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息子のサイン

数年前に毎日新聞 朝刊「女の気持ち」に掲載された寄稿文です。(noteへの今更の掲載ですが、パンデミック下での息子との生活の思い出(記録)として、載せています)

息子は1歳3カ月になり、身振り手振りでの意思表示が増えてきた。散歩をしたいときは抱っこひもを持ってきて私に抱きつき、出かけたいとアピールする。予期せぬタイミングでの要求には困ることもあるが、愛らしいしぐさに負け、近場の公園などに行くのが日課となっている。

先日、洗濯物をたたんでいると、息子が洗濯物の山から布マスクを取り出し、渡してきた。遊んでほしいのかと思い、マスクを着けておどけてみたり、息子につけてみたりしたものの、何だか納得していない様子。そして再び私がマスクをすると、抱きついてきた。そう、これは出かけたいという新しいサインだった。外出時に私がマスクをつけていることを、すでに息子はしっかり覚えていたのだ。1歳の子どもに「外出イコールマスク」の認識を植え付けた新型コロナウイルスの影響の大きさを、改めて実感した。同時に、自分が子どものころはマスクをせず外を走り回れたのに、違う世の中になってしまったのかと寂しい気持ちにもなった。

いつ、もとの世界に戻れるのか。もう戻れないのだろうか。嘆いても仕方がなく、その間にも息子は日々成長していく。制限のある中でも、できるだけ多くのことを体験させ、いろいろなものを見せてあげたい。世界は広く、未来は明るいと教えてあげたい。新時代の母親として何ができるのか、考える毎日である。

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