俳優演出【入門】:【オブジェクティブとスーパーオブジェクティブ】
さて、これから解説していく事には大前提があります。
それは、俳優演出は脚本の出来と密接に関係するという事。
俳優演出は、常に脚本を書く上で登場人物に求められる条件と切っても切り離せないのです。なぜなら、それらの登場人物を表現するのが俳優だからです。
①キャラクターの作り基本
【オブジェクティブとスーパーオブジェクティブ】
映画のキャラクターに常に求められれるのが、この2つです。
【オブジェクティブ】というのは【目的】のことです。
【スーパーオブジェクティブ】とは【大きな目的】のことを言います。
人は常に何かしらの目的に沿って行動します。
しかも、常に人は一つの目的に沿ってしか行動で来ません。
同時に複数の目的に向かって行動する事が出来ないのです。
これは人間の行動原理です。例外なく全ての人間がそのように出来ているのです。そして、その行動原理を守る事はシナリオを書く際の大原則となっています。
例えば、登場人物Aはスーパーに行き、食材を買い、家に帰り、調理をします。
何の為に?
仮に "恋人に美味しいごはんを食べさせる為に" とします。
ここでAは目的を達成する為に複数の事をしています。
しかし、その行動は常に目的である"恋人に美味しいごはんを食べさせる為”に沿った物です。
たとえば、同じ目的でも…
美味しいと言われているレストランをチェックして、恋人を待ち伏せして、面倒くさがる恋人を引き連れてレストランに向かいます。
これらは同じ目的ですが、行動が違います。
この行動の違いによって2人の登場人物の背景や性格が違う事が想像されます。
実はこれがストーリーテーリングの原則なのです。
目的をどのように達成させるかで、キャラクターの違いや、物語を語っていきます。
先ほども言及しましたが、人間は常に1つの目的に沿ってしか行動出来ません。
例えば、美味しいと言われているレストランをチェックして、恋人を待ち伏せしている時に、親とでくわしてしまいます。小言を言う親を追い返し、帰ってきた恋人を引き連れてレストランに向かいます。
少し先ほどより複雑なストーリーになりました。
ここで登場人物Aは二つの目的を達成しました。
1つは常に同じ”恋人においしいごはんを食べさせるため“
そして2つ目は”親を追い返す“です。
ここで重要なのが、2つ目の目的を遂行するにあたってAは“恋人においしいごはんを食べさせるため”を中断して“親を追い返す”という目的に集中します。
一見すると、流れの中で同時に行われいるように見える事も、実は細分化して観ていくと1度に1つの目的に向かってしか行動しておらず、人間は常に1つの目的の為にしか動けない事が分かります。
また、このシュチュエーションの場合、親を追い返したのも大きなまとまりから考えれば”恋人においしいごはんを食べさせるため“の過程となります。
原則として、シナリオには1シーンにキャラクターそれぞれに1つづつ
【オブジェクト/目的】が必要となります。
そして、映画全篇を通して【スーパーオブジェクティブ/大きな目的】を物語っていきます。
この例で言うと登場人物Aの【スーパーオブジェクティブ】は何になるでしょうか?
Aの大きな目的は『恋人に常に愛されてること』
そのためにAは好かれる為の努力に邁進します。
さて、ここまでで、何となく登場人物がどんな人物か予想で来ませんか?
実は明確な目的はキャラクターの性質を表す重要な情報の一つなのです。また、達成方法によってより詳しくキャラクターの性質とストーリーを語っていきます。そして、それが映画のストーリーテーリングなのです。
さて、俳優演出はどうなった?と、お思いのあなた。これはとても大事な事なのです。
くどい様ですが大小はあれども人間は常に目的に沿った行動をしています。
『疲れた、休みたい』『面倒くさい仕事を適当にやり過ごしたい』という日常的な事から『次の仕事を成功させたい』『世界一の金持ちになりたい』という様な物まで。
実はどんなに目的意識を持っていないように見える人間にも、常に目的がありそれに沿って行動しています。人間の凄い所は別段意識せずとも本能的に目的を選択し、そのように行動してしまう事です。
逆に言うと、その摂理に 反した行動をキャラクターにさせようとすると“違和感”と“矛盾”が生じます。
そして、その違和感と矛盾は映画のリアリティーを欠いたり、最悪物語の破綻を結果になったります。
ここで思い出して下さい。
俳優の仕事について。
俳優は “経験した事のない事は演技出来ない”と言うことを既に学びましたね。
そうです、人間の行動原理に反したキャラクターの行動は現実にはありえない事なのです。
現実にありえない事は俳優は演じられません。
人間は常に何らかの目的に沿って行動していると説明しました。
だからこそ行動原理に沿った【オブジェクト】と【スーパーオブジェクト】という情報が俳優に必要になるのです。
また、これらが脚本の段階で破綻していると、ストーリー的にも俳優演出的にも破綻を来す事になるのです。あなたのキャラクターにはオブジェクトとスーパーオブジェクトがちゃんとありますか?
俳優との本格的な仕事に移る前に、もう一度シナリオを見直して下さい。
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