【MeWSS論文コラム】観察研究論文の進め方 その2
「その1」では、Discussionの最も主張したいところまで書きました。次は、Discussionの続きとIntroductionの作成です。著者や研究実施者の考えや言いたいことを表現できる部分になります。
(4)Discussionの骨子:Discussionの書き方については、近いうちにもっと詳しく説明する予定なので、ここでは骨子の考え方をご紹介します。
Discussionには推奨される構成があります。まずはこれに従って骨子を作ってしまいましょう。
最初の段落には目的に対応した結果の概要を書きます。何か仮説をたてたのなら、その検証の結論を書きましょう。ただし、結果で述べた数値をそのまま繰り返すことは推奨されていませんので、できる限り結果とは違う書き方、例えば文章で表現するなど、をする必要があります。
次にその主要な結果が、他の似たような先行研究の結果と比べてどうだったかを論じます。ここで文献検索して細かく書こうとすると、また作業が止まってしまうかもしれないので、私はこの段階ではメモ書き程度にしておいて、とりあえず骨子だけ完成してしまいます。
想定していたのと違う結果が見られた、他研究とは異なる傾向が出た場合などは、それについて詳しく「科学的に」「客観的に」論じます。この部分はDiscussionの多くを占めることになるかもしれません。
最後にlimitationです。重要なところなので、プロトコール作成の段階から、このデザインで何が言えて何が言えないのか、色々な方とディスカッションしたり、ご自分でも折に触れて考えておいていただくといいと思います。
時々誤解があるのですが、limitationの多い研究が劣っているわけではありません。むしろバイアスの可能性や研究の限界についてきちんと想定している論文の方が、よく考えられていると評価されます。
(5)Introductionに含むポイント:高IFの雑誌は短いIntroductionを好む傾向があり、私も個人的にはシンプルな方がいいと考えています。
研究で最も重要なのは目的です。研究の原著論文は、TitleーIntroductionーMethodsーResultsーDiscussionと一貫して、一つ(か複数)の「目的」を主軸として書かれていなくてはなりません。
Introductionはその「目的」を説明するための章で、それ以上でもそれ以下でもある必要がないのです。疫学データから始まり、疾患やそのマネージメントの現状や問題点などを述べる、という構成が多く見られますが、これも目的の説明に必要であるからこそ、です。つまり必ずしもこれらを全て含める必要はありませんし、投稿雑誌についても考慮する必要があります。疾患特異的な専門誌に、その疾患の一般的な説明や、全世界的な疫学情報は不要でしょう。
そのほか考慮すべきは、エディターや査読者、それに多くの読者がどのくらい日本医療の現状に知見があるか、という点です。研究が実施された施設の地理的位置づけや患者層などの説明が必要かもしれません。専門誌であっても、日本の疫学情報は入れた方がいい場合もあります。
「あまりよろしくないIntroduction」としてよく例に挙げられるのが、ミニレビュー(短い総説論文)になっている、です。バイアスを排除するためにも関連文献はできる限り網羅的に把握しておく必要がありますが、その内容を全て原著論文で紹介する必要はありません。最初に全文献をまとめた「自分レビュー(総説)」を作ってからその内容を咀嚼し、実際にIntroductionに書くのは目的の説明に必要なところだけ、としておくといいと思います。
さて、ここまででOutlineの骨格が出来上がりました。MethodsとResultsはSTROBEリストを埋めただけなので、これを箇条書きの形にして論文ドラフトのファイルにコピーしてください。項目名はまだそのままにした方がいいと思います。ドラフトは投稿雑誌のフォーマットに合わせますが、内容を固めるまでは、少なくともOutlineの段階までは、何が書いてあるか分かりやすい方がいいでしょう。
DiscussionとIntroductionはまだ空欄が多いかもしれませんが、同じドラフトに入れて、ファイルを一つに統合します。このファイルからOutlineを完成させていきます。次回のコラムではOutlineについて解説します。