良いものは長く続かない
日本語でも「メリークリスマス」という言葉でおなじみのmerryという形容詞ですが、それ単体では「良い、好い」といった意味を表します。この単語の語源を調べてみると、意外と深い意味があるようです。
merryは*mregh-u-から
印欧祖語に遡ると、merryの語源は*mregh-u-という印欧祖語の語幹にあるようです。共通の語源を持つ語としては、似たような意味を持つmirthがありますが、その他はbriefやabbreviationといった「短い」という意味を持つ語や腕を意味する語根のbrachio-があるなどいまいち共通点が見られません。
前足は短い
brachio-は腕を意味する語根ですが、ブラキオサウルスといえば首の長い恐竜です。この恐竜を名付けた学者はブラキオサウルスの腕(前足)が後ろ足よりも長いことを特筆すべき点として名付けに使用しましたが、首が長いことはそれほど特徴的なことではないのでしょうか。このあたりは調べてもあまり参考になりそうなものが出てきません。
何はともあれbrachio-は腕を表すのですが、先述したように*mregh-u-に由来します。この*mregh-u-は「短い」を意味する語幹なのですが、腕は脚よりも短いことに由来するようです。腕は四肢のうち脚よりも短い物と定義したのですね。そんな本来短いものであるはずのbrachio-が後ろ足よりも長い恐竜がブラキオサウルスと名付けられたのはかなり特徴を捉えた命名なのかもしれません。
光陰矢の如し
話はmerryに戻りますが、*mregh-u-の意味は「短い」でした。既にお察しの方も多いでしょうが、楽しい時間はあっという間に感じるというのは人類共通の感覚のようです。良い時間ほど短く感じることからmerryが「良い」という意味を持つようになったようです。
参考
Online Etymology Dictionary, "merry (adj.)"
https://www.etymonline.com/word/merry?ref=etymonline_crossreference
Online Etymology Dictionary, "*mregh-u-"
https://www.etymonline.com/word/*mregh-u-?ref=etymonline_crossreference