某漫画家の自死から見えたこと
私は残念ながら、今回の騒動に関するドラマも見ていないし、まして原作の漫画も見たことがない。
しかしながら、一連の動きを見る中で非常に興味深く、また人間の業ともいえようか、様々な攻撃が見られる。そこで私の所見を以下に記す。
なお、私が考えるに本件の最大の問題は契約の問題であって、これは双方に落ち度があるといえる。結果的にこの仕打ちに繋がっていると考える。
まず今回の問題の遠因かつ最大の問題と言えるのが、(考えるに)多重構造の契約体制である。つまり、原作者、出版社間の契約に、(代理店を通した?)テレビ局、製作サイドとの契約の3者契約だ。
出版社は原作者から委託を受けるとともに、その権限を行使できうる一定程度の権力を有した契約構造になっていると思われる。これは自然発生的かつ、慣例である。編集権を持ち、校正することでより売れるようにするだけではなく、価格、増刷数を決定し、売上までコントロールする。
つまり、原作者は出版社に対して、排他的使用を認める一方で、その内容については双方で協議するということだ。
ここで、何らかの齟齬があった可能性も否定できない。しかし、これは一般企業を取ってみれば分かる通り、原作者と編集者は密接につながるだろうが、対外的なドラマなどの依頼を受ける部局と編集の部局が密接であるとは必ずしも言えない。無論、どちらの担当者も会議の場にはいるだろうが。
(さて代理店については想像されていると思うが、これを通してテレビ局と)テレビ局は製作サイドとそれぞれ契約を結び、ドラマ化する。
つまり、実質的には出版社、テレビ局、製作サイドの3社間で話が進むということである。この構造では、当然原作者の意向は末端の製作側まで伝わることはないであろうといえる。
それはそうで、テレビ局は製作したものを放映する、それによる広告収入を目指すことが本懐であり、製作側は依頼のあった作品の映像化に際し、テレビ局の意図を汲みつつ"製作する"ことが重要であって、原作者の意図に沿ったものかどうかは二の次となるからだ。
これらの三社間に原作者が介在したかは不明だが、結果的に本人の意志とは無関係な脚本が登場し、修正不可のレベルにまで達した。ゆえに原作者が脚本を書き、それが脚本家にとって面白くなかった、その旨を投稿した、結果的に自死の近因となった。と考えている。
それ故に漫画協会も契約の巻き取り方をレクチャーする、という声明を出したのだろうと考える。
もし上記のことが正しいとするならば、この一件は悲しいながらも三社とも被害者という意識が生まれるだろう。多大なる迷惑を被った故に、各々の終始煮えきらないコメントに徹するばかりになるわけだ。
(2024/02/05追記)
この論を補強する記事が、noteにて公開された。
権利構造上の問題を解決しない限り、この論はいつまでも終わることはないだろうと考える。脚本家云々というのは申し訳ないが、些末な問題であって、最大の問題はやはり契約、それによって生じる権利関係の問題である。(追記ここまで)
ここで私が指摘したいのは、人間の業とも言える攻撃、と先述した通りのことである。
多重契約構造、原作者の意図の無視、脚本家の呪詛、原作者のX投稿(事実の投稿)、それによる炎上、自死、さらなる炎上。
原作者のXの投稿、ブログの投稿を見るに出演タレント、製作側にも感謝の意を述べ、こういう事実がありました、見るに耐えないものであったらすみません、という意見であるように思う。
それをXユーザは拡大解釈し、脚本家が~の論になり、呪詛が見つかったのも相まってか、批判色を強め。攻撃の意図はなかったと原作者が投稿したところで後の祭り、居た堪れなくなってしまったのが実際のところだろう。なぜなら、事実を列挙しただけとはいえ、結果的には脚本家の呪詛と同じ構造になってしまったから。
ではどうしたら良かったのか、ということは全く以て議論に値しないことである。事実は不変であるから。
私があえて言うなら、苦しいとかつらいとか、周辺産業の方々がコメントをするのは別に良いだろうし、ファンが残念と思う気持ち、許せないと思う気持ちも良いと思う。
しかし、それを超えた犯人探しをしたところで、また誰かがさらに詰め腹を切ったところで収まる話でもない。批判する人間は何をしても批判する。炎上に加担した人間すべてが原作者を死に追い立てた犯罪者だ。
寛容の精神を持てとか、許しが大事とか、そういうきれいな言葉ではない。
無論、死に追い立てたくなるほどの怒りを感じる気持ちも分からなくはないが、そこで行動を起こしてしまえば、同じ穴の狢だ。原作者だけでなく、さらに誰かの新たな自死を産んだら、間接的殺人である。今一度、冷静に考えてみてはどうだろうか。
と書いても、揚げ足取りでまた新たな争いを生み。戦争が起きた、東京日日新聞が書き煽ったのと同じ。全く進歩がないのだから、この国が弱体化していくのは尤もらしい。
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