ヨーロッパでの資金集めってどうしてるの? vol.10 テレビ局との提携
さて、前回Co-ProとLetter of Intentについて言及しました。
今回はテレビ局との提携について言及していきましょう。
テレビ局との提携
これはフィクションとドキュメンタリーでちょっと様子が変わってきます。最近ではネットフリックス、HBOやApple TVなど多くのストリーミング会社が映画制作に乗り出して言います。これらのストリーミング系の作品は映画祭等でプレミアを得たい場合、足枷になったり…
こちらも別テーマで話ができそうなので、詳細は希望があれば今後詳細な記事を書く事にして…
テレビ局との提携については以下の性質があります。
基本的な仕組み
テレビ局が映画の製作費の一部を負担し、その見返りとして放送権を取得します。これにより、製作者は資金を得られ、テレビ局は魅力的なコンテンツを確保できます。
メリット
製作者側の資金調達の負担が軽減され、作品制作のリスクが分散されます。
テレビ局側は独占的な放送権を得られ、視聴者を引きつける質の高いコンテンツを確保できます。
一般的な条件
放送権の期間: 通常2〜5年程度
放送回数: 契約で定められた回数(例:2〜3回)
地域: 特定の国や地域に限定されることが多い
また以下の部分にも注目が必要です。
クリエイティブ・コントロール
a) テレビ局は通常、脚本や編集に関与する権利を持ちます。
b) 監督や主要キャストの選定に意見を述べることもあります。
c) ただし、最終的な創造的決定権は多くの場合、製作者側にあります。放送枠の影響
a) プライムタイム放送を目指す場合、より広い観客層に適した内容が求められます。
b) 深夜枠であれば、より実験的な内容や成人向けのテーマも許容されます。
そのため、多くの場合放送枠に合わせたTVバージョンと映画バージョンが作られます。 (*日本とは随分状況が違うので要注意)
資金提供の割合
テレビ局の負担する製作費の割合は、プロジェクトの規模や性質によって異なりますが、一般的に総予算の10〜30%程度です。
権利の取り扱い
テレビ局は通常、放送権のみを取得し、その他の権利(映画館での上映権、配信権など)は製作者側が保持します。
場合によっては、DVD販売やオンライン配信の収益の一部をテレビ局が得ることもあります。
ジャンル別の特徴
a) ドキュメンタリー: 社会的意義が重視され、公共放送が関与することが多い。
b) ドラマシリーズ: 長期的な視聴者獲得を目指し、テレビ局の関与が強くなります。
c) 芸術映画: 文化的価値が重視され、公的機関や芸術支援団体も資金提供に参加することがあります。
さらに言うと、 TV局との提携は配給という分野でかなりの力を発揮します。フィクションの場合はそこまででもないかもしれませんが、ドキュメンタリーの場合、多くは映画祭以外で見る機会がほとんどありません。
その中でテレビ放映は映画配給の一つとしてかなり魅力的なものとなります。
国による違い
フランス: 公共放送が積極的に関与し、映画製作を支援する傾向があります。
ドイツ: 公共放送と民間放送の両方が映画製作に関与しています。
イギリス: BBC、Channel 4などが独自の映画製作部門を持ち、積極的に関与しています。
課題
テレビ局の意向が作品内容に影響を与える可能性がある。
放送時間枠の制約により、作品の長さや内容に制限がかかることがある。
最近のトレンド
ストリーミングサービスの台頭により、従来のテレビ局との提携モデルに変化が生じている。
国際共同製作が増加し、複数の国のテレビ局が関与するケースも増えている。
以上のことを踏まえて、契約をするのですが、ここで大事な点がもう一つ。
それは条件付き合意です。
これはCo-proも含めてなのですが
「この条件を達成すれば、資金提供をする」と言うものです。
そして、条件の多くは制作国での助成金獲得となります。
え?助成金獲得の為にテレビ局との提携があるのに?と驚く方もいると思いますが…そうです。その為のLetter of Intentですね。
基本的に1箇所が100%出資という映画は大手の制作会社ですらあり得ません。特にヨーロッパの場合はほぼ皆無。
TV局ですら上記のように総予算の10〜30%程度です。( TV局が完全に権利を得た上で制作する場合は別です)
助成金も総予算の30〜60%が基本的な出資割合になります。そのため、このような条件付き出資はCo-proでも一般的になります。
例えば「あなたの国で助成金を得られたら、我が国の助成金にもアプライしましょう」という形です。しかし、これらのLetter of Intentを得られれば助成金獲得の可能性はグッと上がるのです。