【MeWSS論文コラム】 IntroductionとDiscussionの関係、参考文献のこと

 IntroductionとDiscussionは過去のコラムでそれぞれ個別に取り上げました。Outlineを書く時、これらを対比させながら同時に進めていくと書きやすいので、今回はその関係性からまとめてみます。

 Introductionは次の構成で成り立ちます。
(A) 背景 (B) しかし (C) なぜ (D) 本研究の目的

(A)  背景:罹患率、標準治療といった現状について、ガイドラインなどを引用して状況を説明します。投稿する雑誌によって、どこまで”知らない”読者を想定するか考えましょう。本論文に関連する疫学情報についても追加します(日本人のみ、高齢者など特定の患者層が対象ならそれに関連するデータを加えた方がいいでしょう)。

(B)  しかし:「しかし、まだこれが分かっていない」という段落が必ずここに入ります。例えば本論文が治療に関わるのなら、現在の治療で足りないところを書きます(再発があるとか、長期フォローアップの情報が少ないとか)。同じ問題意識を持った総説などがあれば引用するといいでしょう。ここから直接次の(C)につながります。

(C)  なぜ:(B)から続きます ー「(B)という問題があるのでこの研究を実施した。」

(D) 目的:研究目的を明確に書きます。


Discussion
(1)  主な結果の概要 (2)  似たような研究との比較 (3)  (1) 以外で見えた事実についての考察 (4) Limitation (5) まとめ

(1) 主な結果の概要:これは(D)と対応させて、目的として設定した問題に対する答を書きます。結果の章で示した数値を繰り返すことは推奨されていないので、言葉で言い換えて端的に「見たいことが見られたのか」分かりやすく書きましょう。

(2)  似たような研究との比較:これは(1) とペアになります。研究目的ーその結果ーそれに関連した他研究の結果との比較 という流れです。そのほかのことをここに入れてしまうと読者が混乱しますので、流れを重視して(1)に関連した論点について比較考察しましょう。

(3)  (1) 以外で見えた事実についての考察: ここは比較的自由に書けるところです。主な結果についての考察は終えていますので、そのほかに言っておきたいことをご自由にどうぞ。他研究と患者バックグランドが違うのであればそれを詳しく述べてもいいですし、主目的以外の部分で想定外のことが見えたのであればそれを考察してもいいでしょう。メカニズムに関する考察は、主目的に関連するのであれば(2)に続けた方がいいですが、長くなったり少し論点の方向が違っている場合は、後ろの方に独立させた方が読みやすいかもしれません。自説を述べるのは自由ですが、今回行われた研究から言える以外の内容にまで踏み込むことはできません(総説論文ではないので)。

(4) Limitation:大切な段落なので、よく考えて思いつく限り挙げてください。 

(5) まとめ:これは英語で言うとConclusionなので、主に(D)-(1)と関連させた内容になります。(1)の繰り返しになるので、個人的にはあまり必要だとは思えない項目なのですが、ガイドラインでも推奨しているので省略することはできないでしょう。(1)をもっと簡略化してひとこと自分の主張を入れる程度にするのが一般的ですが、その他の強調したい結果を付け加えることもできます。

 さて、参考文献はどのように扱ったらいいでしょうか。
 Introductionでは文献数を必要最小限にしておいて、総説やガイドラインを入れてもOK、Discussionでは原著論文を漏れなく、というのが基本的考え方です。
 Introductionで総説を引用するときは、Narrative reviewは避けてSystematic review、Meta-analysisを中心にしましょう。総説は似たようなものを複数引用せずに、最新のガイドラインを中心にして、ガイドラインで扱われていない内容についてはSystematic reviewを引用します。総説で取り上げられていない最新情報は原著論文を引用しますが、本論文に関係あるものに絞ってください。
 Discussionで必要な引用文献は原著論文です。薬剤や検査法の比較などがテーマである場合はMeta-analysisは必ず入れなくてはなりません。特に他研究との比較では網羅的に文献検索し、本論文と同じような結果が出ているもの、異なるもの、それぞれまとめて論じてください。