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悶々とムツゴロウさんの話

産みの苦しみというものを感じています。

ウィズコロナワールドに入ってから悶々とした日を過ごしました。

悶々とした日というのは、突然現れるわけではなく必ず”原因”がある。
その原因は探しても探しても見つかりにくい。
しかし、とても興味深いことに自分自身に取って都合良い姿で(さも正論のような佇まいで)自分の真横に突っ立ってたりします。

僕に取っての悶々とする原因は”安定(平素)への潜在的固執”でした。
頭の中で
「店舗が閉まって売り上げがガタ落ち、給料減るな」とか
「このままでは先行きが不透明だな」
といった”恐れ”でした。

正確にいうとこれは”恐れ”ではなく”怠慢”ですが。

この原因の面白いところは非常に巧妙に
「さも今自分が考えていることは現実と未来を見据えた上で必要な思考なんだ」
と自分すらも騙している点にあります。
事実この原因に気がついた時は「はっ!」としました。
なぜならずっと、すっとぼけた顔で(さも当然の如く)横に立っていた”こいつ”が原因だったわけですから。

そんな原因から脱する方法は意外と簡単です。
その原因と思われていること。
”恐れ”ていることや”見たくない”ことなどに自ら飛び込んでいく。
突っ込んじゃうという方法です。

ムツゴロウさんが昔テレビで、ライオンに腕を噛まれた時どうするか?という質問に対してこう答えていたことを常々教訓として胸に刻んでいます。
ムツゴロウさんの回答は「腕をライオンの口に突っ込む」でした。
彼の解説によると人間は反射的に噛まれると逃れようと引っ張ってしまう。しかしそれが逆に大怪我を負う羽目になる。
なぜなら牙が刺さったままなので引き裂く結果になるから。
逆に口の奥に突っ込むとライオンですら「オエッ」となり腕から口を離さざるを得ない。
だから腕を口に突っ込むんだと。

これをテレビで聞いた僕は小学生ながらに
「なるほどなぁ」と痛く感動したものです。
ライオンに噛まれる機会なんてのは、死んでも遭遇したくないけどね。

しかし、生きていると様々なことがあるものです。
今回はライオンではなくコロナによる経済的危機が噛み付いてきた。
僕は自分の中にある”恐れ”に当初は気がつきませんでした。
それに気がつくきっかけはただひとつ。
クリエイティビティが落ち、暗く、不安感があるような
”モヤモヤ”するネガティブな感覚。
これが訪れてきたということは、どういうことか?
それは完全に”腕をライオンの口に突っ込む”タイミングだということです。

なので、すぐに会長に電話で
「経営的危機になってランニングコストを抑えるためであれば躊躇なく僕を解雇して下さい。覚悟はできてるんで。」
と伝えました。

小売業の場合は物を仕入れて、店頭で販売できる人材さえいれば機能します。
多くの現場スタッフさんたちが残って店舗運営を機能させることさえできれば復活できるということです。
なので僕はいなくても充分機能するというシンプルな発想。

興味深いのはこの宣言(経営がヤバけりゃ真っ先に辞めるぞ(その後の予定はないけどな!))をしたことで”モヤモヤ”はキレイさっぱりなくなり、次の一手に全集中して取り組めているということ。
ライオンの口に腕を突っ込んだということです。
危ないところでした。

人間は”安定”というものに異常に固執しています。
無意識的にも。
僕は一般的な人よりもこの感覚が薄い人だと自負しているつもりですが、それでも「俺、めちゃくちゃ固執してるやん!」って実感しました。
現実は”安定”というものは”常識”というものに隠れていますし、”当たり前”のようなことにも混ざってます。

毎日ご飯が食べれたり、住む家があったり、電気が通ってたり、お店で物が買えているというのは「当たり前」ではありません。
これは「感謝」すべきことであり、つまり「当たり前(当然)」ではなく「有難い」こと。

そもそも有り得ることが難しい(有難い)ことなのだから
実は手放しても痛くも痒くもない。
無いことの方がむしろ当然なのだから。

そして、固執のない裸の自分になって
「よし、じゃあ自分にできることは?」
とできることを始めていく。

今は産みの苦しみを感じています。
これが最高に楽しい。
本当にドキドキするしワクワクする。
全ての先入観を捨てて「捉え直す」作業が楽しい。

無意識化されている「当然」を「感謝」によって意識化する。
そして、全ての「常識」を”ひっくり返す”とき一歩が始まるのかもしれません。


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