセになるオールドスクールなギターソロなども織り交ぜ、よりゴアグラインドらしさを表した作品。

・Gut Explosion “Happy Gut Day”

都内を中心に活動する日本で今最も活発なパーティゴアバンドによる1stアルバム。ミドルテンポに豚声ヴォーカルとグルーヴィゴア愛が炸裂した楽曲を基軸に、もはや単なるGutalax影響下バンドとは呼べなくなった各パートの多様なフレーズやアレンジが詰まった作品。本能の赴くままに踊れるライブパフォーマンスも魅力的だが、実は洗練された楽曲をじっくり聴くことができるのが音源の醍醐味である。

・Cadaver Descompuesto “The Vile Aroma Of Murder”

コロンビア出身ゴアグラインドデュオのデビュー作。おそらく打ち込みだが生っぽいドラムと溺死寸前のヴォーカルが特徴的で、ミドルテンポなどやや遅い曲調をベースに時折爆速なブラストも挟まれている。ノリは良いが南米特有の治安が悪そうな雰囲気も漂っている。何よりもまるで大浴場にいるかのようにリバーブがかかったサウンドが特徴的で、底知れない不気味さを演出している。

・Flax “Carnage Craft”

イギリス出身、現地のデスメタルバンドでも活動するTom氏によるワンマンゴアグラインド。スラッシュ系のギターリフが奏でられる中、ミドルテンポ、爆速ブラスト、そしてスラムパートといった様々な展開が次々と押し寄せる、こちらもまた技巧派のワンマンプロジェクト。オールドスクールな作風だが分類するとしたらグルーヴィゴアに入りそうなノリを重視した楽曲が特徴的で、その手の名門であるRotten Roll Rexからリリースされているのも納得できる作品。

・Gist “A Postmortem Diagnosis Of Malignant Submucosal Tumors”

日本出身との噂もある謎の人物Dr. TeratomaによるGist (Gastrointestinal Stromal Tumor​) のデビュー作。Lymphatic Phlegmからの影響を全身全霊で表現しているが、ギターリフは本家と比べるとメロディックさはやや抑え目で、デスメタルに寄っているような印象が持たれる。チープな電子音が入っているのもおもしろい。このようなパソロジカルゴアはいくつか聴いてきたが、どれも不穏なギターリフとビシャビシャなゴアヴォーカルがなかなかにマッチしているのがとても不思議である。

・Carnal Diafragma “The Garden Of Earthly Delights”

チェコポルノゴアの大ベテラン、Carnal Diafragmaの新アルバム。ザ・ポルノゴアだった過去作と比べるとメロディックなギターリフが挿入されたことでクラシックなデス/グラインド寄りのスタイルになっているが、それにより踊れるパートと聴かせるパートのメリハリがとても心地よい作品になっている。チェコグラインド特有のブルータルなエッセンスも健在で、ひたすらどっしりとヘヴィなサウンドで邁進する。

・Ustel “Cadaveric Extirpations and Putrefaction Eaters”

Hydroceleでもお馴染みk1r2ch8t7v率いるロシア出身ゴアグラインド。彼の参加するバンドでは欠かせない高音スネアブラスト&極悪ゴアヴォーカルをこれでもかというほどにアピールし、まさに聴き手の脳を直接刺激するかのような音が鳴り響く作品。1分未満の楽曲を乱射するかの如く次々と繰り広げており、とにかくゴアグラインドを聴いて気持ち良くなりたい時には打って付けのアルバムである。

・Septic Vomet “Real Life Insanity”

ドイツ出身、Mindflair、Negativ Null等のメンバー擁するゴアグラインドの1stアルバムがハードコア/グラインドの超一流レーベルRSRからリリース。王道グラインドコアwithゴアエッセンスな楽曲が目白押しの作品で、ストップ&ゴーなどを駆使しながら畳み掛けるように曲が続いていく。生声低音ヴォーカルとゴアヴォーカルが同時に聴こえるのもなかなか味があり、グラインドコア好きなら終始テンション上がりっぱなしの一枚になるだろう。

