ドイツ歌曲の話 詩人の恋 Dichterliebe #15 彼女が歌っていた歌は
ト短調、4分2拍子。
ここまでアルペジオといえば1曲目といい、5曲目といい、上行型であったのに、ここで初めて下降型のアルペジオ。そしてそのトップの音を繋ぐと歌い出しのメロディーと同じになる。
だから詩人の言う「彼女が歌っていた歌」というのはきっとそのメロディーだったんでしょう。それを前奏で聞いて、自分も同じメロディを口ずさんでみる。
その後も調を変え、また形を変えそのメロディーはピアノにも歌にも現れる。青のライン。
最後の「とてつもない大きな悲しみ」と言う言葉を表すのにもやはりそのメロディーが。「とてつもない大きな悲しみ」というのにはあまりにも慎ましやかな音楽。しかしその途切れたメロディーはピアノに受け継がれ、細かいシンコペーションでこみ上げる嗚咽となり、泣き崩れる。
歌い手としては「とてつもない....」で劇的な表現がしたくてもさせてもらえず、続きはWEBで、ならぬ「続きは後奏で」な曲といえるでしょう。その分うんと内的な表現を。
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