前の曲の下属調のホ長調。明るい調です。
八分の六拍子。Lebendig (生き生きと)
詩といい、調の変遷といい、狂っとる(笑)
昔、ドイツ語の先生(ドイツ人)がおっしゃってたことを思い出します。好奇心でマリファナを吸ってみた時の話です。青や赤の光がチカチカしただの、ぐるぐる回っただの、ちょうどこの詩のような感じ。
だから、これは夢なのか、ヤク中なのか、と思ってしまいます。いずれにせよ普通ではない詩には、普通ではない曲が似合いますね。
私、この白い手というのがどうにも引っかかってしまって。なんだろう、この白い手。乙女の美しい白い手だろうか、それとも、と考えていたのですが、最終的に「イメージ・シンボル辞典」などを調べて、「死者の手」かな、と(自分の中では)結論づけました。
この、13,14,15は「夢三部作」と言えると思いますが、13では「墓」、14では糸杉。ならばこの15番目で「死者の手」が出てくると死を連想させる言葉でつながるなと。
終曲で、詩人は自殺した、という人がいるのもそういうところからでしょう。たしかに夢の中では死に取り憑かれています。
二連から、六連まではピリオドで詩を終わらせることなく、ひたすらその「魔法の国」の様子を息もつかずに描写しています。
und (英語のand)の多さよ。
そしてなんとかだ、そしてなんとかだ、と、ひたすら繋げる。
大騒ぎの音楽のあと、突然
mit innigster Empfindung
シューマンの楽譜にはよく速度表示ではない指定が出てきます。
特に”innig”(心からの、切なる、親密な、愛情のこもった)
ここではその最上級、innigsterを使って「心の底からの感情をもって」と言えばいいでしょうか。
これまで、引き裂かれたり(8曲目)真っ二つになったり(11曲目)した詩人の心はこの夢の中で救われるのです。
ここからのピアノは讃美歌というか、国歌のようなたたずまい。オルガンの音が聞こえてきそう。でもその国は結局は詩人の心が生み出したもの。
そしてそれは夢だから….
朝が来れば泡となって消えてしまう。
後奏は二度寝でも試みたか、一瞬あの景色がよみがえって….でもやはり目が覚めて諦観の世界へ。そして終曲へ。