30代独身男、職業デザイナー。いきなり犬を飼う。(パグ編)
「パグを飼おう」
それは2年前の4月末の事であった。
僕は10年ぐらい昔、勤めていた会社の社長から、
「娘が買ったのだが、娘の息子がアレルギーだから飼えない事になった。預かってくれ」
と言われ、黒パグのメス、秋田犬のオスを飼っていた。
それはそれは可愛かったので、毎日散歩をし、馴染みの珈琲屋、公園に連れて行く等、可愛がっていた。
しかし3年を経過した時に、その社長がなんと
「孫が買いたいと言ったから、戻してくれ」
と鶴の一声で返された。
理不尽すぎる…
それから10年余り。いつか自分に余裕が出来たら犬が欲しいと思っていた。
そしてその衝動と「飼うなら今」のタイミングで、4月末にサイトを見ていた。
よく友人が「結婚はノリ」というが、本当にそういうノリだったと思う。(した事ないからわからないけどね)
そしてサイトで見て、黒パグのメスがいる事を発見。
広尾にあるブルドンズという店にたどり着く。
これなら家からも車で行ける距離だと、ゴールデンウィークの連休明け、出勤中の会社をサボり、渋谷からすぐに車を飛ばした。
問い合わせると「さっきこの子、買い手がついてしまい…」
なんて事だ。こんなすんでの差で。
しかし一度ついた「犬を飼いたい」願望は治らない。
いつ生まれるか?黒パグは生まれそうか?等を聞いてるうちに、
「ライフスタイル的にフレンチブルドッグの方がいいんじゃないですか?」
と言われた。
確かにそう言われるとそうかもしれない。
フレンチブルドッグは
・吠えない
・辛抱強い
・忠実、甘えん坊
と、集合住宅でのすべての要件を兼ね備えている。現に友人のトロンボーン奏者がすでにフレンチブルドッグを飼っていて、「パグが無理ならフレンチブルドッグでもいいかな」とまでなっていた。よくわからん理由だが、相当犬のいる生活を求めていたと思う。
そうするとお店のオーナーが、
「うちの犬舎の子じゃないけど、知り合いのブリーダーさんの子で、すごいオススメのブラックブリンドルで、ホワイトエプロン、血統間違いなしの、ショータイプのオスのフレンチブルドッグがいるので面会します?」
と言われ、「します」と即答した。正直ブリンドル?エプロン?ショータイプ?な状態だが黒で鼻ぺちゃ君ならとりあえず会ってみようとなり、生後45日か60日以内(法律がある)かだったので、面談して良ければ、その日数後にお迎え、という話で面会日を決め、その日は帰社した。
それから数日後の面会日、再びお店に。
一番奥にフレンチ君は待っているとの事で、行こうとした矢先。
ケースの中に黒パグがいる。
「あれ、これ黒パグじゃないですか?」
「いや、メスお探しでしたよね?この子オスなんですよ」
「いや、オスでもいいです、この子ください、抱かせてください」
「え?フレンチどうしますか?」
「とりあえず見ましょう」
たまらん…(この時まだ耳は寝ていた)
「この子も譲ってください」
「2匹ですか?」
「はい」
今思えば何を思っていたのだろうか。
「は、はい…しかし同じ年齢なので仲良くなりますよ、よかったです!ただパグの方は親がチャンピオンとかではないし、うちの犬舎の子じゃないんですが…」
「血や出自は関係ありません、大丈夫です。」
「は、はい、ありがとうございます!」
と、話は進み、コンビニATMで3回に分けてお金を卸し、2匹分割引してもらった金額を全額、その場で支払う。
引き取りは同じ日にという事で、帰社した。
会社で、当時同僚だった三田村君(彼は今ではフトアゴヒゲトカゲの先駆者になっている)に「犬2匹買った」と言ったら「どこ?」と聞かれ「まだお店の方にいて、一緒に引き取ろうと思ってる」と言ったら
「それまでその子、ずっと狭いケージに閉じ込められて、みんなに窓叩かれて…」
と言われた時にはもう中野の島忠に向かっていた。
「犬を迎える時に必要な物」と書かれた紙を手に、キャリーケース、餌のボウル、給水機、ケージを購入。
すぐさまお店に連絡をし、閉店間際の時間に無事引き取り完了。この時お店から指定の餌を頂く。
家に来た当日。Macのwireless keyboardより小さかった。
2014年3月22日生まれ、パグ。
名前は大きくなるように、数字の位で「不可思議」の次の「那由多」、「ナユタ」としたのだ。
うちの長男である。
三十路独身男、パグを飼う。
この時は気がつかなかった。「こじらせ街道まっしぐら」だという事を…。
【追記:2022年5月27日、虹の橋を渡りました】