空は変わらず、僕が変わった。
これまで生きてきたなかで、何度空を見上げただろうか。とりわけ高校生のころは、毎日のように空を眺めていた。
空を眺めてはあれこれと妄想を膨らませ、まだ見ぬ未来へと思いをはせていた。僕にとって空は、制限のない自由な夢を思い描ける唯一の場所だったんだ。
ただ、いつの頃からか、空を眺めても夢を思い描けなくなった。
社会人としての経験を重ねていくなかで、思い描いていた夢へのハードルの高さを思い知ったのか。はたまた、思春期特有のいわゆる厨二病的な考えだったのか…。
いずれにせよ、僕は空を見上げても何も描けなくなった。これがいわゆる、大人になるということなのだろうか。さまざまな経験をへて、自分の身の丈にあった現実的な考え方ができるようになったのかも。
そう考えたら、これはこれで悪くないのかもしれない。むしろ、三十路を過ぎてもなお、空を見て夢見ごこちでいるのはちょっと危ういのでは。まあ、夢ばっか見たところで、おまんまは食えない訳ですよ。
空は相変わらず、あの日の姿のまんま。当時とよく似た形の雲が、今日も元気に流れていく。
変わったのは僕だ。これから先はどんな風に空の見え方が変化していくのか、今からワクワクだぜ。