さて、「僕は恨まない」の後は恨み節が続く。
前の曲で力強くハ長調で終わっておいて、この曲はイ短調。(私は残念ながら嬰へ短調)
わずか4分の1拍の前奏(前奏と言わないか)。この不安定さ。
東京で歌った時は前曲とこの曲との間に少し時間を置いたのだが、今回はほぼアタッカで。それによって前曲の強がってみせていた世界から、一気に自己憐憫の世界へなだれ込んでみたいと思う。
なぜ前回は間を開けたかというと、やはり移調しているため、原調で聴き慣れている人は違和感を感じるかな、と思ったので。嬰へ短調は少しハ長調とは遠い調。でも、今回はアタッカにすることで、あえて異世界に吹き飛ばされたように感じていただきたい。私もそう感じて歌っている。
四番まである有節歌曲と考えることが出来るが、四番は一瞬同主調に転調する。イ短調からイ長調へ。一瞬でも希望を見つけたいかのように。
しかし最後は
「彼女は僕の心を引き裂いた」
厳しくイ短調で終わる前に一瞬ナポリの六の和音。それがどうしようもない絶望を感じさせる。その後には引き裂かれた心を表すかのような、長い激しい後奏。