絣(かすり)の着物って何?紬(つむぎ)との違いや特徴・柄の種類を紹介!
(※この記事は以前こちらのサイトで掲載していたものを引っ越ししてきました。https://mewlifestyle271889071.com/)
絣とは何なのか?長年着物を愛でてきたのですが、「そーいえば、絣って何なんだろう?」という疑問を、いまさらながら持ちまして。紬ともごっちゃになっているので、一度整理してみようと思い、書いてみました。
絣とは?
絣とは着物を指すと思っている方も多いと思いますが、実は模様のことであり、織り方の手法のことなんです。織りで絵や柄を表現するために、織る前に糸を染め分けするところが特徴なんですよ。そして、織った後に染色したものは、絣とは認められません。
この名前のせいで私は、絣とはかすれた柄であると勘違いしていました。違った認識を持っており、大変失礼いたしました(笑)。
絣の多くは、頭に産地名を付けて「○○絣」と呼ぶことが多いのですが、それは日本が縦に長いので、雪深いところや暑いところによって、作る着物の特徴が変わるためです。素材には絹、木綿、麻があります。
絣の作り方とは?
織り糸を染めるときに、出来上がりの模様から計算して、染めたくないところを縛ったりまたは板で挟むなどして、染色できないようにします。デザインによって括る部分を計算するから、すごい技なんです。織る人も狂いなく、柄が出るように織っていきます。
そのため、柄が小さい&範囲が広くなるほどお値段が高くなっていくんですね。
染めたところに合わせて、柄を作りながら織り進めていきます。しかも手機(てばた)だと、1日に織れる長さはわずかです。着物に興味がない人にとっては、さぞ時代遅れに感じることでしょう。
しかし、着物ヲタクの私としては、そこにとてつもない価値を感じてしまうのです。とりわけ手織りで作られるものは、味わい深く、なかなか見ることができないという希少価値も手伝って、心がトキめいてしまうんですよ。
絣と紬の違いとは?
紬と混同されることが多いのですが、絣=柄、紬=生地を指しています。作り方で紹介したように、絣とは織る前に染めた絣糸を使った着物のことです。
有名な結城紬や大島紬にも、絣糸を使った柄が存在します。そのため混同されやすいことに加えて、制作者が生地(紬)にこだわったか、柄(絣)にこだわったかで、表示ラベルに書かれる内容が違ってくるのです。
絣でもあり、紬でもある着物が存在するため、分からなくなってしまうんですね。柄と生地の違いである、と覚えておきましょう。
絣にはどんな歴史があるの?
インドで生まれ、タイやラオスなどの東南アジアを経て、日本に伝来したのだそうです。古代日本にすでにあったとされていますが、「絣」と呼ばれるようになったのは、江戸時代以降です。江戸後期に、量産されるようになり、日本各地に広まりました。
絣の技法は、極東の日本に来ただけでなく、ヨーロッパやアフリカにも伝わったようです。
第2次世界大戦中には、絣がもんぺに使用されているのを映画やドラマでみることがありますね。戦時中は着物着用が禁止されたこともあり、動きやすいもんぺに作り替えて普段使いしていたのでしょう。
※もんぺとは…女性のはくズボンのことです。以下の画像のようなズボンになっています。
絣にはどのくらい種類があるの?
絣は江戸後期から、日本各地で量産されたため、ご当地ものがたくさん作られました。数が多いため全部紹介とはいかないまでも、その一部を紹介します。
ご当地絣の種類
日本人が好きなことの一つに、3大なんちゃらがありますが、日本3大絣も存在します。
それは、伊予(いよ)絣・久留米(くるめ)絣・備後(びんご)絣です。伊予は愛媛県、久留米は福岡県、備後は広島県のことです。これらは全て、木綿(もめん)でできています。特に現代の備後絣の生産は少量です。
その他には、伊勢崎絣・佐々絣・薩摩絣・武蔵絣・琉球絣・大和絣・近江上布・倉吉絣・弓浜絣・広瀬絣・作州絣・十日町絣・西陣絣などがあります。
海外ではインドネシアのイカット(ikat)、バリ島のグリンシン(grinsing)なども絣の仲間です。
外国の絣は何か一つに特化している織り方が多いのだそうですが、伝来先の日本ではデザインや織り方の種類が増え、独自の発展を遂げています。日本人は昔から工夫することへの意識や、美意識が高かったんでしょうね。
柄の種類
実は絣の模様には、良い願いが込められたものが多いんです。その吉祥の意味についても紹介していきます。
1.十字絣・蚊絣
十には完全、満ち足りた、といった意味があり、縁起の良い柄なのです。どうか蚊とあなどらずに見てあげてくださいね。十字の模様を出すのが十字絣ですが、その柄をさらに細かく、それこそ蚊がたくさん飛んでいるような模様にしたのが、蚊絣です。
2.井桁(いげた)模様
ハッシュタグのようなマークが特徴の、井桁模様です。井戸の上部にある、井桁をモチーフにしています。井桁とは井戸を守るためにあるもので、家内安全の願いが込められています。
3.雪絣
雪絣は、その名の通り、雪が舞っているような、ふんわりしたドット柄です。雪はたくさん降ると、雪解け水が増えて作物が豊かに育つと言われてきました。そのため、雪は<strong>五穀豊穣</strong>の吉祥文様となっています。
柄の大きさが小さいほど、時間がかかっていて、新品ならばお値段も張ります。しかし、雪柄は季節縛りがないため、雪柄だから夏は着れないということはありません。
4.亀甲文様(きっこうもんよう)
亀甲文様はカメの甲羅をモチーフにしています。蜂の巣のハニカム構造にも似ていますね。「亀は万年」と言われるように、長寿吉兆で縁起のよいデザインです。こちらも柄が細かくなればなるほど、お値段が上がっていきます。
絣柄を出すところと出さないところで、一つの絵になるように作るなど、幾何模様として使うだけでなく、応用範囲が広い柄です。<strong>亀はお金の象徴</strong>でもあることから、金運アップにつながりそうで、私もこの柄が一番好きですね。
5.絵絣
こちらは種類が無限大です。ワンポイントでモチーフを入れたり、反物全体を使って一つの絵画のように織ったりと、果てしなく遊べるデザインです。
その中でも、椿は古代日本では、冬でも葉を落とさない強い木ということで、霊力を持つ木とされています。つばめは縁起の良い鳥、縁結び・安産の象徴として、柄に願いが込められています。
絣はどんな時に着られるのか?NGな席はある?
どんなに高くても、絣は普段着扱いなんです。値段の高さが、着物の格とは一致しないところが、着物の難しいところですね。
式がつくフォーマルな席に、絣で出席することは好ましくありません。普段着の延長として、カジュアルなシーンで活躍できる着物です。しかしカジュアルなイベントでも、着物の力を借りれば、おしゃれなシーンに変わること間違いなしですね!
まとめ:絣は奥が深い!
絣は日本各地で量産されて、ご当地別にも技術を研鑚してきたので、種類が豊富にあり、見ているだけでも楽しめます。現代の技術も加わったり、デザインも増えたりと、飽きない芸術です。
着物だけではないものにも、絣は使用されていますので、ぜひ普段の生活の中にも絣を探してみてくださいね!