ヨーロッパでの資金集めってどうしてるの? vol.7 メンターシッププログラム2
基本的に国際的なメンターシッププログラムでは、多くの場合、プロデューサーとペアでの応募が必須条件となっています。
そのため、まずはプロデューサーを見つけることを念頭に置いてプログラムに参加することをお勧めします。
まずは地元の小さなプログラムから
映画業界は非常に狭く、「知り合いの知り合いは知り合い」という言葉がぴったり当てはまります。
これは、映画業界がネットワークを基盤としており、多くの人が広い人脈を持っているためです。そのため、まずは業界に自分たちの企画を知ってもらうことが資金援助を得るための第一歩となります。
メンターシッププログラムは通常、フィクションとドキュメンタリーに分かれていますが、例外的に区別なく募集しているものもあります。
これらのプログラムは多くの場合、映画祭と連動しており、その形式は様々です。映画祭の期間中に1週間ほどまとめて行われるものから、数ヶ月にわたって複数のセッションに分けて行われるものまであります。
ここからは、私自身の経験を元に具体的に解説していきます。
現在製作中の私のドキュメンタリー作品の場合、企画を立てる上でまず、
ある程度の撮影素材を含めたリサーチが必要でした。
2019年春に、自己資金でリサーチを含めた1ヶ月の撮影を行いました。
その年、撮影した素材を元にポーランドのドキュメンタリー映画サポートプログラム「DOC DEVELOPMENT」に応募しました。
約130の応募企画の中から、メンターシッププログラムに参加できる10組の1つに選ばれました。このプログラムは、2〜3日(1日8時間)のセッションが3、4回あるという形式でした。
DOC DEVELOPMENTは、撮影初期段階の企画を対象とし、よりプロフェッショナルなドキュメンタリー映画制作の工程を学び、最終的にはポーランド国内でプロデューサーを見つけるためのピッチを行うことを目標としていました。
そのために必要なログライン、シノプシス、ティザーをブラッシュアップしながら、ピッチの訓練や作品の方向性のアドバイスを得られる内容でした。
私の場合、この時点ですでにプロデューサーがいたため、ログライン、シノプシス、ティザーのブラッシュアップと、今後の展開を見据えたピッチの練習が主な目的でした。
実際のピッチでは、ポーランド中の制作会社から約50名のプロデューサーが招待され、1企画につき7分間(ティザーを含む)のプレゼンテーションを行いました。
全てのプレゼンが終わった後、「one to one」と呼ばれる短いミーティングが行われました。これは、プレゼンを見て興味を持ってくれた人との個別の話し合いで、プレゼンを踏まえたフィードバックや共同制作の可能性などを議論しました。
このピッチの結果、参加者の半数以上がプロデューサーを見つけることができました。2024年現在、すでに3つの企画が映画として完成しており、そのうち1本は北米最大のドキュメンタリー映画祭Hot Docsでプレミア上映を果たすなどの実績を上げています。
さて、初期段階でのメンターシッププログラム参加の最大のメリットは、プロデューサーを見つけられる可能性が高まることはもちろんですが、それ以上に、企画の実績となることです。
メンターシッププログラムの参加は多数の応募企画の中から選ばれた「ポテンシャルのある企画」という証明になるのです。
記事の冒頭で「知り合いの知り合いは知り合い」と言ったように、さらに、ここでメンターを務める人たちの多くは、より大規模な映画祭やプログラムで重要な地位を持っています。そういった人たちからアドバイスをもらえるだけでなく、作品を記憶してもらうことは、今後企画をさらに発展させる上で非常に有益です。
最後にこういったプログラムを使ってプロデューサーと出会うことは自身を詐欺的なプロデューサーから守るにもとても重要です。
プロデューサー選びのポイントはまた別の投稿で詳しく解説したいと思います。
次回は、メンターシッププログラム利用の次の段階について説明します。