【MeWSS論文コラム】 2025年巻頭言

 医学系ジャーナル年頭のEditorialや特集を見渡してみました。

Science
 査読システムの改変について述べていました。
Steady going in 2025
2 Jan 2025 Vol 387, Issue 6729 p. 7

https://www.science.org/doi/10.1126/science.adv4633

 無記名ボランティアである査読者に報いるため、ORCIDと連携して論文とは紐づけない形で、査読者の記録を残せるようにしたそうです。さらに査読者のトレーニングができるように、たとえば同じラボから補佐的な査読者を指名して査読に参加できるようにするということでした。画像の改竄や二重利用を見つけやすくするためのソフトウェアも導入したそうです。

Lancet 
Can we turn the tide on NCDs in 2025?
The Lancet, Volume 405, Issue 10472, 1

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(24)02845-9/fulltext

 心血管疾患、がん、慢性呼吸器疾患、糖尿病による早期死亡の割合を2025年までに25%削減するという、2011年に国連が宣言した目標(25X25ゴール)が全然達成できていないことについて、危機意識を持つことと行動への呼びかけです。

 
The Lancet, Volume 405, Issue 10473, 97

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(25)00036-4/fulltext

 COVID-19の記憶も薄れかけてきましたが、次のパンデミックへの備えはまだまだ十分ではなく、そのために昨年終わりから今年にかけて国際会議がいくつも実施されるそうです。
 感染症は、流行後の情報を整理して研究という形でいかに振り返るかが重要です。日本でも疫学情報も含めてもっと多くの研究成果が発表されてもいいと思っています。

JAMA
 Helsinki宣言の更新版に対する意見や解説が特集されました。
新しくなったHelsinki宣言では、研究に参加の健康ボランティアを"subject"とは呼ばずに、"participant"と呼ぶようにと明確に記述しており、研究参加ボランティアは共同研究者であるという位置付けをはっきりさせました。
World Medical Association. World Medical Association Declaration of Helsinki: Ethical Principles for Medical Research Involving Human Participants. JAMA. 2025;333(1):71–74. doi:10.1001/jama.2024.21972

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2825290

 10年以上前phase I試験の論文を書いた際、著者の一人から「Phase Iではsubjectと呼ばなくてはならない」と言われたことを思い出します。初めて聞く人間からすると、実験対象のようで違和感がありました。徐々に雑誌単位もしくは著者単位で呼称を変える人が増えてきましたが、やっと公に見直されました。

Nature Medicine 
 Helsinki宣言の更新については昨年12月にNature Medicineも取り上げており、同様に次の文章を引用しています。"Research participants are no longer ‘subjects’ but experts."
 これに加えNature Medicineでは、「無駄な研究」の言葉にも注目していました。“rigorous design” to avoid “research waste”。パワーが足りない(underpower)など貧弱なデザインの研究に人を参加させるのは、なんの利益にもならないばかりか有害にすらなる可能性がある、とかなり強い口調でCOVID-19の研究に500,000人も参加したことを事例にあげて解説していました。

 Helsinki宣言の公式サイトは下記です。