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夕間暮れに紛れる。

夕暮れどき。
黄昏(たそがれ)の時間。

多くの人がきっと、ぼんやりと夕焼けを眺めるのが好きなんじゃなかろうか。例に漏れず、僕もそんな人のひとりだ。

1秒…2秒…と時間が経つごとに、だんだんとオレンジ色に染まっていく空。まるで小さな子どもが書き殴ったかのような雲は、姿を変えながら、左から右へとゆっくり流れる。

高校生の頃に付き合っていたあの子の顔が浮かんできた。あの子とは、夕焼けを一緒に眺めたことは一度もないけれど。元気にしているだろうか。

ポジティブで明るいあの子のことだ、きっとどこかで楽しく過ごしているんだろうな。優しいパートナーと子どもたち。いいなあ、僕には縁遠い関係かもなあ。

夕焼けを眺めている時にふと思い出される人が、これまでの人生のなかで一番大切な人なんだと思う。きっと、人生を終えるその瞬間に、無性に会いたくなる人なんだと思うな。

ま、もう一生会えないんだろうけどさ。だから、何らかの形であの子に伝えたいよね。

「僕は元気です」ってさ。

そろそろ夕焼けが水平線上に沈み切る頃だ。

なんだか、あの子と一緒に夕焼けを見ているような気分になっちゃったなあ。

おもむろに、左側に視線を向ける。あの子が笑っていた。

しんみり、しんみりな気分ですよ。
さて、今日も夕間暮れに紛れ、僕はまた歩き出そう。




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