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ヨーロッパでの資金集めってどうしてるの? vol.8 映画祭とピッチングフォーラム

さて、初期段階のメンターシッププログラムである程度ブラッシュアップした企画書とプロデューサーを得たあなたは企画にさらに付加価値をつけるために多くの作業に取り掛からねばなりません。

プロデューサーと共におそらくパッケージの再考をしつつ、次のメンターシッププログラムの参加を計画します。

メンターシッププログラムももちろんランクがあり、どのプログラムに選ばれ参加したかによってその企画の付加価値も変わってきます。

そして重要なのがフィルムフェスティバルやCo-production market
にも同時にアプライする事です。

ピッチやCo-pro、メンターシップは映画祭と連動していることがほとんど

これらのプログラムや映画祭に参加するためには確認しておかなければならないことがあります。それは地域やジェンダー、人種限定の応募があるということ。特に地域限定に関してはアプライ先によって規定が違うので注意です。

例えば私の場合、ルーツが日本の為

・東アジア
・アジア

に加え、私は美術修士をポーランドで習得しているため、
ポーリッシュ・フィルムメーカーを名乗ることができるため

・東欧
・ヨーロッパ

地域制限の無いプログラム、フェスティバルに加え、これらの地域限定にアプライすることができます。

この二つ目のヨーロピアン・フィルムメーカー枠に関してはプロデューサーがその国に該当する場合はOKなこともあるため、そこも注意が必要です。
また、ヨーロピアン・フィルムメーカーの認識はベースがヨーロッパにあることが前提で、ルーツや国籍、人種は関係ないことが多いです。

そのほかにも有色人種や女性限定のプログラムもあります。

Co-production marketとピッチングフォーラム

さて、ここで次のポイントであるフィルムフェスティバルや
ピッチングフォーラムについて言及していきたいと思います。

フィルムフェスティバルで企画段階で参加できるのは以下の二つ

Co-production market
ピッチングフォーラム

どちらも、大抵は映画祭と連動しており、開催期間中に開催されます。
また、後者に関してはメンターシッププログラムも含めている事も多く、トレーニングの成果をピッチで最終的に披露する場合がほとんどです。
そして、ピッチングフォーラム参加者は自動的にその映画祭の
Co-production marketに参加できます。

どちらの参加も通常、参加プロジェクトは厳しい選考を経て選ばれれ、その選考には企画の質、商業的可能性、国際的な魅力などが考慮されます。

さて、私のケースに戻ります。

私たちは2019年の春の時点で、翌年2020年に本撮影、2021年に映画の完成を目指して動いていました。そのため、2020年の春にはポーランド映画協会からの資金援助を貰えるように動き出しました。

同年、秋、知名度は低いものの、ロカルノ国際映画祭の前ディレクターがそのオーガナイズに加わっているケルンで行われていた European Work in Progressと言うピッチフォーラムに特別賞を獲得しました。

当然、ピッチングフォーラムは参加のみではなくピッチングで賞を取れば撮るほどまた付加価値が上がります。

また、入賞すれば賞金や映画完成までの物理的援助を獲得できます。
私たちの場合は10 000€ のサウンド・ポストプレダクション権が与えられるEWIP K13-Studios Award賞を獲得しました。

ライプツィヒ国際ドキュメンタリー映画祭でのポーランド映画宣伝用のリーフレット

また同年ライプツィヒ国際ドキュメンタリー映画祭のCo-Proマーケットに選出され、この時は300本を超える世界中から応募された企画から選ばれた35本の一つとして選出されました。

Eurodoc2020の参加者

次はEurodocというプロデューサー用のメンターシッププログラムに選出。これは企画にとってはさらなる付加価値となりました。

この三つの参加はこの企画が国際的に魅力ある企画との証明となり助成金獲得に大きな影響力を与えました。我々はポーランド映画協会からの助成金獲得のためにさらに動きました。

国内の評価を安定させるために、ポーランド国内最大のドキュメンタリー・サポートプログラム、DOC LAB POLANDにも応募、選出。
こちらは前述したDOC DEVELOPMENTのネクストステージとなるプログラムです。

メンターシッププログラムや映画祭参加には基本4段階あります。

企画書段階
Early Production(撮影前、撮影開始直後)
In Early Production(撮影中)
Post Production(ポスプロ)

そして、無事に2020年にポーランド映画協会から資金援助を獲得することに。

我々のチームはオール新人(長編デビュー作)ばかりだったので、海外映画祭での価値付の獲得から始まり、それを大きな企画の魅力の証拠としてアプライをしたことが功を奏しました。

また、当時資金援助を獲得した大きな理由の一つは強い
共同制作のパートナーを見つけたことでした。これについては次回詳しく説明したいと思います。

この記事の最後にヨーロッパの代表的なメンターシッププログラムとピッチフォーラムのリストも紹介。プログラムもピッチも大小合わせてかなりの数が存在します。そして、それらは全てさらなる大きなチャンスに繋がっていると考えましょう。

