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講座「北斎折り紙を折って目付字遊びをしよう!」種明かし編

前回は「北斎折り紙の折り方(How to fold HOKUSAI Origami)」を投稿したので、今回は、その種明かしをしますね。
えっ、種明かし?と思われた方も多いと思うのですが、そもそも北斎折り紙の出来上がりは、1から31の数字の中で相手が選んだ数字を当てるゲームになっているのです。北斎折り紙を折ってそれがゲームになっているというのも面白いでしょ。では、実際にどのように遊ぶかやってみますね。

①相手にこの面を見せて1から31の数字の中から好きな数字を心に念じてもらいましょう。

最初に見せる面

②念じてもらったら左側の面を見せましょう。あらら、色が変わっている数字もありますね。相手の念じた数字の色は、黒か白か緑か赤かを尋ねましょう。相手が「緑」と答えたら、右下にあるポイントに従って2を記憶しておきますね。

次に見せる面

③さらに左側の面を相手に見せましょう。今度もまた相手の念じた数字の色を尋ねましょう。黒か白か緑か白か? 相手が「黒」と答えたとしますね。ポイント欄で黒は0ポイントだと分かりますのでそのまま次に行きます。

3番目に見せる面

④さらに左側の面を相手に見せます。

4番目に見せる面

あれれ、今度は白か黒かの2色しかありません。相手に黒か白かを尋ねます。相手が「白」と答えたとしますね。白の場合、ポイントは16です。それでは、今までのポイントを足してみましょう。2+0+16=18になりますね。じつは、その答えが相手の選んだ数字なのです!頭の中で相手の選んだ数字が分かったあなたは、もったいつけて、考え込んでいる振りをしたり、今日は超能力の調子が悪いなどと演技したりしましょう。そこがこのゲームの醍醐味ですから(笑)
そして最初の面を見せてこう言いましょう!

最初に見せた面に戻る

ズバリ!あなたの念じた数字は、「18です!!!」と。
そうすると大抵の人は、びっくり仰天します。
私は、子どもから大人まですべての年代層で試しましたが、びっくりしない人はまずいません。やはり、たった3回色を答えるだけで31個の識別ができることが不思議で仕方ない様子です。

実は最初に小学校の授業でやったのですが、子どもたちの感想は、
「これ考え出した上野さんは、天才だー!」でした。

イヒヒ、私が考え出すはずないじゃないですか!実はこれは、日本に昔からある目付字という数学遊戯を、ちょこっと現代風にアレンジしただけなんです。

目付字は、和歌などの31文字の識別に2進法を使っていました。
でもそれだと、日本語が分からない人は遊べないし、5回も質問を繰り返さないと特定できないので、ちょっと間延びしちゃうんですよね。
そこで、より多くの人に日本の目付字ゲームを楽しんでもらえるように、和歌31文字を数字に、2進法を4進法にしたという訳です。

ここで数学的な仕組みに興味があるという方のために、ちょっと4進法表を示しますね。要は10進法で表された1~31の数字を4進法で表したのです。
4進法の場合は、数字が0,1,2,3しかないんですが、それを色で表現したのです。

1~31を4進法で表したもの

上の表で、1,4,16とあるのは、4進法での各桁の重みを表わしています。4進法は0から3までの数字しかないから、4になると次の桁に行くんですよね。また15は4進法であらわすと(033)となり、16は(100)になるんですよね。こうやって1から31を4進法で表すと、すべて3桁以内におさまります。
また0を黒、1を白、2を緑、3を赤という風に決めて、折り紙の各面で数字の色を変えたのです。最初に見せるのは、1桁目で次は2桁目最後に3桁目です。各面で相手の言う色に応じたポイントを合計することで相手が選んだ数字を特定していく仕組みなのです。
ちなみに先ほどの例では、相手が選んだ数字は18でした。
最初の面の数字の色は緑で、次は黒で、最後は白と言いました。
これらの色を最後から順番に数字に置きかえると、(102)となります。上の表で(102)になっているのは、10進法では18ですよね。

10進法の世界で生きている私たちは、ちょっとピンと来ませんが、でもこんな考え方が、古くから日本にあったなんて驚きではありませんか?

ちなみに江戸時代に考案された桜目付字を図にしたものがこちらの面です。

1743年「桜目付字」

いかがでしょうか?この折り紙には、目付字のエキスがぎゅっと詰まっているでしょ(^^♪

十数年前、私は和算本で二進法を使った目付字を知りました。しかし、もっと前に私は出会っていたのです。そう、遡ること50年以上前の小学校の授業の時です。

当時、算数は私にとって苦痛そのもの。ところが、ある日、先生が突然「今日は7進法で数えてみよう!」と、まるで魔法の言葉をかけたように言い出したのです。最初はちんぷんかんぷんでしたが、しばらくして、パッとひらめきました。その瞬間、私は歓喜のあまり小躍りしたほどです。それまで嫌いだった算数が、単なる決まり事にすぎないことに気づいたのです。数の世界は10進法でしか表せないものではない。そう、数の世界は自由で誰に対しても圧倒的に平等なのだと。

私の「北斎折り紙を折って目付字遊びをしよう!」講座が、国籍も年齢も問わないのはこのためです。ただ興味を持ってくれる人に、目付字遊びの事を伝えていきたいです。

目付字研究家
上野 真弓




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