・Cobblestoning “Pathognomonic Granuloma Formation, Macroscopically Abnormal Hyperemia and Edema of the Involved Mucosa”

イギリス出身、デュオゴアグラインド。メンバーはMortuary Spawn等でも活動中。こちらも基本的にファスト&ショートカットな楽曲で突き進んでいくスタイルだが、時折挟まれるビートダウンパートや矢継ぎ早に繰り出されるヴォーカルなどから若干ハードコアっぽい雰囲気も感じられる。スピード感溢れるドラムはパッと聴いた感じだと生ドラムっぽいが、その辺りの詳しい事情は不明。

・Roachwhore “Tripping On Roach Fumes”

テネシー州出身、3人組ゴアグラインド。ノリの良いゴアグラインドにインダストリアルな打ち込みドラムフレーズが挿入される、珍しいスタイルのサイバーゴアグラインド。もはやエフェクト掛けすぎなほどの下水道ヴォーカルも特徴的で、ゴアノイズ的な野蛮さとエレクトロによるオシャレさが絶妙なバランスで両立した作品になっている。現在はすでに活動停止しており、メンバーはパワーヴァイオレンス、デスメタルの分野で活動中。


番外編 ゴアグラインドじゃないやつ

・Frail Body “Artificial Bouquet”

個人的には昨年奇跡的な出会いを果たしたエモヴァイオレンスバンドが、これまたタイミングよく新アルバムをリリース。言わば王道の近代激情ハードコア的だった過去作と比べて、本作ではポストブラックメタルの要素が強く表れている。クリーンギターやヴォーカルなどにおいてポストブラック独特の物悲しさが付加され、ひたすら突っ走るパートとゆったりとメロディーを奏でるパート双方において楽曲をより豊かに彩っている。来年初頭には来日公演も決まっており、まさに美しさも感じられる彼らの楽曲を聴けるのが非常に待ち遠しい。

・Neck Breather “Set”

ボルチモア出身パワーヴァイオレンス。今年聴いたパワーヴァイオレンスの中では個人的ベスト1作品。現代風の聴きやすくこざっぱりとしたサウンドだがパワーヴァイオレンスの鉄則にはしっかり則っており、テンポを落とす場面などにおいて欲しいところに欲しい展開をキチッと当てはめてくれる、古き良きパワーヴァイオレンスの伝承者的存在。2010年代以降のハードコアやニュースクール系好きにも刺さりそうなフレーズもあるので、今後さらに人気を博していきそうなバンドである。

・Vilmort “Demo III”

2023年に発表された“雌犬の息子たち”デモが話題沸騰となったスペイン出身グラインドコア。低く唸るようなヴォーカルと圧倒的スピード感を誇るドラムで底知れぬ威圧感と疾走感を醸し出しているグラインド。Dビートやハードコア直系のギターリフなどクラストコアっぽい要素も含まれており、90年代前半の元祖ファスト/グラインドコアが好きな人にもピッタリな作品。

・Final Exit “Born In Hell”

全世界で大人気、ノイズの若大将ことFinal Exitの待望のアルバム。ロック、ブルース、カントリー、パンク、メタルなど様々な楽曲を紡ぎ出し (なんとゴアグラインドも…?) 、数秒後にはそれらを全て破壊し尽くす、まさに創造と破壊のノイズグラインド。作り方の数だけ壊し方も存在し、たっぷり楽しめる全40曲。もはやオールジャンルのオムニバスを聴いているかのような作品になっているのはまさにFinal Exitだからこそができる神業。

・Ego Fix “Time Travel Ov Maggot's Dream”

90年代に短期間ながらもその名を轟かせ、2021年に期間限定の復活を遂げたEgo Fixのラストアルバム。まさに90年代の空気をそのまま持ってきたような楽曲のオンパレードで、現代の作品でありながらグラインドコアの伝統を体現した歴史的価値すらもある作品。過去曲に加えて復活後に製作された新曲も収録されているが、最後までブレずに王道グラインドコアを追求し続けた姿勢にはただただ脱帽するばかりである。伝説と謳われたバンドが再始動する機会が増える中、終わり方までも美しくキメるバンドこそが真の伝説と言えるのではないだろうか。


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