30年目の宮崎映画祭(その2)
2024年11月2日(土)より開催される第30回宮崎映画祭。今回はその見どころを書いていこうという試みの第二回目です。
前回のnoteでは見どころを三つに絞って、一つ目の見どころである「金のはにわ賞」について書きました。たまたま今この本文を、交通事故のような確率で眼にされた方で、「まぁ金のはにわ、これなんでしょうね」とご興味が涌いた方はさかのぼってご一読いただければご幸甚です。
さて二つ目の見どころは「黒沢清の映画塾」。
宮崎映画祭ではもはや恒例ともいえる、映画監督・黒沢清氏による縦横無尽、自由闊達な映画塾。今回は11月3日と4日の二日間で、三講に分けて実施いたします。
黒沢清監督について少々ご説明しておきましょう。ウィキペディアによれば以下のようになっております(少々省略し編集しております)
* * * * * * * * * * * * 黒沢清(1955年~)は、日本の映画監督、脚本家。
神戸市に生まれ。六甲学院高等学校卒業。大学在学中より8ミリ映画の制作をはじめる。1980年立教大学社会学部産業関係学科卒業。立教大学では、自主映画製作集団「パロディアス・ユニティ」に所属、同サークルには森達也や塩田明彦らがいた。蓮實重彦の「映画表現論」を受講し強い影響を受ける。
1981年に8ミリ映画『しがらみ学園』が第4回ぴあフィルムフェスティバルに入選。雑誌『GORO』の対談で出会い知遇を得た長谷川和彦から声をかけられ、『太陽を盗んだ男』に制作助手として参加。1981年には相米慎二監督の『セーラー服と機関銃』に助監督として参加。その流れから、ディレクターズ・カンパニーの設立に参加し、同社制作のピンク映画『神田川淫乱戦争』で1983年に映画デビュー。1984年にっかつロマンポルノ『女子大生・恥ずかしゼミナール』を撮影するが、にっかつ側が納品を拒否したため、追加撮影を行い、『ドレミファ娘の血は騒ぐ』と改題して1985年一般映画として公開した。
1989年に初のメジャー作品となる『スウィートホーム』が公開。その後の1990年代はテレビドラマとVシネマを中心に活動する。
1997年『CURE』が東京国際映画祭のコンペ部門に出品され、主演の役所広司が男優賞を受賞。同作がフランスの日本映画特集やオランダのロッテルダム映画祭など海外でも紹介され、国際的な注目を集める。1999年にはサンダンス・インスティテュートのスカラシップを獲得した脚本を基に監督した『カリスマ』が第52回カンヌ国際映画祭の監督週間部門に選出。同年『ニンゲン合格』が第49回ベルリン国際映画祭に、『大いなる幻影』がヴェネツィア国際映画祭に出品され、1年のうちに世界三大映画祭全てに監督作品が出品された。
2001年『回路』が第54回カンヌ国際映画祭のある視点部門で国際映画批評家連盟賞を受賞。2003年には『アカルイミライ』で同映画祭のコンペティション部門出品を果たす。『ドッペルゲンガー』、『LOFT ロフト』、『叫』など、コンスタントに監督作品を発表する。2008年連続テレビドラマ『贖罪』を、2013年『リアル〜完全なる首長竜の日〜』を発表。同年『Seventh Code』で第8回ローマ映画祭最優秀監督賞を受賞する。
2015年『岸辺の旅』が第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門監督賞を受賞、同年第33回川喜多賞を受賞した。2016年には初めて手掛けた海外作品『ダゲレオタイプの女』(原題:La Femme de la Plaque Argentique)が公開され、第29回東京国際映画祭・SAMURAI賞、第58回毎日芸術賞を受賞した。2018年『散歩する侵略者』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した。2020年には『スパイの妻〈劇場版〉』が第77回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞。2021年紫綬褒章、2024年フランスより芸術文化勲章オフィシエ受賞。
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ウィキペデアの略歴でさえ、それも省略してさえ、この分量になりますが、この略歴から辛うじて分かるのは、80年代以降の映画監督でこれほど多作な監督はいないということでしょうか。しかもその作品群の多様性ときたら! しかもその多様性はいわゆる映画のジャンルだけに留まりません。その制作の形態、作品の発表の仕方までは多様性に富んでいるのです。
80年代は、その時代の多くの映画監督がそうであるようにロマンポルノからスタートするものの、比較的予算の大きい館のもののホラーからワンシチュエーションのホラー、オリジナルヴィデオ、テレビ(「秘密のくまさんパンツ」【『ワタナベ』という連続物の一編】なる題名の作品まで!)、連続ドラマ、海外資本による映画、ミュージックヴィデオ、配信ドラマ。その中でホラー、アクション、コメディ、人間ドラマ、サスペンス等々。恐ろしいほどのバイタリティというべきでしょうか。
ご自身は自分のことを「職人監督」と称されますが、その職人監督として黒沢清監督が、なんと2024年は三作も発表されました。それらの作品を踏まえながらの映画塾を行います。
まずは11月3日(日)17:45から「黒沢清の映画塾 第一夜」と題してご自身の作品を「SECRET作品」として上映いたします。もっとも勘の良い人は何を上映するか、気付いているかもしれませんね。ただ「大人の諸事情」で作品名を公表することはできません。ご寛恕願います。
この「第一夜」では、先日宮崎キネマ館で公開された『Chime』の上映の際に募集した黒沢監督への質問をここでお尋ねしたいと考えています。是非、ご期待ください。
「黒沢清の映画塾 第二夜」は翌日11月4日(月、祝)の11:45より(夜ではありませんが)。上映作品はリチャード・フライシャー監督作品『札束無情』。「職人監督」としての矜持は、恐らくこのリチャード・フライシャーの作品や演出、そして人生から知遇を得ているのだろうと私どもは考えています。数多くの作品を発表したフライシャー映画の中でも、黒沢監督が最高傑作といて称揚される作品がこの『札束無情』。東京以外の映画館で映っているのを観たことがないので、宮崎の映画好きは勿論ですが、是非とも県外の方々もお越しいただきたい、今年の宮崎映画祭の目玉の一つです。なお本作品の上映には渋谷シネヴェーラさまのご協力を頂戴いたしました。この場をお借りしてお礼を申し上げます。また、この上映に関しても少し考えていることがあるのですが…。
そして最新作の一つである『蛇の道』(2024)が「黒沢清の映画塾 第三夜」となります。上映は11月4日(月、祝)14:15より。『札束無情』に続いての上映です。ご存じの方はご存じでしょうが、1998年哀川翔主演の『蛇の道』をフランスでリメイクしたサスペンス映画の傑作です。本作の制作過程やフランスでのコミュニケーション、そして役者についてなどを聞いてみたいと現時点では思っていますが、この回は観客の方々の質問時間を多めにとりたいと考えています。ご覧になってない方はもちろん、一度ご覧になった方々に是非もう一度ご覧いただきたい作品です。余談ではございますが、前回、黒沢清監督にお越しいただいた第27回宮崎映画祭の際には98年『蛇の道』(他にもその続編的性格を持つ『蜘蛛の瞳』と『地獄の警備員』でした、自画自賛したい作品の選択です‐笑‐)を35mmフィルムで上映しておりますので、ぞの時ご覧になられた方は是非ご参加いただきたい上映機会です。
第30回宮崎映画祭の二つ目の見どころについて書きました。次週は三つ目…、かな。これらの作品について書きます。さてなんだ?
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