主なメンターシッププログラム

  • Directors Across Borders (DAB)
    東ヨーロッパと西ヨーロッパの監督を結びつけるプログラムで、クロアチアのモトブンフィルムフェスティバルの一環として開催されています。

  • Binger Filmlab
    オランダのアムステルダムに拠点を置き、国際的な脚本家や監督のための集中的な創作ラボを提供しています。

  • La Fémis Atelier Ludwigsburg-Paris
    フランスとドイツの映画学校が共同で運営する1年間のプログラムで、若手監督やプロデューサーを対象としています。

  • NIPKOW Programm
    ベルリンを拠点とし、ヨーロッパの映画・テレビ専門家(監督を含む)向けの奨学金プログラムです。

  • Cinéfondation Residence
    カンヌ映画祭が主催する長期レジデンスプログラムで、若手監督が長編映画のプロジェクトを発展させることができます。

  • Locarno Filmmakers Academy
    スイスのロカルノ国際映画祭の一環として、新進気鋭の監督たちに集中的なワークショップとマスタークラスを提供しています。

  • IDFAcademy
    オランダのアムステルダムで開催されるIDFA(国際ドキュメンタリー映画祭アムステルダム)の一環として行われる、新進ドキュメンタリー制作者向けのトレーニングプログラムです。

  • Doc Nomads
    エラスムス・ムンドゥスの共同修士プログラムで、ポルトガル、ハンガリー、ベルギーの3つの大学を巡りながらドキュメンタリー制作を学びます。

  • ESoDoc - European Social Documentary:
    ヨーロッパのドキュメンタリー制作者を対象とした国際トレーニングイニシアチブで、社会的影響力のあるメディアプロジェクトに焦点を当てています。

  • DOK.Incubator
    長編ドキュメンタリーの編集段階にある制作者を支援する国際ワークショップです。

  • Aristoteles Workshop
    ルーマニアで行われる、創造的なドキュメンタリー制作に特化した集中プログラムです。

  • Ex Oriente Film
    チェコのプラハを拠点とし、中東欧のドキュメンタリー制作者を支援するワークショップシリーズです。

ピッチフォーラム

  • Berlinale Co-Production Market(ドイツ、ベルリン)

    • 対象: 国際共同制作を目指す長編フィクション映画

    • 特徴: • 約600名の業界プロフェッショナルが参加 • 個別ミーティングのアレンジも行う

  • Torino Film Lab (イタリア、トリノ)

    • 対象: 長編フィクション映画の企画段階のプロジェクト

    • 特徴: • 年間を通じたワークショップとトレーニング • 最終的なピッチングイベントでは制作資金の獲得機会あり

    • 時期: ワークショップは年間通じて、最終ピッチングは11月

  • Les Arcs Coproduction Village (フランス、レザルク)

    • 対象: ヨーロッパの長編フィクション映画プロジェクト

    • 特徴: • スキーリゾートで開催される独特の雰囲気 • Industry Village programの一部として開催

  • Karlovy Vary Eastern Promises (チェコ、カルロヴィ・ヴァリ)

    • 対象: 中央および東ヨーロッパ、バルカン、中東、北アフリカの映画プロジェクト

    • 特徴: • Works in Progress、First Cut+など複数のセクションがある • 地域特有のプロジェクトに焦点

  • Venice Gap-Financing Market (イタリア、ベネチア)

    • 対象: 資金調達の最終段階にあるフィクション映画プロジェクト

    • 特徴: • ベネチア国際映画祭の一部として開催 • 完成間近のプロジェクトに特化

  • Producers Network (フランス、カンヌ)

    • 対象: 経験豊富なプロデューサー

    • 特徴: • カンヌ映画祭マルシェ・デュ・フィルムの一環 • ネットワーキングに重点を置いたイベント

  • IDFA Forum(オランダ、アムステルダム)

    • 国際ドキュメンタリー映画祭アムステルダムの一環

    • ドキュメンタリー作品に特化

  • Central Pitch、New Media Program、IDFA Bertha Fundなど複数のセクションがある

  • Berlinale Co-Production Market(ドイツ、ベルリン)

    • ベルリン国際映画祭の一部

    • 長編映画プロジェクトが対象

    • Co-Pro Series(テレビシリーズ向け)も併設

  • CineMart(オランダ、ロッテルダム)

    • ロッテルダム国際映画祭の一環

    • アート系や実験的な作品も多く扱う

    • RotterDam Lab(新人向け)も同時開催

  • When East Meets West(イタリア、トリエステ)

    • 東欧と西欧の共同制作を促進

    • 毎年特定の地域にフォーカス

  • Thessaloniki Pitching Forum(ギリシャ、テッサロニキ)

    • テッサロニキ国際映画祭の一部

    • ドキュメンタリーとフィクション両方を扱う

  • DOK Leipzig Co-Pro Market(ドイツ、ライプツィヒ)

    • DOK Leipzigドキュメンタリー映画祭の一環

    • ドキュメンタリープロジェクトに特化


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映画のメトダ
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